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開拓村の衞生状況
著者: 大塚正八郞1
所属機関: 1東京慈會醫科大學林内科教室
ページ範囲:P.349 - P.351
文献購入ページに移動開拓村は衆知の如く終戰の年の11月から研究的に開始されたもので,國庫の補助によつて罹災者,引揚者を中心に入植せしめて出來上つた組合式の未完成の人工的作爲農村で,從來の既設農村とは創成の點からしてもかやうに異つてゐる。また營農も殆んど確立する年月も經ぬまゝに凡ての開拓村は生活的にも豐かでなく,諸種文化を吸收する上にも甚だ不便を覺えている状態にある。交通が便利であるか或は大きな既設町村に近接するものにあつてはこの點も大いに緩和されるわけであるが,所謂酒屋へ3里の邊境な地區にあつて,然も開拓も漸くその緒についた許りの所にあつては天水以外に飲水もなく,電氣もなく,手製の萱の家に住つて開墾に從事している状態である。この樣な状況から保健衞生の面も.結論的に云つて當局の指導にも拘らず凡てに亙つてふゆきとどきである。衞生指導,疾病豫防の面に於ても,開拓村の保健問題は既設農村に於ける所謂農村保健とはその生成竝びに現状からみても大きな距りがあるわけで,この點に深く留意して各個別の開拓村の持つ特異性をよく把握して保健衞生を考究しなくてはならぬ樣に思はれる。
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