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発言あり
はだしの医者
著者: 新井宏朋1 石丸寅之助2 大野絢子3 河路明夫4 真野元四郎5
所属機関: 1千葉大学養護教諭養成所 2広島原子爆弾影響研究所 3群馬県立福祉大学校 4鳥取県厚生部健康対策課 5大阪府吹田保健所
ページ範囲:P.1 - P.3
文献購入ページに移動案外楽天的で,お人好しの筆者だが,最近,人なみに公衆衛生の将来に対して危機感をもつようになった.それというのも,多年,農村の公衆衛生活動を一緒にやってきた有能な医師や保健婦が,むくわれることの少ないままに現場をさってゆくのに対して,なんの相談相手にもなってあげられなかったからである.
よく,公術衛生をやる人が集まらないと言われるが,行政の仕組みが残り少ない貴重な人材を無駄づかいしている事例を数多くみていると本当にがっかりする.毎年,中央から新しい厚生行政の方策が発表され,各種の施設が作られてゆくが,なんとなく見当ちがいな感じをもつのも,上述のことと無関係ではない.それに,地域の公衆衛生活動のなかで育まれた貴重な研究成果を大切にしないのも,日本の特徴のようである.いまだに日本人の脳卒中や心臓病が脂肪のとりすぎからきていると思いこんでいるえらい先生の多いのも,その好例であろう.公衆衛生の現場からの問題提起には目をむけず,外国の臨床医学の文献のみをありがたがり,大都市での臨床経験から一歩もふみだすことなしに「保健婦にもわかるような保健指導の基準」を作って厚生省に答申するなどは喜劇としか言いようがない.
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