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特集 保健と福祉におけるニードとデマンド
経済学からみた医療ニード
著者: 地主重美1
所属機関: 1社会保障研究所
ページ範囲:P.315 - P.319
文献購入ページに移動経済学は,もともと有限の資源を人間の欲求充足のために合理的に配分することを課題としている.このような欲求充足は,ある場合には市場を経由して行われ,またある場合には公共部門を経由し,政府活動の一部として行われている.この場合の欲求(want)は,市場経済において需要(demand)として顕示され,この限りで分析の対象になるが,それ以上のものではない.したがって,市場経済の運動法則を研究の主題にしているかぎり,需要はあってもニードが問題になることはまずなかった,といってよい.
しかし,これには2つの例外がある.第1は,公共部門を経由して欲求充足活動が行われる場合であり,資源配分の基準としてニードが用いられている.医療,義務教育,各種の行政活動等がそのよい例である1).第2は,マルクスが『ゴータ綱領批判』2)で,共産主義社会ではニードに応じて分配が行われると述べているが,この分配の基準としてのニードがそれである.ただ,共産主義社会は未来の王国ではあっても歴史的現実ではなく,ここでは深く立ち入らない.したがって,ここでは主として第1のニードを取り上げ,これが医療の領域においていかなる意味内容をもち,いかなる機能を果たしているかを明らかにしよう.
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