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特集 ライフサイクルと地域保健
人口学的にみたライフサイクル
著者: 黒田俊夫12
所属機関: 1(前)人口問題研究所(厚生省) 2(現)日本大学経済学部
ページ範囲:P.674 - P.679
文献購入ページに移動ライフサイクルは生活周期あるいは生活循環とよばれる.生活周期という場合,個人としての出生から死亡までの間の周期と,家族という個人の集合体の発生から消滅までの周期の両者が考えられる.しかし,実際には,人間社会では個人は家族の中の一員としての生活をもっているため,家族の生活周期(life cycle of family)が問題とされることが多い.この点については,社会保障研究所の児童養育費研究グループ(主査・中鉢正美)が次のような定義を示している.「およそ個人の生涯生活は,その出生,養育,就業,結婚,育児,退職,死とのそれぞれの段階において,他の個人と不可避的な人格的関係をとり結び,その行動と意識の基本構造をつくりあげる.これを時間的に分解すれば,結局個々の人間に帰着するが,ある時点においてみれば相互の行動と情報の交換とによって分かちがたく結合された一定の集団として把握されるであろう」(中鉢正美編『家族周期と児童養育費』,1970年,至誠堂;同編『家族周期と家計構造—児童養育費調査報告書(2)—』,1971年,至誠堂,p. 11).個人は,出生から死亡に至って消滅するが,家族という一定の集団においては,通常その内部において次の世代が発生し,新しい周期が始まるから,サイクルとして理解しやすい.もっとも,個体においても人口集団としてみると,そこに再生産による周期をみとめることはできる.
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