解説
米国の地域精神衛生活動について(1)—カリフオルニヤ州北部を例として
著者:
桑原治雄1
所属機関:
1三重県立高茶屋病院
ページ範囲:P.241 - P.244
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私達が新らしい土地を訪ねるときは自分の知識や視野の容量だけしか印象を持ってかえれないそうです.私の述べることも,つまりは私の持ち帰ることのできた部分にすぎませんが,カリフォルニヤ州に1年滞在し地域精神衛生活動に参加した体験から,日本より数歩進んでおり,多分将来の我々の地域精神衛生活動の原型となるかと思われました.カリフォルニヤで行われていることの基本構造は米国全体について共通します.カリフォルニヤの実践の徹底さと患者の人権の尊重において卓越しています.英国と比べても——私は東ロンドンの一部とマンチェスターのサルフォード地区に1カ月程参加しただけですが——患者の人権の尊重と新らしい治療努力への意気込はカリフォルニヤの方が秀れていたようです.
いずれにせよ,英国や米国では患者を単科精神病院でみようとする病院中心の立場から,患者をできるだけ在宅で地域社会から引離さずに見ようとする地域社会中心の立場に移行しており,この体制はもう後戻りすることなく定着しております.この点でも未だ隔離収容の精神病院が中心である日本の精神医療体系は大幅に遅れているといえましょう.