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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生4巻2号

1948年06月発行

雑誌目次

綜説

社會保障の素描

著者: 内野仙一郞

ページ範囲:P.63 - P.69

前書
 A―社會保障つて云ふ考え方は,比較的新らしいんでしたね。
 U―えゝ,そうです,未だ十數年にしか成らないでしよう。ですから社會保險の方が60歳の老齡者だとすると,此の社會保障の方はまだ靑少年と云う所でしようか。

原著

BCGの再接種について(第1報)

著者: 川村達

ページ範囲:P.70 - P.77

I緒言
 BCGの再接種に就いては益子1)の報告があるが,著者等2)はさきに數種の菌量によるBCGの再接種後,約1ヶ年にわたる觀察を行ない,再接種の場合には,初接種に比して,ツベルクリン(以下ツと略記す)反應が,早い時期に最高の陽性率を示すこと,竝びに,菌量による陽性率の差が,初接種に於ける樣には明かではないことを報告した。此の觀察ではBCG接種後の第1囘檢査迄の日數は,47日乃至69日であり,菌量は1人當り0.12,0.06及び0.03mgの三種であつたので,今囘の實驗では(1)BCG接種後一番早い時期に檢査すること,(2)更に少量のBCGを使用した場含の成績を得ること,(3)再接種の場合には可成りの菌量の差も,ツ反應には現われぬこと,細沼3),大林等4),金光5)等の報告より考へれば,再接種にはBCG死菌を用ひてもツアレルギーの復活をもたらし得るのではないか,と云う事などを考慮して實施した。

論説

衞生行政のあり方

著者: 川畑愛義

ページ範囲:P.78 - P.80

 新渡部稻造博士の高著"東西相ふれて"のなかにはつぎのごとき所見がのべられている。
『現在の政治家は科學の力量を知らぬ。政治家の思想は科學の思想におとること數百年だとじつに然り,現今の科學をわきまえぬ政治家は國の政治にあずかり,あるいは社會の改良を口にする資格をもたぬものである……………』

公衆衞生と榮養の問題

著者: 有本邦太郞

ページ範囲:P.80 - P.82

 疾病の豫防,健康の保持にはこれが原因となる外的條件を芟除せねばならぬことはいうまでもないが,同時にこれが内的條件をもととのえねばならぬ即ち疾病に對する身體抵抗力を培養し,これに抗することが必要である。公衆衞生における榮養の地位は主としてここに存するのであつて,從來ともすればこの認識が一般に稀薄のように思われる。われわれは單に生命を保ち疾病におかされないからといつてそれで眞の健康がえられたと解してはならない更に加うるに旺盛な活動力によつて勤勞が營まれ生活の目的が達成されねばならぬ。そして,これが獲得には鍛練等も一つの必須要求ではあるが,更に重要なのは適正な榮養の補給である。活動に十分なエネルギーが供給されてもそれが食物として榮養の適正を缺いた場合には身體機能が十分にそのエネルギー効果を發現せしめえないから從て十分な勤勞が營まれない。
 前段にものべたように榮養は公衆衞生の一環として疾病の脅威から身體の安全をまもるばかりでなく更に高度の健康を持し,進んでは體質の改疇を目指すものであるから,いつの世いかなる國においても重要であるが,特に榮養資材である食糧に不足する時期または場所にあつてはその重要性を増すものである。

研究と資料

BCGワクチンこの頃の研究と實施について

著者: 柳澤謙

ページ範囲:P.83 - P.92

 わが國では1925年志賀潔氏がはじめてCalmette氏からBCGの菌株を譲り受けて來られ,今村氏がそれによつていち早く研究を進められて以來,各方面では少數ながらBCGの研究者はあつたが,1935年前の研究はわが國では極めて低調であつた。
 昭和12年(1937年)秋,日本學術振興會に結核豫防小委員會を作る議が出て,翌年4月から故長與又郎氏が委員長になられ,わが國の結核研究の權威者がBCGの研究に没頭するに至つたのである。昭和15年(1940年)頃からは陸海軍の一部でBCGを結核豫防實施方法のうちにおり込み,その成績の優秀であるのに鑑みて,厚生省では昭和17年(1942年)就職せんとする學童全部にBCGを接種することになつたのである。

諸種驅蟲劑の比較試驗

著者: 一丁田健一

ページ範囲:P.92 - P.97

 寄生蟲對策は,たゞ驅蟲劑を澤山作つて浴びる程服用しさへすれば,それで万事終れりとすべきではないので,根本的に糞尿の充分な始末を基礎としなければ絶滅は期し難いものであるのは當然の事である。しかし現在輸入,放出放出を懇請してゐる食糧の不充分なときに,家庭菜園をやめろとか,又肥料不足の代に充分腐熟した糞尿を使へとか云つてもそれは無理と云ふものである。それ故この方面の事はさておいて,驅蟲劑としてどんなものを生産するのに努力してゐるかを述べ,現在迄に入手し得た信頼するに足りるそれ等藥品の効力を表示して使用される方々の參供に供し,いさゝかなりとも寄與する所があれば,本文を草した目的は充分に達成されたと云へるので,筆者の本懷之に過ぎるものはない。しかし淺學愚鈍,しかも多忙の事とて充分な參考資料もなく,充分な調査の餘猶もないのでこの目的が達せられるかどうかを危ぶんでゐる。何卒御判讀をお願ひする次第である。

製品に含有されて居るSulfaminの定量法について

著者: 松本和夫

ページ範囲:P.97 - P.100

まへがき
 市販各種藥劑に對する公衆衞生上の行政的取締措置については,從來でも多くの各種の努力が拂はれて來たが,昨今の状態では更に嚴格なる措置が講じられなければならぬ様な状態に立ち至つて居る。然し乍らこの種の努力が直ちに効果をあげるに取締對象である藥劑の品質を容易に正しく評價出來ることを一つの條件として居る。このやうな品質評價に關する試驗にはすぐれた技術が要求されるは勿論であるが,行政上の措置として行はれる場合には如何なる試驗室,如何なる試驗者でも同一檢體につきては同一成績を得られる様な試驗方法が定められてあるのが好ましい。言ひ換れば其の測定値の精密度は,實際上の必要限度内で,その試驗が容易に行ひ得る樣な標準法が定められてあることが好ましい。著者は以上の意味でSulfamin製劑に含有せられるSulfaminの定量法につき小實驗を試みた。米國藥局方によるSulfaminの定量にはBengal.核に直結する-NH,基のDiazo-化に要するNaNO2の量により求める方法が使用されて居る。ところがこのSulfaminのDiazo-化の終末點をヨードカリ澱粉糊液を指示藥として判定するには,熟練を要し,初心者では勿論,相當の誤差を伴ふことをまぬがれない。

東京都江戸川區の水田マラリア特にその傳播蚊發生状況について

著者: 細井輝彦

ページ範囲:P.100 - P.108

1.緒言
 東京都江戸川區には古くから土着性マラリアがあり,現在でも年々少なからぬ新感染が行われている。これが對策の資料として,都廰防疫課では,昭和21年に野崎勇氏が,主として患者發生状況を調査されたが,筆者はその後を承けて,22年6月から10月まで,蚊の發生状況を調べた。
 蚊族調査の方法は,人員,資材,期間に制限があつたので,幼蟲の定性的蒐集に限局し,區内全域の主要水系を,期間内に1巡する計畫で始めた。しかし種々の事情から,地域によつては,單に視察だけで終つた所が少くない。また季節による差異を比較するため,一部の地區では,異る季節に2,3巡の蒐集を行つた。

最新の文獻

濾過性病原體並にリケツチヤ病の治療に就いて,他

著者: 早川生

ページ範囲:P.109 - P.115

 近來,濾過性病原體,リケツチヤ病などについて。その研究が非常に進展してきたが,Rockeseller研究所のRivers氏は大要次のように述べている。
 細菌,スピロヘータ病の化學療法或は抗菌性物質を利用する治療法の樣な劃期的なものが,未だ本病治療に發見せられてゐないことは誠に遺憾である。之れは細菌,スビロヘータ病と濾過性病原體,リケツチヤ病の病原體が本質的に差異あるがために化學物質に對する反應も異る爲めと考えられる。この樣に未だ濾過性,病原體リケツチア病には化學,抗菌性物質の劃期的に作用するものが明らかでないとは言え決して本病の治療が望みがないと言うわけではない。例えばMeiklejohn,Wiseman並に其の協同研究者はPenicillim及びSulfadiazineがPssittacosis,lymphogranulomaのあるものに効果があると言つて居る。Greiff及びPinkertonは實驗的Rickettsia病にPenicillinが効果ありと言い,又その他の者はaminobenzoic acid及nitroacridineが効果ありと言つてゐる。鶏卵培養のInfluenza B病原體にnitroacridineが發育阻止作用のある事は事實である。

保健所のページ

山間僻地の保健運營について

著者: 石田一郞

ページ範囲:P.118 - P.121

はしがき
 今般すべての國民が健康で文化的な生活を營み得るために,公衆衞生の向上と増進とを期して,保健所法が改正せられた事わ,今迄にこの國でとかく輕んぜられていた公衆衞生の面に非常な進歩が豫期せられると共に,社會保障と社會福祉の仕事の一部が保健所業務の中に取り入れられた事わ,社會醫學が國によつて組織的に取り上げられたものとして注目すべきである。
 この新しい考えに基づいてこの山間の僻地に設けちれている保健所の現在までの運營について卒直に報告して皆樣の御批判を仰ぎたい。

保健所法施行令—昭和23年4月2日政令第77號

ページ範囲:P.122 - P.124

 第一條 保健所法第一條の規定により市を次のように定める。
 札幌市,小樽市,函館市,仙臺市,横濱市,川崎市,横須賀市,新潟市,金澤市,岐阜市,靜岡市,名古屋市,京都市,大阪市,堺市,神戸市,尼崎市,釧路市,和歌山市,廣島市,呉市,下關市,福岡市,小倉市,八幡市,大牟田市,長崎市,佐世保市,熊本市,鹿兒島市。

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勞働基準法(抜萃)

ページ範囲:P.115 - P.117

第四章 勞働時間 休憩,休日及び年次有給休暇
 第三十二條 使用者は,勞働者に,休憩時間を除き1日について8時間,1週間について48時間を超えて勞働させてはならない。

ニュース

著者: 厚生省

ページ範囲:P.125 - P.125

日本腦炎撲滅對策實施要領(抜萃)
 實施要領:1.實施地域—全國的に實施し,患者發生地には特別對策を行う。
2.實施期間−8,9の2箇月に主力を注ぐ

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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