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特集 環境保健教育
文献概要
われわれの教室は環境衛生学という講座名をかかげている.日本の医学教育機関のなかで,環境衛生学,欧文でDepartment of Environmental Healthの名をもつのは,久留米大学医学部だけではなかろうか.5年前にこの講座の主任として招かれたときには,この名前に大変こだわってDepartment of Hygiene衛生学教室という名に変えようと真剣に考えたことがあるが,講座名にふさわしい医学教育のカリキュラムを組む努力をして,また新しい研究分野の開拓をなしていくにつれて,現在では,そういう名をもつことにむしろ誇りを感じるようになった.環境衛生あるいは環境保健という言葉が医学教育の中で定着しているというなら,それは,やはり時代の変遷がなした技ではないかと考える.わが国の衛生学はドイツのPettenkoferの実験衛生学が導入されて主流をなし,実質的には環境衛生学が中心であったと思われるが,戦後,公衆衛生学public healthが導入されて健康と疾病の問題をとりあげるようになり,環境衛生学は環境保健学へと移り変っていく.私の乏しい知見からしても,環境衛生学は生態学human ecologyとの結びつきを強めながら,社会医学としての環境保健学へと高揚していくようになるだろうと思われる.
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