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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生38巻2号

1974年02月発行

雑誌目次

特集 新・保健婦論

保健婦よ,どこへ行く

著者: 石垣純二

ページ範囲:P.72 - P.76

 わたしは過去18年,保健婦さんを激励しハッスルさせることが公衆衛生の退潮を支え阻止する唯一の道と信じ「生活教育」誌を出しつづけてきた.しかしこのごろはなんとなくザルで水をすくうような虚しさを感ずる日々で,事態は少しも好転しない.
 保健婦さんたちが構成している日本看護連盟が推薦して,いっしょけんめい票集めをして,ようやく当選させた石本しげる氏はさっさと自民党に入ってしまうし,さらに今年の参議院選では,看護連盟はなんと日本医師会の丸茂重貞氏を推薦し,ナース代表を推さないのだそうである.

保健婦の適正配置を

著者: 上村聖恵

ページ範囲:P.77 - P.81

 保健婦規則ができてから既に30年,保健婦助産婦看護婦法が制定され25年を経過した現在,地域社会のヘルスニードは,保健婦業務を期待していながらも対応しきれず,目前の業務量に押し流されようとしている.そのうえ,地域医療なり地域保健の中での保健婦として受持つ分野も明確にされないための混乱もある.どうしてこのような現状になったのであろうか.これからの保健婦活動を考える場合,過去の実態を直視し,そのなかからの問題点を追求しなければならない.

暉峻義等と小宮山新一と丸山博と

著者: 木下安子

ページ範囲:P.82 - P.85

 いま,保健所再編成を前に保健婦活動が一つの岐路にたち,いずれか1つを選びとらねばならないときにあると思われる.その重大な決定をするにあたって,保健婦活動に強い影響を与えた,すぐれた先覚者の考え方,方向性を検討することも意義あることではなかろうか.
 ここに暉峻義等,小宮山新一,丸山博の3名の先達の保健婦への提言をたどってみたい.

地域保健と保健婦事業

著者: 田中恒男

ページ範囲:P.86 - P.90

 保健婦事業の帰趨が多くの論議を呼んでいることは,すでに衆知の事実である.昭和38年厚生省医療制度調査会がその答申を提出し,その中で保健婦を含む看護職種の機能について一応のとりきめを行なったが,いわゆる看護の専門性から考えるとき必ずしも納得のいくものとはいい難いものであった.同答申が如何なる理由か,現実に施策化されていないため保健婦の機能に関する制約が生れていないことは,一面では保健婦自体の主張をもとに,その業務規定を再構成しうる余裕を残したものだともいえる.
 しかしすでに知られるように,わが国の保健婦業務は,欧米の公衆衛生看護事業とは独立した発達の仕方をしていることから保健婦とは何を専門機能とするかについて明確な主張を提示しにくい各種の事情もあったと考えられる.少くとも,欧米の公衆衛生看護婦が公衆衛生という方向への志向より看護そのものへの志向が強いのに反しわが国の場合そのあたりの認識はまちまちであり,時には看護と対立する姿勢すら示すこともあることはおそらくわが国にあっての独特な光景であろう.

地域における保健婦活動—その活動方法論と方向性をめぐって

著者: 橋本秀子

ページ範囲:P.91 - P.96

 あらゆる意味で,わが国の保健医療は大きな転換期を迎えている.その中で,看護のもつ役割は急速に重視されてきていると考えられる.そしてこの期待の具体的な展開は保健婦活動に顕著にあらわれると考えてよいであろう.現在,保健所問題懇談会の結論,村中研究班の報告などにもりこまれた内容をめぐって,その配置や身分上の取り扱いなどについて,行政上の問題が様々な憶測をよんでいるが,その点については論ずべき十分な事実を把握していないので,ここにとりあげることはむずかしい.むしろ筆者に課せられた目的は,理論的な保健婦業務のあり方について考えることにあると思うので,以下にその展開を試みたい.

保健婦活動を考える

著者: 三品照子

ページ範囲:P.97 - P.103

 保健婦とは何をする人か,望ましい保健婦像とは,保健婦活動は如何にあるべきか,など保健婦についての身分,処遇,教育,医療チームの中での保健婦の位置づけや,活動方法など多方面からの検討が行なわれるようになって,かなり久しい1)〜11)
 医療の概念が明確化したが,現在は,概念が先行し,具体的な活動を展開するには検討を要する課題が山積している.公衆衛生活動の一分野として位置づけられて来た保健婦活動も総合看護の中での機能が明確になり,看護の視点に立脚した保健婦活動が要求されるようになった.

新・保健婦論の論

著者: 山下章

ページ範囲:P.104 - P.105

 一部の地域では"保健婦"さんを最大の支えとして生活している人もあるのに,改めて新保健婦論をとりあげなければならないということは悲しいことである.編集者の依頼に応ずる元気も喪失してしまっている矢先に,たまたま総理府広報室で昨年2月実施した保健婦に関する世論調査の結果を入手することができた.20歳以上の男女2,500人ほどについての調査ではあるが,その結果は正直に素朴に住民からみた保健婦像を表わしているように思えるので,以下この結果を借用しながら私なりの意見を加えてみることにする.

発言あり

家庭看護

著者: ,   ,   ,   ,  

ページ範囲:P.69 - P.71

理論と実践の検討を!
 保健婦と接するなかで絶えず疑問に思うことは,業務のなかで用いられる「用語」をどこまで理解し,どんな意味で使っているのか理解できないことである.この点に関して私の理解力に問題があるのかも知れないが私見を述べてみたい.即ち,住民主体の……,家庭看護,地域看護,地域……医療等,極めて確信を持って口にしている.しかし,その活動からはどうしても本質を把握できない.極端ないい方をすれば,消化不良を起こした観念として映るのみである.聞くところによると,今日の看護は,患者だけがその対象ではないとか,いわゆる予防のための看護が問題になり始めているなかで,今後保健婦は,看護をどのような位置づけにおいて実践活動をしようとしているのか.従来,看護は闘病生活をする患者の身のまわりに起こる変化に対応する極めて具体的な援助を医師の指示のもとに行なわれるものだとされていた.しかし,その場が病院,施設であったり,また家庭や地域であり,場が多様化していく.しかし,その場の解釈と場の実践とを彼女達は明確にしないままに混同している.そういったなかで保健婦は自からの実践から,直ちにその実践を解釈しようとする極めて独断的なところが多い,即ち,自からの実践と実践の解釈は必然的に異なることを認識しようとしないし,できないでいるところに大きな問題がある.

海外印象記

第8回米国疫学夏期セミナーに参加して

著者: 吉村健清

ページ範囲:P.109 - P.113

 第8回疫学夏期セミナーは,1973年6月17日の日曜日,米国ミネソタ州・ミネアポリスのホテルで催された歓迎パーティで始まった.6月15日に東京を発ち,シアトル経由でミネソタに16日に着いた私は,時差の関係で朦朧としている頭に,慣れない英語の挨拶を聞かされるはめになった.セミナーの主催者であるミネソタ大学のSchool of Public Health,Division of Epidemiologyの教授Dr. L. M. Schumanに迎えられた講師陣およびセミナー出席者は,ユーモアあふれる挨拶の中で会食の一時をすごし,翌日18日から3週間にわたってミネソタ大学で開かれるセミナーに思いをはせた.
 このセミナーの説明をする前に,私がこのコースを受けるに至ったいきさつを書いておこう.

研究

東京スモッグにおける被害症状とシアン化合物との関係—(第2報)シアン化合物の発生源とオキシダント濃度

著者: 南雲清 ,   天谷和夫

ページ範囲:P.114 - P.118

 Ⅰ.シアン化合物の直接発生源
 1.アクリロニトリルとの関係
 1)アクリロニトリル(AN)生産過程とシアン(CN)
 ANの生産方式はソハイオ法がほとんどであり,その過程はプロピレンとアンモニア混合物を燃焼,酸化してつくる方法である。つまりこれを方程式にすると,
 2CH2=CH・CH3+2NH3+3O2
 →2CH2=CH・CN+6H2O
の製造過程で,10%以上のシアン化水素(HCN),アセトニトリル(CH3・CN)が副生される.触媒の性能が劣化すれば,この割合はさらに大きくなる.
 また副生するシアン化水素はシアン化ソーダ製造に用いられ,余剰のものは焼却処理されているものとみられる.

島根県八束町における不明肝疾患の実態について

著者: 山根洋右 ,   加茂甫 ,   小谷勉 ,   関竜太郎 ,   芦谷斗美子

ページ範囲:P.119 - P.124

 昭和43年頃より,島根県八束町において国保医療統計上肝疾患が増加し,住民の健康管理上,その実態把握,原因究明,対策樹立が緊急の課題となった.
 八束町を囲む出雲地方から,弓ケ浜半島にかけて昭和30年代にワイル病の流行があり,また中海の水質汚染が当町の飲料水に関与しているのではないかという危倶,あるいは当町の主産業である薬用人参,花木栽培に用いる農薬の障害などその原因をめぐって,いろいろ取沙汰され,肝疾患発生の背景には当町の歴史的,地理的条件,生活構造が複雑に関与していることが推察された.

調査報告

地域にみる・児童・生徒の眼鏡装用の現況と問題点—児童・生徒の眼鏡装用と「目の健康」はこれでよいか?

著者: 大関知司

ページ範囲:P.125 - P.131

 学校保健の目的は学童の発育を助長し,健康を保持増進し,かつ健康生活に必要な実践力を養うにあると定義されている.
 しからば健康とは,WHOの憲章中に『健康とは疾病虚弱の状態にないことはもちろん身体的精神的ならびに社会的に良好なる状態をいう』と定義されている.

保健所・42

兵庫県・伊丹保健所

著者: 大前重俊

ページ範囲:P.107 - P.107

 沿革
 昭和19年10月1日兵庫県立伊丹健康相談所の庁舎を移管され,兵庫県伊丹保健所として業務を開始し,現庁舎は昭和26年5月19日新築されたものであります.以来20余年幾多の変遷を経て今日総務課,環境衛生課,食品衛生課,保健予防課の4課制となっております.

日本列島

寄生虫ゼロ作戦—沖繩県

著者: 伊波茂雄

ページ範囲:P.124 - P.124

 沖繩県では従来から消化器糸寄生虫として回虫より鈎虫が多く,数十パーセントの高率に感染していた部落もあった.それで民間団体である沖繩寄生虫予防協会が「密生虫ゼロ作戦」を展開し,当時の琉球政府及び関係市町村とタイアップして糞便検査と駆虫を始めた.それから十余年になるが,ここ3〜4年は県が予算を出し,(同協会変じて)予防医学協会に「鈎虫病予防特別対策事業」として委託し,実施させている.その中間報告(昭和48年度事業で同年12月17日現在)が発表されたのを紹介する.
 1.コザ保健所管内(UR2型),沖繩本島中部.6村合計61,863名を対象としているが集便数は15,541(25.1%)である.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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