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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生38巻11号

1974年11月発行

雑誌目次

特集 AMHTS(自動化多項目検診)

AMHTSはいかにあるべきか—地域保健医療活動との関連

著者: 西川滇八

ページ範囲:P.580 - P.581

 AMHTS(Automated Multiphasic Health Testing and Servicesの略)がアメリカに生れて10年余,世界的には200以上の健診機関で利用されている.これがわが国に紹介されるや,電機メーカーのうちには医療産業の中におけるAMHTのしめる将来性を高く評価して,早速調査研究して,1970年に第1号機を完成し自社の保健センターで使用はじめたところがあった.その後,次第にAMHTの装置を人間ドックや成人病健康診査など,医療の日常活動に採用する機関が増加し,全国では約30の保健医療機関で使用している.この気運に対応して,1973年秋に日本自動化健診システム研究会(樫田良精会長)が創立され,国内外のAMHTの研究開発に拍車がかけられた.
 Multiphasic Health Testing多項目健康診断の考え方はすでに1914年頃にはじまったが,自動化したシステムを組み上げたのは,コンピューターが医療に利用されるようになった後のことで,1969年はじめて,アメリカのKaiser Foundationが地域における医療プランの一翼を担うシステムとして採用した.

日本のAMHTSの現況と将来

著者: 河合正武

ページ範囲:P.582 - P.588

 健康管理の実施に当っては,まず,健康診断を行ない,個体の健康度を把握し,程度に応じて,適切なる処置(要治療,要観察,勤務制限など)を実施すると共に,更に,定期的に健康診断を行なって,長期に亘りフォローし健康度を観察することが常道となっている.
 個人を対象としたものに,人間ドックがある.これは,主として成人病の早期発見を目的とした総合健診で,今から20年前にわが国において開発されたものである.この間に広く普及し大きな成果をあげている.国民の間にも,その有効性が高く評価され,現在,押すな押すなの盛況である.

AMHTSの問題点

著者: 樫田良精

ページ範囲:P.589 - P.593

 AMHTSがわが国ではじめて開設されたのは1970年であるが,最近急速に普及しすでに30余の施設が稼働している.このような情勢に対応してAMHTSについての調査・研究・検討・批判なども急激に高まりつつある.私は,昨年11月創立された日本自動化健診システム研究会の会長としてこの新しいシステムの健全な発達のために微力を注いでいるが,AMHTSの抱える多くの問題点のなかから編集者の要望に沿って私見を多少述べてみたい.

AMHTSの問題点

著者: 西三郎

ページ範囲:P.594 - P.601

 AMHTSを導入することと,衛生行政,地域保健へおよぼす問題点についての考察ということが私に与えられた課題である.
 最初のAMHTSを導入するという事項についてみてみよう.現在,AMHTSについては27施設(昭和48年11月現在,内2施設予定)と報告1)されている.それが,AMHT and Servicesとして,機能しているか疑わしいといえよう.このことは,次の事項の衛生行政,地域保健(この内容をどう理解するかによるが)へのおよぼす問題点に大きく影響してくることは明らかである,ここでは,はじめにAMHTの導入が,現在の医療の現状の中でどのような問題点をもたらすかをみてみよう.

岐阜県立健康管理院におけるAMHTSの問題点

著者: 鈴木大輔 ,   井口恒男

ページ範囲:P.602 - P.606

 AMHTSが民間から地方公共団体まで含めて,各地で導入されたり,あるいは計画準備中のところが多いようである.岐阜県立健康管理院も,昭和48年4月よりAMHTSの運転を開始しているが,このようなシステムは従来の検診方法と違ったいくつかの優れた特色をもつものであるが,反面その運用とか活用方法には,検討すべきいくつかの問題点があるように思われる.
 AMHTSに関する研究討議は目新しいものではなく,既に関連発表がされており,筆者ら1)2)も今までに若干の問題提起をしてきた.しかし,AMHTSがPublicHealthの中でどのような役割を果たし得るのか,あるいは地域保健医療体系の中でどのような位置づけが期待されるのかが重大な関心事ながら,未だ十分な統一見解もしくは共通概念が確立されていないようである.このように,AMHTSと公衆衛生のかかわりは重要な意味を持つものであるため,保健医療に従事者すべてのものが,この問題を考えてみる必要があると思う.

AMHTSと保健婦

著者: 水野多美恵 ,   山崎和子

ページ範囲:P.607 - P.611

 AMHTSは医学における新しい分野として注目され,全国的に普及しつつある.
 昭和46年に開設された愛知県総合保健センターの保健婦として勤務した3年間の経験を通して,その実際と問題点等について述べる.

AMHTSと保健婦

著者: 志多セイ ,   松本弘子 ,   長瀬静代

ページ範囲:P.612 - P.614

 高山市では,国保保健婦活動の一端として健康院を利用し,疾病の早期発見,被保険者サービス及び,保健意識の高揚を目的として自動化多項目検診を行なったので,その状況及び,問題点,今後の方針について述べてみたいと思います.

海外のAMHTS

著者: 山口清士

ページ範囲:P.615 - P.624

 欧米におけるAMHTは1960年代から始まり,1970年に入って国際的な学会が設立されている.1964年米国のカイザー財団(Kaiser Foundation)のPermanente Medical Groupにより,OaklandにMulti-Phasic Health Check-upが設立されたのが米国における創始であるが,当初はカイザー工業会社の従業員に対する医療体制の中の医師の不足が原因で十分な医療が行なえない地域や工場に対する手段として考え出されたものであった.要するに疾病の早期発見,事前予防の方法として多角的な検査を行なうことがDr. Cutting,Dr. Collenらにより企画され,まず第1の手段として臨床検査の自動化,システム化による多人数の患者または健康者の身体検査が行なわれた.当時の文献にAML(Automated Multiphasic Laboratory)と称せられたのもそのためであるが,その他にMHS(Multiphasic Health Screening)とも称されスクリーニングという概念が逐次表面化して来たのである.

AMHTSからみた岐阜県職員の健康状態

著者: 井口恒男 ,   栗田孝子 ,   中村稚枝子 ,   森甫 ,   鈴木大輔 ,   又吉純一 ,   子安崇雄

ページ範囲:P.625 - P.629

 近年,成人の疾病は多様化しており,従来の胃検診,血圧検査などの単項目スクリーニング方式では,健康の把握は不十分である.健康状態を多角的に把える試みとして,単項目検診を組合せ同時実施する方法1)2)の他,最近では自動化機器やComputerを導入して,一貫したシステムで数10項目の検査が短時間でできるAutomated Multiphasic Health Testing System and Services(自動化多項目検診,以下AMHTSと略す)も開発され,すでに国内でも30以上の施設で運転されている3)
 岐阜県においても,AMHTSが導入され,昭和48年4月より運転を始めている4)が,この運転に先立ち,岐阜県職員を対象にテストランが実施された.このテストランは,システムの流れの検討,検診能力の検討,検査値の判定の検討を目的としたものであるが,対象となった県職員の検診成績の分析に当っては,主として健康であると自覚している職員を集計の対象としており,一般成人の健康管理対策上にも意義あるものと思われるので,その概要を報告する.

発言あり

検診と健診

著者: ,   ,   ,   ,  

ページ範囲:P.577 - P.579

健康生活への模索
 現代社会に住む私達が,健康への意識の変化を問題にする場合,人間という生命体のもっている基本的な特質に着眼する必要があろう.人間以外の動物は,自然への適応を習性としているが,人間は,自然に働きかけ,作り変える性質を持っている.こうした人間の営みは,物質文明,特に工業の発達を主としているが,元来,人間の生活への必要性から生まれた文明が,従来の形で展開される限り,自然の均衡を破壊し,短期間のうちに,地球は無生物の星になるという推論も成り立つであろう.鉱工業,畜産,自動車などから発生する公害により,私達の健康生活への不安は議論の段階を越えて,現実のものとなっている.WHOのいう「肉体的,精神的,社会的にも文句のない状態」が健康であるとすれば,公害物質による肉体的影響ばかりでなく,人間が作り出した環境の人間に与える影響についても,改めて問い返す必要があろう.私達の第1次的欲求から,現代社会における疎外感に至るまで,また,将来の子供に対しても,広範な不安が急速に拡大している現在,単に病気や怪我のない状態を健康と考えるだけではすまされるものではない.
 一方,主に臨床的な診断と治療を扱っていたかつての医療が,現在では健康の保持,増進に関連して「健康の程度」を識別する領域にも関与していることは確かである.

研究

妊婦梅毒の疫学的研究

著者: 園田真人 ,   木原純一 ,   古川亀子 ,   湯野タツメ ,   鎌田悦子 ,   山本浩二

ページ範囲:P.630 - P.634

 わが国における母子保健対策は,戦後とくに充実され,妊婦検診は重要な意義をもって今日に至っている.
 妊婦梅毒の早期発見,早期治療の大切なことはいうまでもないが,昭和20年代には強力な梅毒のペニシリン療法がおこなわれ,昭和30年代は梅毒が不顕症化するにともない,梅毒の治療はとかく軽視され,放置される傾向がある.

輻射環境下被服色彩による人体の温熱反応

著者: 田中正敏 ,   大野静枝 ,   窪田為延 ,   北博正

ページ範囲:P.635 - P.639

 人体の温熱生理反応は,環境,身体,心理的因子に影響され複雑である.
 環境因子として,気温,気湿,風速が主たるものであるが,産業衛生をはじめ,最近での室内環境においては,輻射条件も重要なものである.また一方,人体にもっとも身近かな微気候を形成するものは衣服であり,輻射条件との関係では,被服色彩も問題となる1)〜3)

日本列島

無料健診と1万5千円—岐阜県,他

著者: 鈴木大輔

ページ範囲:P.588 - P.588

 岐阜県では,最近2つの,成人層を対象とした健康診断が話題になっている.1つは,岐阜市で実施されている無料の成人病健診であり,もう1つは岐阜県立健康管理院(別名健康院)のAMHTSである.
 岐阜市の成人病無料健診は,家庭婦人の無料健診の制度化を求める直接請求が,発端になったものである.この請求に基づいて開かれた臨時市議会では,継続審議とされたが,最終的には,現市長の選挙公約ともからみ,受診料金が無料の岐阜市成人健康診査実施要綱ができあがり,本年9月2日より健診が開始された.この健診は,20歳以上65歳未満の市民に,10数種目の多項目検診を行なうものであり,岐阜市の3保健所を会場として実施されている.この健診事業は,マスコミでも大きく取り上げられ,全国的にも注目される制度だという厚生省のコメントが,新聞で報道されたこともあって,市民の高い関心を呼び,健診会場は満員の盛況であったということである.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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