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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生41巻12号

1977年12月発行

雑誌目次

特集 第18回社会医学研究会総会記録

総会プログラム

著者: 木下安子

ページ範囲:P.818 - P.819

 第18回社会医学研究会総会は,1977年7月16,17日の両日,東京都の文京区民センターで開催された.
 本年は要望課題として,国・自治体レベルの保健行財政問題,保健・医療・福祉活動の連携が取り上げられた.これらをさらに,保健行財政と保健・医療従事者,保健政策・保健サービス,寝たきり老人・難病,などのサブ・テーマに分け,報告と討議がなされた.一般演題として食品・医療事故,公害被害・原爆被爆等が提出された.

要望課題 保健行財政

I.保健行財政と保健・医療従事者(演題1〜10)

著者: 朝倉新太郎 ,   上林茂暢 ,   東田敏夫 ,   山下節義 ,   西三郎 ,   加藤欣子 ,   二木立 ,   斉藤益子 ,   前田信雄 ,   加藤欣子 ,   丸山創 ,   丸山博 ,   金田治也

ページ範囲:P.820 - P.824

 このセクションでは以下のとおり,自治体における保健・衛生の行財政,医療費,地域保健計画,保健所のヘルス・ワーカーなどの問題について,報告と討議が行われた.

II.保健政策・保健サービス(演題11〜18)

著者: 南雲清 ,   山下節義 ,   宮入昭午 ,   多田羅浩三 ,   山本繁 ,   土井真 ,   三宅仁美 ,   南奈美子 ,   津田ユキ ,   工藤充子 ,   鈴木幸子 ,   広瀬美砂 ,   井瓜多津江 ,   谷田悟郎 ,   松山容子 ,   村瀬好美 ,   増田貞二 ,   海老原勇

ページ範囲:P.825 - P.830

 (1)宮入は,第16回社医研総会(熊本)報告にひき続き,地方自治体と労働衛生行政とのかかわりに関し,その経験にもとづいて報告をおこなった.
 (2)現行の労働衛生行政は,地方自治体行政からは完全に切り離されているために,例えば,労災被災者への身体障害者福祉法の適用が見落とされていたり,時に生保レベル以下の年金給付で済まされたり,あるいは,自治体の関心の薄さのために,当然受けられるべき労災保険による年金や医療給付という権利を,生保の枠の故に奪われている,といった事態がひきおこされていることが,「じん肺患者の社会活動」を通じて経験された.

保健・医療・福祉活動の連携

I.寝たきり老人・難病(演題19〜28)

著者: 山本理平 ,   奈倉道隆 ,   青木信雄 ,   谷田悟郎 ,   川村佐和子 ,   内藤美登里 ,   青井由里 ,   西川有里 ,   伊藤淑子 ,   中田賢市 ,   高坂雅子 ,   川村佐和子 ,   水上瑠美子 ,   松沢恵美子

ページ範囲:P.831 - P.839

 「寝たきり老人・難病」に関する演題発表は,ここ数年の社医研において着々と増えつづけ,本年も,演題数においては断然他を引き離すほどの盛況となった.高度な資本主義経済下の国民生活の歪みと,一方において,それに根を同じくする医療構造の不健全さとは,病弱な老人・障害者および確実な治療法の見出されてない難病患者とその家族の苦痛を,ますます増幅している.これから,それに対する対応の諸報告のうち,前半の10題の要点を紹介するわけであるが,その任を委嘱された筆者は残念ながら全体的視野が狭く,かつ文献検索も不十分なので,職掌柄,もっぱら町医者的直観に頼って筆を進めることを,初めにおことわりしておきたい.
 座長を担当した10題のうち,初めの3題が老人に関するもの,後の7題が難病に関するものであるが,前者は京都グループ,後者は東京グループによるものである.京都・東京と筆者が名称をかぶせたのは,単に演者の所属地名を意味するばかりでなく,それぞれ研究・活動グループを作っていることを意味する.まず老人に関する京都グループの報告を紹介しよう.

II.難病(演題29〜34)

著者: 園田恭一 ,   佐久間淳 ,   手島陸久 ,   山本多賀子 ,   磯部博明 ,   寺田雅子 ,   内藤とし子 ,   阪上裕子 ,   松本由美子

ページ範囲:P.840 - P.845

はじめに
 ここでの報告は,29のスモンに関するものと33の肢体不自由児施設と保健所の協力例を除き,難病に関する共通的研究方向のものである.まず,スモンが主として医療のサービス過程のあり方から派生しており,また難病がその原因や治療法を不明としている点で,とくに医療人としては責任を感じる.
 ところが,演題からみてもわかるように,前者に関してはリハビリテーション,後者に関しては患者・家族に対する医療・福祉援助という,かつての医療があまり重視しなかった面にスポットがあてられていることが,まず目につく.しかしながら,こうした側面と合わせて臨床医からのアプローチなどが,並行してなされていたならば……と,いささか欲の深い願望を抱くのである.

一般演題

食品・医療事故(演題35〜38)

著者: 上畑鉄之丞 ,   柳沢文徳 ,   草野文嗣 ,   荘原誠一 ,   西川美代子 ,   尾沢彰宣 ,   手島陸久

ページ範囲:P.846 - P.848

 「食品・医療事故」のテーマでは,4つの演題が寄せられた.近年の食品添加物や医療事故への関心の高まりとくらべて,演題数は少なかったが,それぞれの内容はこの種の問題での基本的な観点のあり方を問いかけている点で共通していた.すなわち,演題35では,食品に対する正しい知識を要求する住民のニードに保健所がどうこたえるのか,演題36では,学童に対する学校給食を通じての食教育のあり方,演題37では,小児の医原病に対する学会の対応のあり方,演題38では,公害被害等への救済に対する加害者の対応について,それぞれ今後の討論の足がかりをつくったといえる.

公害被害・原爆被爆(演題39〜42)

著者: 吉田克己 ,   黒子武道 ,   梅田玄勝 ,   八木邦子 ,   阿比留幸子 ,   山手茂 ,   原玲子

ページ範囲:P.849 - P.851

(1)公害健康被害認定等について
 この演題は,引き続く次の演題と一対のものとして,北九州市における大気汚染による健康被害,特にその公害認定に関する事項についての調査結果と,それに基づく演者の見解である.
 演者は,現行の公害認定制度の問題点,特に認定制度が,汚染濃度と疫学調査によって地域指定が行われ,運用されて,そのために例えば道路一本,あるいは町内会の境域で境ができ,大きな差異を生じて住民の不満がみられることを述べ,この線引き問題について市当局と交渉を行う一方,住民の健康被害について「疫学調査を成功させる会」などの活動を行ってきたこと等を報告した.

シンポジウム

社会医学の実践と研究

著者: 川上武 ,   山手茂 ,   渡辺寿美子 ,   皆川修一 ,   海老原勇 ,   増子忠道 ,   山本繁 ,   西三郎 ,   片平洌彦

ページ範囲:P.852 - P.858

はじめに
 第18回社会医学研究会総会が4年ぶりに東京で開かれるにあたって,その報告申込み・プログラム作成の段階において,在京世話人を中心とする打ち合わせ会が数回開かれ,本シンポジウムの計画が決定された.この決定の過程について,若干説明しておきたい.
 第18回社医研総会の要望課題は,第17回総会のあとを受けて,1)国・自治体レベルの保健行財政問題,2)保健・医療・福祉活動の連携,の2課題がとりあげられ,会員に対して演題募集が行われた.この要望課題の決定の過程および会員からの演題申込みを受けてプログラムを作成する過程において,現段階の本研究会の課題として,「社会医学とはなにか,その実践と研究をいかに進めるべきか」についてシンポジウムを企画する必要性が確認され,具体的計画が立てられた.報告者および参加者の御協力によって,充実したシンポジウムが行われたので,その要旨を報告する.

自由集会

「性」の今日的課題をめぐって

著者: 芦沢正見

ページ範囲:P.859 - P.861

はじめに
 今年の社医研総会準備委員会の席で,ある委員から,「歴史的にみても『性』の問題は,社会医学のなかで大変重要な位置を占めるものである.それにもかかわらず,例年の演題発表にもこれがいまだかつてあらわれてきていない.ほかに医療保障とか,公害問題とか,種々急を要する問題が山積していたせいか,お預けになっていた.遅すぎたきらいはあるが,"自由集会"という形式でもよいから,とにかく有志会員の集まりを持とうではないか」という趣旨の提案がなされ,それが結実したのがこの自由集会である.
 話題提供者として,会員外の方々も含めてつぎの演者を得たことは,大変幸せであった.

保健婦自由交流集会

山香診療所存続の住民運動と辺地における保健婦の役割

著者: 木下安子

ページ範囲:P.861 - P.862

 山香診療所の存続をめぐる住民運動の経過については,演題16〜18で報告された.この住民運動の過程での保健婦活動をめぐって,討論がおこなわれた.
 報告者は2名の,若い佐久間町役場の保健婦で,質問が集中した.

調査報告

入院を希望する老人患者と訪問看護の必要性—(その1)入院希望患者調査

著者: 賀集竹子 ,   鎌田ケイ子 ,   奥山則子 ,   小林万里

ページ範囲:P.863 - P.868

はじめに
 老人の疾病構造の特徴に加えて,老人人口の増加や老人医療費無料化の影響を受け,老人医療需要は,増加の一途をたどっている.年々増加する入院需要に供給が対応できないため,入院待機を余儀なくされている者も多い.また,老人患者の場合,入院は長期に及び,病床の占有率を高める結果,病院の機能に重大な影響を与えている事実も指摘されている1)2)
 老人医療の需要の増加に伴って生じた諸問題を解決するために,いろいろな対策が模索されている.老人医療費無料化制度も議論されており,老人専門病院や老人病棟の整備も検討され,医療供給体制のあり方が問われるに至っている.

茨城県牛久・竜ヶ崎地域における地盤凝固剤による健康障害—(前編)被害発生の経過と健康調査結果

著者: 南雲清

ページ範囲:P.869 - P.873

I.緒言
 地盤凝固剤は下水道工事に広く使用され,公衆災害が多発しているため,建設省ではすでに1970年4月13日(建設省都下発第10号)に防止徹底の通達を出している.しかるに1974年4月,福岡県新宮町の下水道工事において,アクリル・アミド中毒事件が発生し1)2)3),建設省は再度「下水道工事における公衆災害の防止について」(1974年4月22日)の通達5)を発した.これらのいきさつがあったにもかかわらず,1974年の初め頃から茨城県下において同様の下水道工事による被害が発生したので,その概要と健康調査結果について報告する.

連載 図説 公衆衛生・12

結核の現状と課題

著者: 安西定 ,   高原亮治 ,   川口毅

ページ範囲:P.811 - P.814

 わが国の結核の死亡率は,昭和25年まで死因順位の第1位を占めていたが,ストレプトマイシン,パス,ヒドラジッド等抗結核剤の開発,保健所を中心に展開された結核対策の推進,ならびに国民の生活水準の向上などによって急速に低下し,昭和51年には,結核死亡数は全国で9,571人,死亡率は人口10万対8.5で,死亡順位は全疾患中第10位となっている.このままでいけば,わが国の結核問題は解決されたかのようにみえるが,抗生剤耐性菌,薬剤の副作用,結核患者の老齢化など新たな問題が出現し,結核の死亡率,罹患率ともに減少の程度は,やや鈍化の傾向を示している.一般に結核死亡率は,当該国の公衆衛生水準をあらわす指標として示されるが,オランダ,アメリカなど先進諸国の結核死亡率と比較すると,わが国の死亡率はいまだ高率であり,やっと中進国なみになった程度である.
 また結核医療費は,昭和49年の推計では,2,122億円で,国民総医療費の3.9%に当たり,わが国においてはまだまだ結核対策は未解決の問題といえる.

発言あり

行政改革

著者: ,   ,   ,   ,  

ページ範囲:P.815 - P.817

住民の立場にたつ改革
 行政改革は,目下のところ,政府主導型のようである.住民本位の行政改革はどうも影がうすい.全国の各地での,保健衛生への要求は多様であり,政府はなにがしかの対応をせざるをえず,予算・要員増をともなう措置がいくつかとられてきた.だが,保健所の機能に関する限り,改革は縮小,切り捨ての観がある.神戸の公衆衛生学会での保健所問題の特設討論も,住民の立場にたつ要求の踏みだしという点からみて,もどかしい感じがする,思い切ったことを,一つ書いてみよう.
 (1)保健所は,その管轄する地域の乳幼児から老人にいたるまで,あらゆる年齢階層の保健と医療に責任をもつ第一線の行政機関である.各省庁にまたがる保健衛生行政は,保健所において集中して把握される.

日本列島

小児保健研究会の設立—京都

著者: 山本繁

ページ範囲:P.824 - P.824

 最近,京都においても,全国的な動向と同様,小児保健に関心をもつ医師,保健婦,栄養士等が増えるなかで,小児保健の研究および知識の普及を図る一つの場として,研究会設立への強い要望が出ていました.そこでこのたび,そうした要望を受けて「京都府小児保健研究会」が発足することになりました.
 この研究会の設立総会が,去る10月1日,京都府医師会館において約100人の関係者を集めて開催され,特別講演として,京都府立医科大学・楠智一教授による「先天性代謝異常症のマススクリーニング」および京都府歯科医師会・神谷幸男理事による「小児の歯科衛生」がもたれて,門出を祝した.

レプトスピラ症急減—沖縄

著者: 伊波茂雄

ページ範囲:P.839 - P.839

 沖縄本島の北西部沖合いにある伊是名島の伊是名村では,昭和43年にレプトスピラ症で1人の死亡者を出しているが,最近の同患者の発生状況をみると,昭和48年には20人,49年に14人,50年に42人,51年には36人となっている.
 同疾患は,主にネズミが保菌動物となり,その尿で汚染された水田に入った人達から発病している.すなわち,昭和50年は42人のうち31人,51年は36人のうち34人が,同村での一期作の稲刈りの時期に当たる7月と,2期作の田植えが始まる8月に発病している.

精神衛生法の守秘義務—京都

著者: 山本繁

ページ範囲:P.845 - P.845

 精神衛生鑑定医,精神病院の管理者,精神衛生診査協議会委員,保健所における精神衛生相談医等は,精神衛生法第50条の2項において,守秘義務が課されている.また,都道府県や保健所の精神衛生担当職員および精神衛生センター等の職員については,地方公務員法第34条の規制により,守秘義務がある.
 しかし,現実の問題として,精神障害の疑いをもたれる場合はもちろん,一般的な殺人,傷害事件が発生すると,警察署をはじめとする司法関係の公署から,個別具体的な事例について,また,関係地域の精神障害者のリストアップについて,口答あるいは文書による照会がきて,困惑することを度々経験している.とくに,刑事訴訟法第197条の2項にもとづく「捜査上の照会」の場合には,その取り扱いに苦慮することが多い.

小・中学生の問題行動調査—沖縄

著者: 伊波茂雄

ページ範囲:P.873 - P.873

 沖縄県教育庁では,県下の全小・中学校において発見・指導した問題行動について調査したものを集計し,その結果をまとめた.
 それによると,昭和51年度の問題行動は中学生の場合,警察が発表している補導数よりはるかに多く,最も多いのは「喫煙」で全体(5,047人)の27.8パーセント,次に「家出」が9.5パーセント,盗み9.4パーセント,無免許運転9.4パーセントの順となっている.続いて暴力,恐かつ,飲酒など見過ごすことのできない問題もかなりの数にのぼり,中学生の集団非行,学園内暴力が目立っている.

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用語欄

著者: 西川滇八

ページ範囲:P.862 - P.862

▶テクノロジー・アセスメント(technology assessment)
 開発された新しい技術の効果については,それを実際に使用してみなければ明確にすることができない場合が多い.しかし,新しく開発された技術の悪影響によって,環境破綻などがおこる危険性をはらんでいる場合には,考えられるすべての観点からその悪影響を予め検討して,環境汚染などを防止し,社会問題を事前に予防することをテクノロジー・アセスメントという.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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