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雑誌文献

公衆衛生40巻12号

1976年12月発行

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特集 第17回社会医学研究会報告記録

総合プログラムー覧

著者: 朝倉新太郎

ページ範囲:P.822 - P.823

 第17回社会医学研究会総会は,去る7月24日・25日の両日にわたり,別記プログラムの通り,阪大医学部を会場として行われた.
 本年は,全体を通ずる要望課題として地域保健(医療)が取り上げられ,さらに3つの具体的な検討課題が設定された.

地域保健・医療に関する実践報告—難病事例を中心として(演題 1〜6,28,8,9)

著者: 西三郎 ,   木下安子 ,   佐久間淳 ,   黒子武道 ,   星野英一 ,   水野幸治 ,   宇尾野公義 ,   川村佐和子 ,   山手茂 ,   中島初恵 ,   阪上裕子 ,   鵜沢立枝 ,   寺田雅子 ,   高山俊雄 ,   大塚隆三 ,   田村恵一 ,   根本博司 ,   小谷節子 ,   古田多賀子 ,   磯部博明 ,   関野栄子 ,   木下安子 ,   杉浦徳子 ,   井伊なか子 ,   金丸典子 ,   西川有里 ,   西三郎 ,   石川左門

ページ範囲:P.824 - P.833

 地域保健・医療に関する演題は,1.「家族周期と健康の関連性について」の報告以外すべて難病対策についての報告で,東京都委託研究「特殊疾病対策機構に関する研究」に関連する報告が5題を占めていた.報告発表の順に従ってその概要を紹介しよう.

保健所を甦らせるために(演題10〜15)—保健所の理念と当面の課題

著者: 大原啓志 ,   小林ヒサヱ ,   小栗史朗 ,   西正美 ,   藤島弘道 ,   小林孝三 ,   丸山創

ページ範囲:P.834 - P.841

はじめに
 今回の社会医学研究会では,保健所から保健所に関する演題が11題提出され,演題総数の約3分の1を占めた.
 このセクションの演題募集に際して出された要望の主旨は次の通りである.

保健所を甦らせるために(演題16〜21)—保健所の対人保健活動

著者: 丸山創 ,   南好子 ,   岡本都子 ,   三宅智恵子 ,   乾死乃生 ,   篠原多津江 ,   津田ユキ ,   本田美智子 ,   馬場新子 ,   草野分嗣 ,   宮川文子 ,   西川美代子 ,   仲束文枝 ,   由崎恭子 ,   足立京子 ,   草野文嗣

ページ範囲:P.842 - P.854

 地域での医療の現状をみると,治癒は「病気を持った人」からとり出されたひとつひとつの症状に対する,投薬という形で行われている.一方,通産省や日医が主になって,コンピュータによる診断を極とした「医療のシステム化」なるものが進められようとしている.
 これでは,ますます医療は人間の生活と分離し,機械的なものになるであろう.

大都市の保健・医療の問題(演題22〜27)

著者: 東田敏夫 ,   水野洋 ,   南沢孝夫 ,   金旧治也 ,   速水敏子 ,   谷田伍郎 ,   奈倉道隆 ,   牧野忠康

ページ範囲:P.855 - P.863

はじめに
 主題の一つとして「大都市の保健・医療問題」が取り上げられた経過から,まず述べることにする.社会医学研究会では,これまで,地域開発と関連させて,いわゆる新産業都市の保健・医療問題や農山村における保健・医療問題が,研究会主題として取り上げられてきたが,都市,とりわけ大都市の保健・医療問題への集中的な取組みは最近なされていない.そのため,今回の社医研準備段階で大都市問題を取り上げることにして,その検討を行ってきたが,全国世話人会の段階では,その実施に危惧の念も出された.
 それは,現状では大都市にスポットを当て,研究・検討を加えている会員が余り見当たらないこと,「大都市」というのを社会科学的にどう把握するかという点で十分な見解の調整なり,意見交換がなされていないこと,などのためであった.しかしながら,大都市にスポットを当て,現代の保健・医療について検討することの重要性については異論はなかったので,無理を承知で主題の一つに取り上げることになったのである.

地方自治体の保健・医療の行財政(演題29〜32)

著者: 庄司光 ,   山下節義 ,   伊藤晃 ,   西三郎 ,   京田祥史 ,   山本裕子 ,   多田羅浩三

ページ範囲:P.864 - P.872

はじめに
 「住民本位の内容豊かな地域保健活動を展開するためには,市町村レベルで,すぐれた民主的保健・医療体制を確立することが,決定的に重要である.しかし現実の姿は,住民の保健や福祉をないがしろにする中央集権的な行財政の仕組の中にあって,しかもとりわけ官治的で社会防犯的な衛生行政の枠組の中で,停帯し,混迷している状況にあるといえよう.このしがらみを取り除き,市町村を真に住民のいのちとくらしを守る拠点につくりかえるためには,どのような問題があるか」(第17回社会医学研究会世話人のよびかけより)を考え,あすへの取組みの方向を明らかにする手掛かりを見出すために,地方自治体の保健・医療の行財政の問題がテーマとしてとりあげられた.
 ここに紹介するのは,研究会当日報告された,演題29から39にわたる4つの報告の内容と討議内容の概要である.

職業病,薬害,公害などに関する問題について(演題33〜38)

著者: 山田信也 ,   牧野忠康 ,   阿比留幸子 ,   原口良子 ,   真角欣一 ,   梅田玄勝 ,   南雲清 ,   尾沢彰宣 ,   片平洌彦

ページ範囲:P.873 - P.880

はじめに
 今回の研究会は,保健所,地域保健事業をめぐる問題が中心テーマとしてとりあげられたために,職業病,公害,薬害などに関するテーマが,一括分類される数の範囲にとどまった.すなわち,職業病関係1題,公害関係3題,薬害関係1題である.これに,早産児の網膜症の医療をめぐる問題が1題つけ加えられて,筆者が座長として担当することとなった.これらの演題についてここにまとめて論ずることは,それぞれの演題の内容からみてむつかしい感じがする.
 しかし,あえていうならば,いずれもが,労働者,地域住民,患者など,被害をうけた人たちの自主的な取り組みを背景とした問題提起を含んでいることである.演題33の牧野の提起は,制度の批判であり,労働者の現実の取り組みの実際にはあまりふれていないのが,他の演題とやや角度の異なる分析であるが,大きくみれば,こう解釈してもよいだろう.以下,それぞれについて内容を紹介しよう.

発言あり

食糧危機

著者: ,   ,   ,   ,  

ページ範囲:P.819 - P.821

危機打開努力は公衆衛生の任務
 わが国の穀物の自給率は約40%に過ぎないという.60%は輸入に依存しているので,それが途絶するようなことが起きれば,自給力の低いわが国では,大変な混乱が生じてくることになる.食糧がなければ人間は生きていけない.と同時に,それは健康の維持増進の要をなすものであり,国家発展への基礎でもある.
 敗戦前後の食糧難は,経験した人人が語ることも少なくなり,体験したことのない世代が国民の半数を越えようとしているのである.

研究

通勤圏を形成する法則

著者: 大久保正一 ,   村上圭司 ,   玉野明 ,   久保喜子

ページ範囲:P.881 - P.889

 国勢調査では従業地,通学地集計を行い,通勤・通学人口の日々の移動,すなわち人がその住居からその働く場所へ,あるいは学ぶ場所へ往復移動する実態を明らかにしている.
 常住地から従業地に通う就業者を通勤者とよび,常住地と従業地とを結び形成される地域のひろがりを通勤圏とする.

カドミウム汚染地住民の尿検査所見における各種異常出現率の相互関係

著者: 能川浩二 ,   小林悦子 ,   稲岡宏美 ,   石崎有信

ページ範囲:P.890 - P.893

はじめに
 カドミウム(Cd)汚染地に居住する人々には,蛋白尿,糖尿,アミノ酸尿のような,尿の異常所見が高率に認められることはよく知られている,このような尿の異常所見の意義を明らかにすることは,環境中のカドミウムによる人体影響の解明のために必要と考えられる.
 筆者らはすでに,尿中にRetinol Binding Protein(RBP)の検出される人では血清所見にも変化が認められ,これはイタイイタイ病(イ病)患者に見られる所見と同傾向のものであることを報告している1).また筆者らは数年来,カドミウム汚染地に居住する人々について,尿検査を実施しているが,今回これらの成績にもとづき,各尿異常所見の出現率の相互の関係について検討してみた.

日本列島

沖縄県における夜間診療体制

著者: 伊波茂雄

ページ範囲:P.854 - P.854

 沖縄県の医師および医療施設数をみると,昭和46年末から昭和49年末までの3年間に,医師は483名から577名になり94名の増,医療施設は487から541となり54の増となっている.一般病院と一般診療所については,328から361となり33の増となっている.しかし,人口10万対の比率でみると,医師は全国平均116.2に比し56.2で1/2以下,一般病院は6.5に対し本県では1.5で1/4,一般診療所は66.2に比し31.9で1/2以下となっていて,依然として量的格差は大きい.
 このような状況下で,一般患者の受療者が多くなるにつれて最も影響を受けるのは,夜間・休日における救急医療である,特に一般病院の少ない本県では,一般診療所がその主力であるが,医師1人,看護要員数名平均という陣容では昼間の診療のみで手一杯で,夜間・休日に勤務する余力はない.

し尿浄化槽公害の一掃をめざして—宮城県

著者: 土屋真

ページ範囲:P.872 - P.872

 生活水準の向上とともに,下水道の普及していない地方では,衛生的で快適なし尿浄化槽方式の水洗トイレの設置が,各家庭で増えています.汲み取り便所からの改造時には浄化槽設置届が保健所に来ますが,家屋の新築時には建築確認申請が,多くの県で土木事務所等に出されるだけです.
 したがって,当県においても,衛生面を扱う保健所や市町村で全体の把握が困難であり,完了検査の不徹底や無届設置者のあることなどから,放流先のないまま設置されていたり,維持管理の不十分さによる付近住民の苦情が絶えませんでした.しかし,私どもの県でも,すでに仙台市をはじめ各地で効果ある対策がたてられていますので,その現状を報告します.

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基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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