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特集 公衆衛生戦後30年
戦後30年の母子保健の回顧とその問題点
著者: 船川幡夫1
所属機関: 1日本女子大学母子保健学
ページ範囲:P.475 - P.479
文献購入ページに移動第二次世界大戦は,わが国における公衆衛生活動の歴史に大きな変化をもたらしたことは,すでに各方面で指摘されている通りである.すなわち,民主的な観点から新しく制定された憲法の第25条によって保障された国民の生存権と,国民生活の社会的進歩,その向上のための国の責任が明確化されるにおよんで,母子保健の領域でも,新しい方向へと動きはじめた.
母子保健の目標が,母子の健康の保持と増進をはかるという基本的な理念においては不変であっても,それぞれの時代,環境の相異などによって,重点としてとりあげられるべき課題は変化してくる.終戦直後における混乱の時期から今日までの30年間,社会における大きな変動の中で,母子保健対策もいろいろと変遷してきた.それは,母子そのものの健康上の問題の変化だけでなく,それをとりまく生活環境の変化,さらに医療や,保健に関しての体制上の変化とともに,健康そのものの考え方の変化のあったことも否定できない.また,その過程では,ある時期には,よかれと考えて行われたことが,後に問題をもたらすということさえあった.
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