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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生39巻10号

1975年10月発行

雑誌目次

特集 ヘルスマンパワー

日本のヘルスマンパワーの現状と課題

著者: 橋本正己

ページ範囲:P.668 - P.678

はじめに
 今日,世界の先進的諸国では,人口の老齢化,傷病像の質的変化,医療技術の革新と医療の専門分化等が,国民の健康に対する権利意識の向上と相まって,医療・公衆衛生に対する需要を量的にも質的にも際限なく増大させるすう勢にある.その半面,これに対応し,これを充足すべき社会的諸資源には,おのずから限界があるため,医療・公衆衛生に対する需要と供給のギャップが急激に拡大しつつある.このことが各国で例外なく大きな社会問題となっていることは,周知のとおりである.近年national health planningに対する各国政府の関心が急速に高まっていることは,端的にいって,今日の医療・公衆衛生の危機的な状況に対して,このアプローチこそが限りある社会的諸資源を最大限有効に活用するために,のっぴきならぬ課題であることを示すものといわなければならない.
 すなわち,national health planningは,国の総合的な社会経済発展計画の重要な一環であり,またそれ自身いくつかの基木的サブセクターを有するものであるが,その中でも,計画全体への影響が至大であり,かつ最も困難で複雑な条件にあるのが,ヘルスマンパワーの問題である.

ヘルスマンパワーの将来供給予測

著者: 方波見重兵衛

ページ範囲:P.679 - P.692

はじめに
 健康に障害が生じた場合,ときには死に連なるときもあるが,個人にとって,いつでも,どこでも,病院なり診療所を訪れ入院することができ,しかも自由にそれを選択できるならば理想的である.
 それには十分な,医療に関係する人々・施設が必要である,しかし自らその限界を生ずるであろうし,また限界がどのへんにあるかを予測することは容易な問題ではない.ヘルスマンパワーの発展段階において,少なくとも患者,ヘルスマンパワー,施設等の調和のとれた状態が望ましいことも事実である.

地域保健のためのヘルスマンパワーの増強—公衆衛生看護

著者: 松野かほる

ページ範囲:P.693 - P.698

はじめに
 現在の公衆衛生看護活動は終戦直後の混乱した社会情勢や最悪な住民の健康状態に対する危機感から,それが看護の機能であると否とを考えるいとまもなく,看護以外の雑多な業務までも背負いこんで懸命に働いてきたことに端を発して,その混乱した状態が落着いた後でも,保健所が衛生行政の第一線機関として発展し,業務が拡大されていくにかかわらず,それらにかかわる職種や人員の整備が伴なわなかったため,その多くを保健婦がカバーしたという経過を辿り,それが習慣となって現在にいたっているといえよう.そこで公衆衛生看護のマンパワーに関する検討では,まず公衆衛生活動全体に目を当て,その一翼をにない,地域にある看護ニードを満たす機能をもつものであるという見地に立って考えなければならないと思う.

地域保健のためのヘルスマンパワーの増強—メディカル・ソーシャル・ワーカー

著者: 姉崎正平

ページ範囲:P.699 - P.710

はじめに
 ここでの共通テーマの冒頭に見られる「地域保健」とは,従来の保健所活動から連想される病院・診療所外での保健指導や予防医学活動にとどまらず,治療,予防,リハビリテーション,健康維持・増進を含んだ住民の健康に関する活動が,地域において統合されるべきであるという目標概念であると理解する.したがって本稿では保健所のみならず,病院,診療所をも含めたメディカル・ソーシャル・ワーカーについて取り上げることになる.しかし,ここでは,メディカル・ソーシャル・ワーカー(以下MSWと略記)が,増強されるべきヘルスマンパワーの1つであるという前提を,アプリオリに認めて論を進めるのではなく,その前提を問い直しつつ,わが国においてMSWが増強されねばならない理由,増強を妨げている原因,そして,今後の増強のための運動の方向を,多少数量的資料や推計をまじえ探ってみたい.特に筆者の知る限り,MSWが限られた資本主義国に存在し,社会主義国にはほとんど存在しないという事実は,MSWの発生や役割りを考える場合,重要な点と思われる.

地域保健のためのヘルスマンパワーの増強—リハビリテーション・ワーカー

著者: 進藤隆夫

ページ範囲:P.711 - P.715

リハビリテーション領域の問題の概要
 1.リハビリテーシヨンの意味
 リハビリテーションとは,心身に障害ある者が社会人としての生活ができるようにすることである.その目的は,それらの人々を職場・家庭・学校へ復帰することを促進するとともに,患者の身体的,精神的,社会的,職業的機能を促進し,患者の能力を最大限に発揮させて,充実した生活ができるようにすることである.

アメリカ合衆国の医療従事者

著者: 前田信雄

ページ範囲:P.716 - P.720

はじめに
 本稿でとり上げる問題は,主にアメリカ合衆国の医療従事者の現状,不足の原因,需要と供給の予測,などである.この研究は医療従事者の国際比較を念頭において行なわれているものであるが,比較的にととのっているアメリカ合衆国の諸統計に基づいた分析が主である.

資料

ヘルスマンパワー計画に関する文献の一批判

著者: 橋木正己

ページ範囲:P.722 - P.732

I.緒言
 人間資源に関して経済学者たちは,予報のために2つの基礎的な技術を利用することができる.すなわち,同時方程式的計量経済モデルおよび非確率論的マンパワーモデルがそれである.前者は,世界が単に近似的にのみ測定可能な一連の複雑な相互関係として記述されうるものであると仮定している.後者は,それらの諸関係がより単純であり,むしろ単に近似的というより以上に詳細に知ることができるものであることを示唆している.両方の技法とも,現在の需要と供給から将来の需要と供給の予測を作り出す.この報告書は,ヘルスマンパワーの予測の試みを徹底的に調査したものではなく,むしろこれら2つの代替的方法について大づかみなアウトラインを提供したもので,広域計画に対するそれぞれのアプローチの適用性を評価し,さらにまたニューヘブンに有用なモデルを作成するために何をなすべきか,を論じたものである.

公衆衛生看護体制の強化拡充—特に市町村保健婦増強対策への提案

著者: 竹村秀男

ページ範囲:P.733 - P.735

まえがき
 近年におけるわが国の社会経済的変動のテンポは,世界に類のないほど速く,人口の老齢化,成人病を主体とする病疾像の変化などが急速に進行しつつある.また,出生率の低下に伴なう人口資質の向上,特に母性および乳幼児の健全育成のための母子保健対策の積極的な推進の要請も増大しつつある.
 このような背景のもとに,国の施策としては保健所問題懇談会の基調報告(昭和47年7月)の方針にそって,市町村における地区保健センターの普及整備の構想が具体化されようとしている.また,市町村における母子保健事業の拠点として重要な役割を果たしている母子健康センターの設置施策も,引きつづきすすめられている.

発言あり

パラメディカルということ

著者: ,   ,   ,   ,  

ページ範囲:P.665 - P.667

医療の本質を問い直す契機に
 paraとは側面,近接という語意を持つ接頭語であるから,paramedicalとは医療近接領域で働く人人ということになる.どんな人々かを決めるためには,medical staffとはどのような人々によって構成され,それらの人々の機能を支えるためにはどんな人々の力を借りなければならないかが論じられなければならない.どの職種の人がmedicalか,paramedicalかのどちらに入るかが不明確のままあるのが現状であろう.
 医師がparamedicalという発言をする場合には,「医師以外の医療従事者」という意味が強く表現されていることが多い.これはmedical schoolといえば医学校であるから「医療は医師が行なう」という概念となり,「医師も行なう」ということにはなりにくいのかもわからない.ところが,医療における対人サービスを直接担当している看護職を例にとれば,医療近接領域で働くというよりも医療の中核を担当しているので,paramedicalでなく,medical staffというのが適切であろう.過大な業務量に対応できる医師数が確保できないから,医師以外の医療従事者に肩代わりできる業務はすべて医師の業務からはずし,その業務をparamedicalに,という発想からでは,ヘルス・マンパワーの問題を正当に論じえない.

連載 公衆衛生の道・7

渋谷保健所(続)

著者: 山下章

ページ範囲:P.738 - P.742

結核患者管理の研究
 結核患者管理の研究は,結核予防会の御園生先生を班長にして,重松(国立公衆衛生院),小宮山(川崎市高津保健所),白戸(神奈川県松田保健所),春日(埼玉県所沢保健所),田部(千葉県中央保健所),高島(愛知県衛生部),三沢(新潟県巻保健所),井田(大阪府池田保健所),内田(国立公衆衛生院),島尾(結核予防会),松谷(結核予防会)というメンバーで,その中に都市保健所代表として私も加えられたのである.なお翌33年後半からは,以上の他に清水(東京都王子保健所),肥田(静岡県三ケ日保健所),上田(山口県防府保健所),丸山(岡山県瀬戸保健所)の諸氏も加わった.
 前所長は白衣を着てクリニックにも出てくれたのに,山下所長は全然医者らしい仕事をしないばかりか,結核患者管理の研究なんて余分な仕事を持ちこんできて,ただでさえ忙しすぎるくらいの渋谷保健所なのに……と,最初のうちは職員の白い目がはねかえってきた.しかし,あれこれと作業をやってもらっている間にみんなの考え方が変わってきた.その筆頭が正岡さんであった.最初は白眼視の旗頭であった彼女がいつしか私にハッパをかけるようになった.そして結核患者管理の最もすぐれた実践者となり,今も東京都の結核課長をやっている.彼女以外にもすぐれた保健婦さんや事務職員が数多く揃っていた.

日本列島

市民の健康と福祉に関する総合政策体系のあり方について—京都市

著者: 山本繁

ページ範囲:P.678 - P.678

 京都市では,市民との共同思考の中で,総合的,系統的な福祉政策の充実をはかる目的をもって,市民の健康と福祉に関する計画委員会を昭和49年8月に設置している.
 この委員会は市民各層の代表43人と行政側委員5人から構成されていて,まさに市民の代表と自治体とが共同作業で,「市民ひとりひとりの全生涯における公的保障としての,"市民の健康と福祉に関する指標"(いわゆるシビル・ミニマム)を策定する」という全国的にみても特異な試みである.

札幌市医師会と札幌市保健所長会との懇談会開催

著者: 吉田憲明

ページ範囲:P.736 - P.737

 札幌市医師会は金森会長のもと,つとに地域保健活動及び救急医療活動に積極的動意をみせ,現実に札幌方式による夜間急病センターを設置して全員奉仕の態勢で実践活動を行い全国にユニークな存在として注目されている.
 勿論この設立に際しては,札幌市当局も行政の立場から援助を惜しまないという形で進んで来た.従って医師会館の設立や看護学校の開設にも合議を重ね,夜間急病センターの運営にも実質的な援助を行っているわけである.夜間急病センターが開設されて,すでに3年の年月が流れ,その間色々な問題も提起されて来たのも事実である.

宮城県内ことに柴田郡の休日診療について—宮城県

著者: 土屋真

ページ範囲:P.737 - P.737

 近年,休日に診療していない医師が殆んどになって,休日の医療確保が人道的立場からも大きな問題となり,各地でその対策がたてられています.当県でも市部はことに医師数に恵まれていることからも,一般に病院や診療所の理解と協力がえられ易く,仙台・石巻・気仙沼・白石・岩沼・角田・古川などの各市で休日診療がほぼ軌道にのっております.
 郡部では一つの方法として広域的な考え方での解決がなされつつありますが.この問題は市部に比べて容易ではありません.登米郡では公立佐沼病院の新病院に救急センターが併設され,郡内の病院や開業医の協力を期待しての休日診療と救急医療が計画されましたが,まだ円滑にはいっていないようです.亘理町と山元町(亘理郡医師会の協力),鹿島台町,川崎町,丸森町などでは休日診療がすでに実施されています.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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