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発言あり
プライマリー・ケア
著者: ゐ く を む の
所属機関:
ページ範囲:P.227 - P.229
文献購入ページに移動保健・福祉の分野では,近年,コミュニティー・ケアということが盛んにいわれるようになっている.その概念はいまだ必ずしも統一,確立されていないが,精神障害者,身体障害者,老人等,何らかの援助を要する人々に,彼らを地域社会に住まわせたまま,必要な社会的サービスを提供しようという考え方である.そのサービスには,ホームヘルプ,訪問看護,給食・入浴サービスのほか各種の医療,福祉施設におけるサービスが含まれる.そして,これでは地域住民の直接・間接の役割が強く期待されている.ここでの問題の一つは,用意すべきサービス・プログラムの充実とともに,その実施体制(delivery system)にあるといえる.医療でいうプライマリー・ケアのもつ問題にも,このシステム上の問題があるように思われる.
ここ3年,難病患者の医療・生活問題と社会福祉的対策のことを勉強してきたが,彼らのもつ問題は,重症患者の場合もさることながら,たとえ軽症であっても積極的な医療の対象からはずされて,居宅で苦痛・不安・孤独と戦っている患者の場合にも深刻である.治療方法がなく,入院の意味がなくなっている患者も,医学的管理や看護を必要としている.しかし,多くの患者にそうしたケアは届けられていない.それは,彼らが積極的に医療機関の戸を叩かないからではなくて,ケア体系の不備によるところが大きいようだ.
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