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特集 地域保健医療計画の実際
地域保健医療計画の課題
著者: 橋本正己1
所属機関: 1国立公衆衛生院・衛生行政学部
ページ範囲:P.10 - P.12
文献購入ページに移動国際的にみて最近10数年の間に,health planningについて,計画技法の進歩とともに,世界の諸国は真剣な試行錯誤の中から,多くの貴重な経験を集積してきた.保健医療の領域にplanningが導入されるようになったのは,1960年代以来のことである.その契機は,感染症の制圧と人口老齢化を主要な動因とする傷病像と保健問題の質的変化,医療技術と情報科学の進歩,国民の健康観の深化の中で,保健医療に対するニードとデマンドの際限のない増大傾向に対し,その供給が人的,物的に限界を持つため,これらをニードとデマンドに照らして最大限に活用しなければならぬという,のっぴきならない要請であった.
ところがここ数年来,周知のように,オイルショックを引金とした世界的な不況とインフレの進行の中で,保健医療におけるニード,デマンドとサプライの間の,前述のような相対的な関係は,さらに急速に悪化し,真に危機的な状況を迎えている.また,このようなきびしい状況は,社会体制の相違を越えて,世界の先進的諸国に共通するものであるが,pluralism(多様主義)の伝統が強く,医療供給体制の計画化が遅れているアメリカ合衆国ではとりわけ深刻であり,一方,人口老齢化のテンポがきわめて大きく,公害問題を契機として住民の健康観の深まりのいちじるしいわが国の場合には,まことに切実なものがある.
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