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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生41巻1号

1977年01月発行

文献概要

発言あり

福祉見直し論

著者: 辻達彦1 根木博司2 花田ミキ3 松崎奈々子4 簑輪真澄5

所属機関: 1群馬大・公衆衛生 2東京都老人総合研究所・社会学 3青森県立高等看護学院 4東京都教育庁・体育部 5石川県輪島保健所

ページ範囲:P.7 - P.9

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福祉の原点をさぐる
 「福祉」とは辞書によると幸福,仕合わせよきことである.幸福と別な意味ではないが,行政用語として定着している.もともと,幸(さち)とは漁または狩りで獲物のあることであり,結局,めぐりあい,運・不運ということに通じている(happyもまた原義はsuitable,fortunateであるから似ている).わが国の福祉行政は発育途上の未熟なものや,社会的弱者,健康不在者に対する特殊な配慮を背景にしている.これが果たして,常に人々の幸福につながるかどうかの反省は,ここでいう福祉見直し論の論拠ともなる.昔から福禄寿がひとの願いであるが,幸福を量産することは至難である.
 ある老人クラブを調査したとき,毎日が楽しいと答えるひとは多いが,毎日が楽しくないとするものが約5%にみられた.その理由の多くは,健康面よりも精神的なもので,妻子がない,友人がいないなど,孤独によるものが推定される.えてして,公衆衛生関係者はあまりに保健ということを強調しすぎるきらいがあり,すでに健康を失っているものに,抵抗・反感をいだかせやすい.これは,衛生教育のあり方で反省させられている点である.優先すべきは毎日の楽しさで,健康はそのすべてではない,ということに尽きるようである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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