icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生38巻5号

1974年05月発行

雑誌目次

特集 学校医

これからの学校医とその役割

著者: 船川幡夫

ページ範囲:P.264 - P.267

1.学校保健の性格
 学校教育,学校体育,学校保健など学校という名を冠した言葉は多い.しかし,学校算数とか,学校英語といった言葉はあまり耳にしない,たしかに,学校保健というものは,算数,国語といった教科,さらに,教科としての保健とは,性格のことなったものであることを示し,同時に,ひろい意味での保健とはまたことなった学校ならではの内容も含んでいるといえよう.
 学校保健は,学校という教育を目的とした場における活動として,管理的な側面と,教育的な側面とをもっている.この両者は,車の両輪の如きものであって,これが協調して働くことによって,子どもたちの教育という目標に向ってうごくことができ,教育という目標に達することができるといえる.

学校保健の現状

著者: 能美光房

ページ範囲:P.268 - P.270

学校保健とはなにか
 学校保健ということばは,学校における幼児(幼稚園児)・児童(小学生)・生徒(中学生・高校生)・学生(高専生・短大生・大学生),教職員,施設・設備などの健康・安全にかかわる一切の教育活動のことを意味している.
 現在の学校保健は,図1のように保健教育,保健管理および保健組織活動の3つの分野によって構成されている.

鹿児島県医師会学校医会の活動

著者: 牧田健志

ページ範囲:P.271 - P.274

 医師法第1条に「医師の任務」として「医師は医療および保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上および増進に寄与し,もって国民の健康な生活を確保するものとする」と示されている.すなわち,医療とともに保健指導を行なうことは,法によって定められたわれわれ医師の職能的使命であり,公衆衛生に寄与することは社会的任務であり,国民の健康生活の確保は医師の道義的本分である.
 近時,医療の概念は拡大せられ,単に患者の診療にとどまらず,リハビリテーションの推進と社会的復帰を促進することは勿論,疾病の予防,健康の増進,体力の向上などまで包括された「コンプレヘンシブ・メディシン」であるとされている.現在の医師の職責はこのような包括医療の概念に立って医学の社会的適用を推進することであるといわれているが,全くそのとおりである.要するに人々の一生涯を通じて健康の保持増進とその健康をもっと健康ならしめるよう指導し実践せしめることであり,われわれ医師は人々の生涯保健を担当する重大な使命を与えられているのである.

秋田県医師会の児童生徒血圧調査活動

著者: 五十嵐信寛

ページ範囲:P.275 - P.277

 医師会活動の中で最も重要なものに地域保健活動がある.各地の医師会がそれぞれ地域の特性に応じた問題をとりあげて調査や対策を行なっている.
 秋田県は周知の如く,成人の高血圧や脳卒中の多発地域という特殊事情にある.秋田県当局も昭和45年に「脳卒中総合対策」を実施,更に昭和44年には県立脳血管研究センターを設立し,非常にユニークな研究が行なわれ,着実に成果をあげつつある.このような状況下において,昭和44年秋田県医師会は全県の小学校,中学校,高等学校の児童生徒約25万名の血圧調査を行なうことを決定しのである.

大津市医師会の学校保健活動

著者: 植村良雄

ページ範囲:P.278 - P.280

学校医会の成り立ちと全員校医制
 大津市学校医会は,昭和23年4月,医師会の片岡・本原および当時の市衛生課長の高槻3先輩が発起人となって結成・発足したものであり,この時医師会員全員が何れかの学校の校医として学校医活動を行なうという,全国に例をみない全員校医制がとられた.
 医師が診療所所在地区の学校の校医となるため,児童・生徒の個々を知っていることが多く,児童の状況把握がうまくゆく.これは後に心臓病管理・腎臓病対策・溶連菌問題をとりあげる時に,情報収集を確実にする大きな因子となった.

延岡市医師会の学童心臓検診活動

著者: 延岡市医師会校医部会心臓検診委員会

ページ範囲:P.281 - P.285

 めまぐるしい社会情勢の変転に対応し,ますます複雑多用化する地域保健の問題とともに切実な今日的問題を数多くかかえた学校保健において,今回の学校保健法の改正により,全国津々浦々で学童の心臓検診が実施されることになったことは誠に同慶に堪えない.
 このときにあたり,延岡市医師会の学童心臓検診の概要をご報告する機会を得たことは意義あることと思う.児童・生徒の健康診断および管理は従来ややもすれば結核に主力が注がれ,心疾患については必ずしも満足すべき状態とはいえない.しかもリウマチ熱の好発年齢である学童からは,つねに新しいリウマチ性心疾患が発生して,ときには不測の心臓急死を招くもととなり,またその幾人かは心弁膜症となり,また先天性心疾患についても往々にして放置せられ手術の時期を失して,あたら寿命を短縮する例は決して少なくない.しかしながら,児童生徒の循環器検診は,診断技術のむずかしさ,集団を扱かう困難さ,および検診費の嵩むことなどがあいまって未だに集団検診の方法が確立していない現状であって校医のもっとも苦慮するところである.

学校医は何をどうしていったらよいか

著者: 白戸三郎 ,   本城明朗 ,   安倍弘毅

ページ範囲:P.286 - P.291

医学教育と行政体系の根本的検討から
 「学校医をどうしていったらよいか?」という題を与えられたが,どうも主題の意味がはっきりしない.今のままの学校保健行政のワクのなかでどうしたらよいかという意味にも受取れるような気もするし,学校保健行政のあり方そのものの変革を考えての上での学校医のあり方のようにも受けとれる.どちらに焦点をあててこの文を書いたらよいかと迷ってしまった.
 いずれにしても,学校医問題は学校保健全体のあり方と深い関連を持っているし,さらに地域保健と学校保健とのかかわりあいや,専門職としての養護教諭のあり方とも密接な関係があるので,学校医のことだけを取りあげて論ずることは到底不可能である.

学校医制度の国際的展望

著者: 富田龍夫

ページ範囲:P.292 - P.295

 与えられた主題が余りにも大きいので,一次元低くして,折々訪問した諸外国の学校医の姿を紹介し,翻ってわが国の学校医制度と対比し,将来への希望を述べることを許して頂きたいと思います.
 私が始めて諸外国の学校医の方々とお会いしたのは,昭和38年5月,ローマで開催せられた第4回国際学校保健学術会議の席上であった.発表せられた種々のテーマからも察せられたが,一様に学校医といっても,学校保健技師,学校保健センターの勤務医および非常勤務医,学校巡回医師,開業医等正に種々様々であった.それぞれの国々の国情,政治体制,加うるに歴史的背景,伝統等にもそれぞれぞれの制度上の問題もあり,またその変遷が考えられる筈であり,一様に1つの観点からは長所短所は断定できないことを痛感せざる得なかった.

資料

わが国学校医制度の沿革

著者: 重田定正

ページ範囲:P.296 - P.299

 わが国における最初の学校医は,明治27年(1894)東京市麹町区に学校嘱託医という名称で置かれた.全県一斉に学校医を設置したのは山形県が最初で,明治28年(1895)のことであった.明治31年(1898)には全国一斉に学校医が置かれるようになった.
 大正9年(1920)学校医の資格および職務についての規程に公にされた.昭和4年(1929)学校および幼稚園医令が公布された.昭和24年(1949)中等学校保健計画実施要領(試案)によって学校医の職務が,昭和29年(1954)学校医の職務の基準が示された.

発言あり

過保護

著者: ,   ,   ,   ,  

ページ範囲:P.261 - P.263

子の健康を第1に考えよ
 身体が強くて病気にかかり難いことが健康であるのみならず,自己の持つ能力を社会参加を通じて最大限に発揮し,生活していくなかで健康は考えられなければならない.
 誰にでも理解されているようで,真には理解されていない健康ということを,再度確認し,如何に生活の中に取入れなければならないかを考える必要があるように思う.

論説

先天股脱集団検診の基本問題—とくにX線のリスクとメリットの問題を含む

著者: 今田拓

ページ範囲:P.300 - P.306

Ⅰ.先天性股脱が検診と結びつく要素
 乳児先天股脱は,他の先天性疾患とくらべて,いくつかの異なった特徴をあげることができる.その主なものをひろうと,第1に多発性,第2に初期症状の潜在化,第3に治りやすいといったことになろう.
 第1の多発性であるが,これは民族的差異地域的差異,それに診断者の差異によって,かなり違った報告がなされているが,おおよその見当では1,000人に対し5人程度で,これは1970年のわが国の結核リ患率17)の約3倍にあたる.

研究

農山村における循環器管理の問題点

著者: 関龍太郎 ,   小谷勉 ,   飯塚なおみ ,   勝島意登 ,   清水つゆ ,   池田孝子 ,   岡本たまえ ,   森広浩子 ,   山根洋右

ページ範囲:P.307 - P.311

 高血圧症は脳卒中に関連があり,その管理が脳卒中の予防に重要であることは多くの研究者によってあきらかにされている1)4)
 私たちは松江市の近郊農山村である松江市大野地区において,昭和48年より総合的な保健活動を開始している.そのなかで,高血圧の実態,とくに保健婦活動に関連のある部分について報告し,今後の高血圧管理の問題点について検討する.

海外印象記

Amsterdam 市立保健医療サービス(2)

著者: 山中孟

ページ範囲:P.312 - P.314

4)精神衛生部門(Mental Hygiene)
 Amsterdam市においては,保健活動の中でも精神衛生は持に重視されているものの1つである.ここの任務は,個人と社会施設との間の緩衡として働くことであると言う.
 精神病患者の入院の要否の選択や指導,アフタケアー,在宅患者の管理などが中心である.アフタケアーとしては,特に退院後身寄りもなく,家庭もなく,世話する人もない患者のために,精神医学的休息所や看護ホームが設けられて将来の社会復帰にそなえている.また市内を5地区に分けて,各地区には1人の精神医と1〜2人の訓練された(social psychiatric treaining)看護婦が任命されていて,予防活動とアフタケアーを行なっている.麻痺性痴呆の予防のため,その早期発見をする目的で特別相談時間が設けられている.1956年には老人の精神障害者を収容するための観察病棟ができた.ここに収容された患者の1/4は元の家庭に帰されて在宅管理をうけ,残りは老人用精神障害者収容ホームや,更に長期のホームに送られている.また,特殊小学生に対する社会的援助を担当する課(Bureau for Social Pedagogical Care)では,精薄のみでなく,身体障害者で普通の学校教育を受け付られなかったものを対象として,社会復帰のための特殊教育を施している.

事例

三歳児健診における自閉症の見わけ方と指導

著者: 岩佐京子

ページ範囲:P.315 - P.318

 東京都では,昭和43年度から三歳児健診に心理判定員も加わることになり,精神発達の面における問題の早期発見と指導の役割をになうこととなった.私自身も当初は小平保健所で,昭和44年以降は武蔵調布保健所でも週半日心理判定を担当してきたが,一番悩まされてきたのが「コトバのおくれ」であった.

日本列島

不幸な子どもを生まない市民運動—昭和48年度札幌婦人大会,他

著者: 吉田憲明

ページ範囲:P.267 - P.267

 昭和49年3月8日,札幌市経済センターで上記の大会が盛大に開催されたが,これは札幌市の不幸な子どもを生まない運動推進婦人会,健康を守る婦人の集い,民生委員婦人部及び札幌市衛生部で行なわれたものである.
 市民運動推進テーマは,*婚前教育の推進をはかりましよ う.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら