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綜説
食品公害をめぐって
著者: 春田三佐夫1
所属機関: 1(前)都立衛生研究所
ページ範囲:P.366 - P.372
文献購入ページに移動食品衛生法によれば,食品衛生とは飲食に伴なう衛生上の危害の発生を防止して,公衆衛生の向上増進に寄与すること,と定義されているが,今日では,単に飲食に伴う衛生上の危害の発生防止に止まらず,食生活をより安全で快適なものとし,進んで人の健康の保持,増進を期するところに真の意義があるとされている.この思想は,WHOの環境衛生専門委員会報告に示されている食品衛生の理念に沿うものであることは,いうまでもないところである.
ところが,われわれが食品として利用・摂取するものがすべて生物体に由来する事実を考えると,現段階では,それら動植物の生産の時点にまでさかのぼって対策を立てない限り,冒頭に述べたような意味での食品衛生を全うし,健康な食生活を確保することのできないような局面に立たされていると思われる.それというのも,実は,第2次大戦後における工業中心の産業構造の急速な変化と人間性を軽視した野放図な高度経済成長策の歪み現象ともいうべき環境汚染(environmental pollution)が,いまわしい爪跡を残してしまったからである.
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