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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生38巻1号

1974年01月発行

雑誌目次

特集 医師会と保健所

保健所と地区医師会

著者: 村瀬敏郎

ページ範囲:P.23 - P.25

 保健所と地区医師会が地域医療の中でいかにコミュニケーションを持つべきかというテーマは,われわれ開業医にとって難問である.医療行政が内務省から厚生省に移り,監督官庁的色彩が薄れているはずなのに,医師会の中には保健所を「長いもの」としてみて,「巻かれている」ことを余儀なくされているムードがあった.医師会が育ってきたシェアーは治療医学であり,予防医学をとりあげることがあってもそれは個人特性の把握が中心であって,公衆衛生活動のうちでも集団特性や地域特性には比較的関心が薄く,保健所の仕事と医師会の領域をはっきりわけて考えていた.
 私が医師会の公衆衛生担当理事になった頃は,「保健所でニヤニヤしてお茶を飲んでいるようでは駄目だ.予防課長の机の上に腰をおろして言いたいことをいって来るんだ.」と先輩に指導された.余分な仕事を引き受けてくるなという意味である.しかし,こうした傾向は数年来著しく変って来ている.

医師会と保健所

著者: 山下章

ページ範囲:P.26 - P.29

 医師を中心とする専門的機能と保健所を主軸とする行政サービスが,有機的な連携を保ちながら住民の保健行動を支援してゆくという理想の姿へは,道はけわしく遠い感はあるが,一歩づつ接近しつつあることも事実である.
 以下医師会(地域の臨床医師)と保健所(公衆衛生行政活動)との関連事項をあげ,問題点を引きだしながら,いささか考察も加えてみることにする.

神戸方式の予防接種を中心として

著者: 井上正三

ページ範囲:P.30 - P.33

 医師会活動の中で地域保健活動は最も重要なものの1つであり,これは地域の行政区別に行なわれるものと全市的に神戸市を1つとして実施されているものがあるが,すべては神戸市として一貫した方針で貫いている事は勿論である.神戸市としては市医師会と密接に連絡を保ちながらそれぞれ各区医師会と各地区保健所と連絡して地域保健活動を行なっている.地域の保健所では法により保健所運営協議会をもち,公衆衛生の向上に務めている.この委員も法で定められた通りで,神戸市ではこの連絡会をもって一貫性をはかっている.別に各保健所毎に保健協会という名称で各地域毎に,医師会,歯科医師会,薬剤師会,婦人会,地域の自治会,市議会の方々,及び学識経験者の方々の参加を得て,地域の人々の健康の保持増進,公衆衛生の向上を図る様にしている.大抵の場合地区の医師会の会長が保健協会の会長をして保健所との連絡を十分にしている.
 保健業務の内で医師会と極めて密接なものをあげてみると次の如きものであると思われる.

仙台市医師会における公衆衛生活動

著者: 金子太郎 ,   阿部睦男

ページ範囲:P.34 - P.36

 仙台市医師会は仙台市が全国にさきがけて健康都市宣言を行なった昭和38年以前から学校保健はもとより各地域における高血圧対策,各種予防接種,乳児検診等を仙台市,市教育委員会および市3保健所とタイアップして精力的に行なってきており,特に市が健康都市を標榜した後の昭和40年頃からは医師会と市当局の協力態勢はとみに強まり地域共同保健活動は漸次特段の進展が見られ,その事業の種類も内容も遂年充実したものとなり,地域住民の健康生活に寄与するところが大きくなってきている.ここに昨昭和47年度における当医師会の主なる公衆衛生活動の概況を報告してみたいと思う.

佐賀市における日曜在宅医制度—時間外救急当番医制度の現状

著者: 田中安人

ページ範囲:P.37 - P.39

 佐賀市医師会は医師としての社会的責任により,地域住民の医療の万善を期するために日曜在宅医制度,および週日の時間外救急当番医制度(救急医療告示機関,24私的病医院による輪番制により,国公立病院は休日,時間外の救急医療態勢をとっていない.)を実施して以来9年になる.この制度が会員の奉仕的努力によって,地域住民の間に深く根を下してきているのも事実であるが,この制度は医師の善意のみでは支えきれなくなってきたのも事実である.
 本年7月より,当医師会では日曜在宅医,および週日時間外救急当番医の取り扱い患者の実態調査を行なっており,その中間調査結果に基づいて,その現状の一端を報告する.

座談会

医師会と保健所—地域保健活動をめぐって

著者: 村瀬敏郎 ,   木島昂 ,   西川滇八 ,   山下章 ,   橋本正己

ページ範囲:P.4 - P.22

 医師会と保健所は,地域保健活動でいい関係を保ち効果をあげることができているか.どういう点に着目し努力すれば,さらに実績を積み重ねられるか.本特集の村瀬・山下論文を踏まえて双方から話題を煮つめてもらった.

発言あり

はだしの医者

著者: 新井宏朋 ,   石丸寅之助 ,   大野絢子 ,   河路明夫 ,   真野元四郎 ,   ,   ,   ,   ,  

ページ範囲:P.1 - P.3

他人言ではない話
 案外楽天的で,お人好しの筆者だが,最近,人なみに公衆衛生の将来に対して危機感をもつようになった.それというのも,多年,農村の公衆衛生活動を一緒にやってきた有能な医師や保健婦が,むくわれることの少ないままに現場をさってゆくのに対して,なんの相談相手にもなってあげられなかったからである.
 よく,公術衛生をやる人が集まらないと言われるが,行政の仕組みが残り少ない貴重な人材を無駄づかいしている事例を数多くみていると本当にがっかりする.毎年,中央から新しい厚生行政の方策が発表され,各種の施設が作られてゆくが,なんとなく見当ちがいな感じをもつのも,上述のことと無関係ではない.それに,地域の公衆衛生活動のなかで育まれた貴重な研究成果を大切にしないのも,日本の特徴のようである.いまだに日本人の脳卒中や心臓病が脂肪のとりすぎからきていると思いこんでいるえらい先生の多いのも,その好例であろう.公衆衛生の現場からの問題提起には目をむけず,外国の臨床医学の文献のみをありがたがり,大都市での臨床経験から一歩もふみだすことなしに「保健婦にもわかるような保健指導の基準」を作って厚生省に答申するなどは喜劇としか言いようがない.

調査報告

光化学スモッグによる学童の健康障害と大気汚染物質(2)—2年連続光化学スモッグ被害校でみられる自覚症状と呼吸機能調査

著者: 瀬林伝 ,   尾崎耕作

ページ範囲:P.42 - P.46

 毎夏光化学スモッグによる被害が学園を中心に発生し,教育の場から早急にその防止対策が望まれている現状である.
 この大気光化学反応に基づく光化学スモッグによる人体への影響については幾多の基礎的な報告がなされているが,実際に生じた被害校での調査の報告は十分とは言えない.それは被害校における疫学的なField調査は技術的,あるいはその他の問題で多くの壁が横たわっており,またその結果の評価も極めてむずかしいためではなかろうか.

蘚苔植物の重金属含有量

著者: 石澤正一 ,   野川茂 ,   杉山恭子

ページ範囲:P.47 - P.49

 重金属は環境汚染物質として大気,土壌,水質,食品等の汚染をおこし公害問題で注目されている.しかし重金属の大多数は生物に及ぼす影響については不明の点が多い.蘚苔植物(コケと略記)の重金属に関する詳細な報告は少ない1)ようである.われわれは,高度な重金属汚染地域にも何種かのコケが生育し時には繁茂している現象を見て,コケと重金属の関係を調査する動機となった.

大気汚染の植物に対する影響(第2報)—仙台市内における街路樹葉中のイオウ含量について

著者: 関敏彦 ,   井上康子 ,   阿部幸史 ,   星川秀彦 ,   回谷教男 ,   近藤師家治

ページ範囲:P.50 - P.52

 前報においては,街路樹葉中および葉面に付着している重金属含量について調査報告したが,今回は前報1)同様イチヨウ,ケヤキ,トウカエデ,ユリノキ,アオギリの5種類の街路樹について葉中のイオウ含量を調査したので報告する.
 大気中の植物に対する有害ガスとしては,SO2,SO3,HF,Cl2,HCl,NH3,H2S,NO2などがあるが,このなかでSO2は多くの工場事業所から煤煙として排出されており,最も大きな因子となっている.

資料

管内の結核の実態ならびに胸部集団検診成績の評価

著者: 土屋真 ,   尾形和夫 ,   三浦庄四郎 ,   佐々木テル子 ,   阿部節子 ,   雨宮典子

ページ範囲:P.53 - P.57

 結核患者の発見動機のほとんどが医療機関であることが,以前から強調されてきた.過日,宮城県で実施した昭和46年中の結核新登録患者の調査成績においても,医療機関の発見患者が多いことから当県でも住民検診の意義が論ぜられた.
 気仙沼保健所管内でも,昭和46年新登録患者118名における過去1年以内の住民検診受検数は,アンケート調査方式によれば42名(35.6%)であるが,発見患者数は118名中10名のみ(8.5%)であることが指摘されている.それゆえ私どもは結核予防行政にたずさわる立場であり,またレ線写真の読影に当っている立場から,管内の結核の実態を正確に把握し,胸部集団検診を評価し対策をたてる必要を感じて質的な分析をこころみたので報告する.

呼吸器有症状者検診の経験

著者: 園田真人 ,   西田雄一

ページ範囲:P.59 - P.61

 わが国の結核対策の主な方法として,住民検診がおこなわれている.
 しかし,こういった検診車による住民の検診は,固定化する傾向があり,患者発見のための手段としては,弱体化しているといえる.

論稿

神経疾患患者に対する在宅医療の必要性

著者: 川村佐和子 ,   鈴木正子 ,   中島初惠

ページ範囲:P.63 - P.66

 神経疾患患者に対する医療相談業務の中で当面する問題の1つに「入院希望が満たされない」という問題がある.
 患者が入院によせる期待はもちろん「治癒」であり,「病状改善」であるが,致命率が高い筋萎縮性側索硬症(以後ALSと略す)や進行性筋ジストロフィー症ドシャンヌ型(以後PMD《D型》と略す)の患者およびその家族からは「予測される末期症状に対して専門医療を尽してほしい」という希望も強い.

保健所・41

稚内保健所

著者: 佐々木悟

ページ範囲:P.67 - P.67

 日本の北端に位置する当保健所は面積4,076.61km2に人口119,026名を有し,1市8町1村を所管するR3型の保健所である.
 広大な面積は九州の長崎県に匹敵し,周辺は日本海からオホーツク海に至る広遠な海岸線で水産業の母胎となっている.内陸は丘陵の多い原野と山岳部が殆んどであり酪農地帯として開発され,生産量は年々増大し,水産業につぐ管内二大産業となっている.

日本列島

献血運動推進10周年記念全道大会に出席して—北海道,他

著者: 吉田憲明

ページ範囲:P.22 - P.22

 秋ようやく深くならんとする48年9月25日,北海道自治会館にて上記の大会が開催された.
 主催は道,札幌市,日赤道支部.後援は道市長会,町村会,道医師会,薬剤師会,道医薬品業会である.

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大渡氏の医師会論について

著者: 津田順吉 ,   大渡順二

ページ範囲:P.40 - P.41

 医師会論中,大渡論は柏熊,青山のものと違って,具体的素朴で有益で楽しい.そのほんの一部に反論を捧げたい.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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