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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生37巻12号

1973年12月発行

文献概要

発言あり

住民エゴ

著者: 京極

所属機関:

ページ範囲:P.789 - P.791

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沈黙は果して金か
 「住民エゴ」という言葉は奇っ怪な,半陰陽みたいな言葉だ.相反する二つの要素がこの言葉を使っているわれわれ自身の中にも確かに感じとれる.エゴイズムがそのまま"ガリガリの我がまま"という意味と,逆に"住民の声","真実の叫び"という少なからず正義感をさえ匂わせるニュアンス,その二つが同時に味わえるからである.ということは,住民エゴと一口にきめつける側にも,その対象となった住民運動をどう価値づけていいか自信がないからに他ならない.
 住民エゴが,いわゆる地域包括医療に関連する諸問題に集中しているのは事実である.これは,戦後わずか1/4世紀ほどの短い期間に,世界のどの国にも比類のない経済成長と産業開発をとげたわが国が当然受けねばならぬ一つのリアクションであった.また徳川300年の閉鎖社会,そのあと明治・大正と建国の精神と一部に自由謳歌の時代があったとはいえ,ふたたび昭和に入っての20年間はカーキ色万能の圧力に押し潰された.つまり物言えぬ民が,急に物言える自由を得てからの浅い歴史のなかに,あまりもの世の移りよう,健康阻害への恐怖が住民エゴをもたらしめたのだ.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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