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特集 予研30年の歩み—伝染病の推移
腸管感染症(食中毒を含む)
著者: 福見秀雄1
所属機関: 1国立予防衛生研究所
ページ範囲:P.564 - P.565
文献購入ページに移動過去30年の間にわが国の腸管感染症の発生の状況が変遷していった様相は,まことに顕著である.腸管感染症といってもいろいろある.まず最初に我々を驚かせたのは,終戦直後,すなわち1947年から数年にわたって流行した伝染性下痢症である.この病気は外来性のものであったと思う.当時アメリカでも,ある地方で本病が流行していたことから勘案し,また占領軍のわが国への往来から見て,その由来,渡来の経路が推測される.
伝染性下痢症は2年か3年の間わが国の特に農村部において,かなりなスケールで流行を展開した.しかし,私の存知する限り,遂に都会地に侵入することはなかった.予研では日本医科大学の協力者とチームを作り,ボランティアを募って,その病原体の検索に努力した.その病原体が濾過性であること,感染後に免疫状態になること,アメリカにおいてこの病原体を研究していたゴードン等のそれと交換し,両者が免疫学的に共通すること,などを確認した.伝染性下痢症はしかし,やがてその大規模の流行を終息し,爾来何年かの間僅かにここかしこに報告が見られたが,遂にわが国では影を没せしめるに至った.
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