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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生40巻1号

1976年01月発行

雑誌目次

特集 地域医療計画と公衆衛生

主張

著者: 橋本正己

ページ範囲:P.4 - P.5

 人口老齢化,傷病・死亡像の質的変化,医療に対する権利意識と生活に密着した健康観の深まり,医療技術の革新等々,近年における社会経済条件と国民の主体的条件のいちじるしい変化のもとで,水準と効率の高いHealth Care Delivery Systemを実現することが,今日政治体制を越えて,世界の先進的諸国の保健(医療・公衆衛生)領域に共通する緊急かつ至上の課題となっている.60年代以降の社会経済環境の変化がとりわけ激しいわが国にとって,この課題はいっそう切実というべきであろう.現在,国の保健計画National Health Planningとその基盤となる地域保健計画Community Health Planningが,好むと否とにかかわらず,医療・公衆衛生領域でののっぴきならぬ政策課題となっていることは,この間の事情を物語っているものであり,わが国も例外ではあり得ない.
 1974(昭49)年8月,わが国は「医制」公布満100年を迎えた.日本の医療・公衆衛生は,すでにその近代的な発足から100年の歴史を持ったわけである.各国の医療・公衆衛生制がすぐれて社会的・政治的な所産であり,決して問題を先取りして計画的に整備されたものではなく,それぞれの時代と社会ののっぴきならぬ要請の中から,しだいに形成されてきたように,日本の場合にもそれがすぐれて社会的,政治的な産物であることはいうまでもない.

地域医療のシステム化

著者: 上林茂暢

ページ範囲:P.6 - P.18

2つのシステム化
 医療荒廃を打開する方向として,地域医療,医療のシステム化が叫ばれ,そのなかで医療計画の論議もさかんになってきた.そのこと自体,医療危機が患者,国民,医療関係者のみならず,体制側にとっても深刻になっていることの反映といえよう.それだけに,用いられる言葉は同じでも,内容はちがったものとなりかねない.
 医療システム化というと,現在ではコンピーューター化,自動化を軸とした医療再編成を前提とする動きが強いが,その可能性・限界・問題点については,「医療システム化の将来—医療産業の技術論的分析」(勁草書房)で述べた.企業サイドより導入が予想されている病院自動化,総合健診システム(AMHT),僻地・救急医療システムに共通する問題として次の点を明らかにしておいた.

地域医療計画における健康指標について

著者: 小野寺伸夫

ページ範囲:P.19 - P.28

序説
 1.地域医療計画の潮流
 地域医療計画について,現在,各界・各層からいろいろな論議がなされている.その論議も,地域医療計画なしでは何ごともすすまないという発想から,何となく考えてみようとするところまで受けとめ方が千差万別,といってよい.
 しかし考えてみると,計画のために計画があってよい訳でなく,より基本的な問題とよってきた条件を知り,具体的施策として計画が位置づけられて,発展してゆくことが肝要である.

地域医療計画の問題点

著者: 渡辺孟

ページ範囲:P.29 - P.38

まえがき
 わが国における社会生活基盤の,とくに過去10数年における急激な変革は,疾病構造の絶え間ない変化と相まって,国民の医療需給における質と量に著しい変動をもたらした.
 しかしながら,その間,わが国の保健・医療を支える法体系,行政,教育,保険,福祉などの諸制度とその運用にはほとんどその場しのぎの手が加えられたにとどまり,現在および将来の国民医療に対応できるために必要であった抜本的改革は実行されず,また極めて近い将来にそれが日の眼をみるには,なお大きな疑念がある実状である.

鼎談

医療情報システム開発の姿勢

著者: 西三郎 ,   猪瀬博 ,   久保全雄

ページ範囲:P.39 - P.51

 医療情報システムの開発が医療の中で大きな課題となっており,厚生省も大規模なプロジェクトによって研究に着手している.医療情報システムの方向がどこにあり,また,そこに至る技術的な可能性と,予想される問題点はどのようなことか.異った立場の3氏に核心を衝く鼎談をお願いした.

発言あり

医療情報システム

著者: ,   ,   ,   ,   ,   斎藤雍郎 ,   佐久間充 ,   杉浦静子 ,   山下章 ,   和田攻

ページ範囲:P.1 - P.3

彌縫策としてのシステム化反対
 本稿における「医療」とは,日本医師会のいう包括医療,あるいはAmerican Public Health Associationの定義によるmedical careではなく,日常誰でもが使っているような診断とか治療・処置を意味することとして考える.
 出題者の意図がわからないが,恐らくは,多相ふるい分け集団検診(MpSE)とか,MHSといわれるシステム工学的な考え方により,多くの被検者を処理し,検診データの共同管理による広域医療,無医地区医療を考えているのではなかろうか.もしそうであるとするなら,保安処分問題は一応除外するとしても反対である.

研究

保健婦の地域分布

著者: 保々萬里

ページ範囲:P.52 - P.64

I.はじめに
 保健婦制度は昭和16年に設けられ,当初は医師不足を補うような意義もあったようであるが,昭和22年の保助看法の制定による質の向上や国民健康保険事業の発展,学校や事業所等での需要の増加等が相まって質・量ともに変化をみたが,公衆衛生のうちの対人保健サービスは保健婦なしには考えられない現状となっている.ところが,戦後の急激な医療の進歩・改善や国民皆保険の実現,あるいは新憲法による人権意識の浸透,老人医療費の無料化や人口の急増と急激な高齢社会化等によって,医療需要の急増がおこり,このため医師・歯科医師・看護婦等の医療従事者数不足の問題は国民全体の問題として関心と議論の標的となっている.これに比べると,保健婦数の問題は,日本公衆衛生学会においてさえ今まで取り上げられたことがなく,このことは,公衆衛生関係者といえども真に関心があるのかの疑問さえいだかせる.このような差が何ゆえにおきたかの理由は,医療には個々の国民が日常不便を経験している切実な問題があるのに反して,公衆衛生には切実性が少なく,また,保健所・府県等の行政専門家は日常業務に追われて地域の問題にとらわれ勝ちで,全国的視野からの展望がおろそかになりやすいことにあると考える.そこで以下に,医師等をはるかに越えた,保健婦数の府県による地域差がある実態を明らかにしたので,関係者はもちろんのこと読者を通じて国民の関心を少しでも深めて戴くことを祈念したい.

連載 公衆衛生の道・10

後輩の教育

著者: 山下章

ページ範囲:P.65 - P.69

保健所—大学
 昭和49年11月30日,38年余り勤めあげた東京都を退職し,翌12月1日付で東京医大講師を命ぜられた.東京医科大学は私の母校である.昭和7年というと医専の頃だが,田舎の中学からナンバー校の理工をねらったがその道はせまかった.念のためもう1つということで受けたのが東京医専である.競争率はべらぼうに高いが,4年で医者になれる,といったような気持だけだった.この学校の衛生学公衆衛生学の教授として,公衆衛生院で指導を受けた赤塚先生が就任された.それから何年かあと,私が渋谷保健所にいる頃,伝染病予防や衛生行政の講義を手伝わないか,と言われたのがきっかけで,それから10数年,大体週1回兼任講師として大学にお邪魔するようになった.だから今回の転向も,ほんの隣の家へ移るような心境であった.だから定年まで3年残したことはちっとも気にならなかった.勤務の間隙をぬっての講義だから,満足なことはできない.学生にも迷惑をかけてきた.これからはじっくりと準備をしていい講義をしよう.役人をはなれてほっとした気持と同時に,そんな意欲が湧いてきた.それにしても,役所と大学とでは雰囲気が大変に違う.その頃の感情を公衆衛生情報5巻4号に次のように書いている.
 「役人をやめて2〜3カ月の間は,いつもポケットの中にハンコが入っていた.そのハンコが月に1回給料をもらう時しか必要ない,という実感が出てきたのはつい最近である.

日本列島

札幌市公衆衛生調査専門委員懇談会の発足

著者: 吉田憲明

ページ範囲:P.28 - P.28

 昭和50年12月13日,大都市における公衆衛生施策の方向と目標について,板垣札幌市長が諮問するということで,10名の学識経験者を嘱託し,第1回目の専門委員会が開催された.
 諮問する主なテーマは,
○国,道,市,保健所,衛生研究所,医療機関などの役割分担の明確化
○市民のニードに対応した保健サービスの見直し
○保健所の機構整備
○住民組織のあり方
 などであり,専門委員委嘱者は,次の方々である.

岐阜県小児保健協会講演会の開催

著者: 鈴木大輔

ページ範囲:P.69 - P.69

 昭和50年度の岐阜県小児保健協会秋期講演会が去る12月6日,岐阜県市町村会館で開かれた.
 同協会は,昭和44年3月発足して以来,小児の保健と福祉の増進をはかるため,小児保健全般に関する調査研究,知識の普及等の事業をしており,その一環として春秋の講演会を毎年開催している.会長は加藤寿一教授(岐阜大学医学部)である.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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