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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生41巻3号

1977年03月発行

雑誌目次

特集 保健医療計画と情報システム

地域保健と情報システム

著者: 大島正光

ページ範囲:P.156 - P.162

まえがき
 地域特性を十分生かした医療計画でなければいけない,といわれている.交通についてもそのことはいえるであろうし,また,行政についても同じことがいえるであろう.この点では,地域化(regionalization)の原則というものを確立してゆかなければならないであろう,地域化とは,地域特性を組み込んだ地域区分をつくることである,といってよいであろう.
 ここでは,地域保健の確立のあり方と,それに関係する情報システムについて,述べてみることとしたい.

横浜市西区における医療情報システムの現状と課題

著者: 鈴木潔 ,   野山修

ページ範囲:P.163 - P.170

はじめに
 ある地域内に居住する住民の健康管理を意図した試みは,すでに全国的に数多くの実績をもっている.しかし,この種の試みの最近の特色は,それが地方自治体のデータ・バンクや病院などによるものではなく,公私を問わない,どちらかというと医師会中心のものであることにある.このような動きの動機として,疾病構造の変化,つまり慢性疾患成人病の増加に対処する適切な治療上の必要性を挙げることができるが,同時に,医療が病院・診療所内だけの治療に限定するのでなく,ひろく社会の中まで手を広げることに対するニードが,医療の供給と需要の両側から生じてきていることもあろう.この新しい動向を要約すると,保健ならびに医療に対する地域医療の理念が確立し,かつ成熟してきたことである.
 しかし,こうした地域医療情報システムは未だ完成したものではなく,そこへ到達するプロセスについても既成の事例はない.

中都市における保健医療計画と情報システム

著者: 上野豊

ページ範囲:P.171 - P.178

I.日立市の概況と医療の現状
 日立市は東京より北へ約150km,太平洋に面した人口約20万の,日立製作所を中核とした工業都市である.
 その人口構成は表1の通りである.
 人口は海岸沿いの平地部に集中し,市街地部の人口密度は2,127〜1,750/km2であるが,山間部では77/km2で無医地区も存在している.

農村地域における保健医療計画と情報システムの基盤

著者: 金子勇

ページ範囲:P.180 - P.188

はじめに
 農村の医療システムについて,若月1)は1964年に基本構想を提言している.そして,さまざまな保健医療実践が,農村各地で展開されてきた.とりわけ,保健医療矛盾の激化する今日,いわゆる地域保健医療のあり方をめぐる論議が活発となり地域医療のシステム化を目指す流れの高まりのもと,具体的な取組みも進められている.しかし,その多くはいまだ特定の課題に限局的に対応するに止まっており,住民の保健医療要求からは程遠い,の感を免れない2)3)
 私たちの千葉大農医研も,20数年にわたり,長野・静岡・愛知の各県が接する中部山岳地帯で保健医療活動を続けてきた4).しかし,私たちの主体的力量の弱さもさることながら,激しい過疎化の嵐が吹すさび,その保健医療状況は厳しさの度を強め,そのため新しい発想のもとに,抜本的な施策が必要な事態となっている.

都市地域におけるモニター方式による保健医療計画—和歌山市における大気汚染の健康に及ぼす影響調査を中心として

著者: 池田隆 ,   虎谷良雄

ページ範囲:P.189 - P.197

はじめに
 和歌山市は万葉の世より,和歌の浦に潮満ちくれば片男波
 芦辺をさして田鶴鳴き渡る
と山部赤人に詠まれたように,海岸美に恵まれ,白砂青松の波打ち際で海遊びが楽しめたものである.ところが高度経済成長の波が打ち寄せ,粗鋼生産年間850万トンを誇る世界屈指の大製鉄所や,関西火力発電所,化学工場等が海岸線に進出し,赤白まんだらの高煙突が里見されるようになった.
 また,和歌山の市街地を南北に貫流し,和歌浦湾に注ぐ和歌川流域には,地場産業である染色,織物工場,皮革工場,中小化学工場群等が発達し,種々の公害問題が社会的な関心を集めるようになった1)

地域保健医療計画と情報システム

著者: 安西定

ページ範囲:P.198 - P.204

まえがき
 福祉国家の建設と健康な国民生活の実現を目指すなかで,増大する医療需要とヘルスサービス,医療費の高騰,医療技術の進歩と医療担当者の不足,救急医療,老人医療,難病などの特殊疾病医療に対するニードの増大と保健医療機能の地域格差,さらには人口の老齢化と生活環境の悪化等等,国民の健康と福祉をめぐる問題は山積している.このような現状のなかで,これらの諸問題を計画的に解決する道として,ここ数年来,すべての国民を対象として,適切なヘルスサービスと有効・適正な医療を確保するための具体的な保健医療計画を策定する必要性が強調されている.国レベル,都道府県レベル,広域市町村レベル,保健所レベルごとに地域特性をふまえた保健医療計画を策定し,保健医療関係施設の整備,必要な保健医療関係者の養成・確保等を計画的,系統的に推進しようとする考え方が,強く打ち出されてきているわけである.
 保健医療計画については,国において,全国的,長期的視野から,国全体の計画を策定することは当然であるが,各地域レベルにおいて,自然的,社会的条件と住民ニードに即した地域保健計画を立てることが要請される.

地域保健における情報システムの問題点—自動化多項目検診(AMHTS)の利用を通して

著者: 子安崇雄

ページ範囲:P.205 - P.212

はじめに
 筆者は,システム,システム工学,システム論,システム化などという学問的あるいは実践的領域については,必ずしも得意とするところではない.むしろ不得手といった方がいい.しかし,岐阜県立健康管理院を職場として,いわゆるAMHTS(自動化多項目検診)システムなるものの運用,利用に頭を悩ますようになって4年,集団健康管理活動のトータルシステムとは何か,その中にしめるAMHTSシステムの位置づけ,機能は何か,などについて,実践を通じて思索する機会を許された訳である.最近,筆者なりに,そのあたりをかなり明確にでき得た,と考えている.そこで.上記の課題について執筆依頼を受けたのを好機に,「地域保健活動システム論」を展開し,関係諸氏の御批判を待ちたいと考える.
 システム化とは,「ある目的,あるいは与えられた目的を達成するために,より効果的,能率的に,より明確に,人や物の組み合わせを創り上げること」であると考える.別の言い方をすれば,システムとは,「目的実現の最も適当な方法であり,できるだけわかりやすい仕組み」のことである,と.

連載 図説 公衆衛生・3

保健医療サービスの供給機能

著者: 安西定 ,   高原亮治 ,   川口毅

ページ範囲:P.149 - P.152

 公衆衛生の向上と医療,リハビリテーションの供給機能を確保するために,保健所や病院・診療所など施設の整備,医師,看護婦など保健医療関係者の養成訓練のほか,関係法令,組織体制の整備,必要な財源の確保など,総合的な施策を展開し,今日まで長年にわたって国民的努力が続けられ,相当な成果をあげてきた.しかし,最近,医療技術と情報科学の進歩,国民の健康観の深化,人口の老齢化,感染症の激減と循環器疾患の増加を主因とする傷病像とヘルスケアーの質的な変化,救急医療,へき地医療,難病など特殊医療の確保の必要性など,これらの問題に伴つて,保健医療に対するニードとデマンドは際限のない増大傾向を示しつつある.これに対し,保健医療サービスを提供する供給機能には,人的,物的にも限界があり,その間には相当なへだたりがあって,危機的な様相を呈しているといえよう.
 真に必要な保健医療サービスの供給機能を確保するために,新たな施策が要請されているが,これが,そのなかで供給機能体制の整備計画の重要性が強調されているゆえんである.

発言あり

情報公害

著者: ,   ,   ,   ,  

ページ範囲:P.153 - P.155

不 安
 情報はどんなものでも貴重であると思っているのだが,それが"情報公害"ということになると,考え直さねばならない.
 現在の情報の伝わり方は,マス・メディアを通じて,迅速に,広域的になってきている.情報を受け取る側からいうと,溢れるほど多種多様な情報に,ともすると埋もれてしまうという感じをもつ.

地域保健活動の実際例

海外渡航者の健康管理

著者: 橋本博

ページ範囲:P.213 - P.219

はじめに
 地域保健活動を展開するには地域の実情にみあった進め方をしなければ,その活動が定着したものにならないことは,すでに多く語られている.保健所活動も常に,この方向に努力しているところである.要するに,保健所自身がどういう具体的活動を行うか,そしてその活動を通じて地域住民の健康管理への意識を,どれだけかき立て得るかによって,その活動の方向なり,その展開の評価が下されるべきものと思われる.
 最近における疾病構造の変化,公害問題を初めとする環境悪化の諸問題,老齢人口増加などによる医療問題,食糧事情,特に自給能力を失ったわが国の直面する輸入食品問題など,従来保健所が中心に進めて来た公衆衛生の取組みの範囲を著しく拡大しなければ,地域住民の健康を守る要望に対応しえない状勢となって来た.これら多種多様の諸問題の背景の中で,現在当東保健所と地区医師会とが協力し合って,地域特性を生かした保健活動を実施している点について,紹介したい.

日本列島

精神衛生岐阜県大会の開催

著者: 鈴木大輔

ページ範囲:P.178 - P.178

 第15回精神衛生岐阜県大会(県精神衛生協会主催,県後援)が,昭和51年11月18日午前10時から岐阜市の岐阜県市町村会館で開催された.今回は,「婦人と精神衛生」をテーマに特別講演,シンポジウム等が行われた.
 大会には,県衛生部・保健所,病院,市町村,企業,教育関係担当者等,約300人が出席した.初めに会長(山村道雄岐阜県精神衛生協会長)が挨拶し,知事表彰,同協会長表彰等の精神衛生功労者表彰を行った後,労働省婦人少年局婦人労働課長の高橋久子氏が,「婦人と労働」という演題で約1時間講演した.

先天性心臓病児の実態について—京都

著者: 山本繁

ページ範囲:P.197 - P.197

 心臓病の子どもを守る「京都父母の会」では,このたび,「京都市における先天性心臓病児の疫学調査」を行い,その結果を発表した.
 まず,この調査は,昭和47年から49年において,京都市内および周辺にある,心臓病専門外来をもつ6病院を受診した,京都市在住の先天性心臓病児を対象として行われた.
 その調査結果は,以下の通りである.

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用語欄

著者: 西川滇八

ページ範囲:P.212 - P.212

▶自動化多項目検診事業 AMHTS
 Automated Multiphasic Health Testing and Servicesの略で,自動化多項目検診事業と訳されている.自動化された機器によって人の健康状態をできる限り総合的に検査して,健康管理に役立てるための健康診断システムのことである.アメリカのKaiser Foundationで開発されたものであるが,わが国の電機メーカーでも同様の機能をもった機器を製作して,普及を図っている.自動化検診の学会もできている.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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