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特集 世界と日本の公衆衛生
国際保健協力の新しい段階と日本
著者: 橋本正己1
所属機関: 1国立公衆衛生院
ページ範囲:P.8 - P.10
文献購入ページに移動今年(1978年)の4月,WHOは発足(1948年4月)30年を迎える.この30年は日本にとってはもとより,世界にとって真に激動につぐ激動の時代であった.第2次世界大戦後における東の諸国の発展は,長年世界の主導勢力であった西の諸国との間にきびしい東西問題を提起したが,新中国の登場によって東の諸国の間にもかつてない波乱が高まり,文字どおり東西の谷間にある日本はまことに困難な国際政治の立場に曝(さら)されることとなった.しかし,世界にとってさらに重要な事実は,大戦を契機として長年の植民統治から解放を勝ちとって続々と誕生した,アジア・アフリカのおびただしい数の南の諸国の抬頭であろう.また,いわゆる石油問題の勃発以来,南の諸国についても産油国と非産油国,アラブ・イスラエルの紛争等によって,国際政治経済の様相がますます複雑困難の一途をたどっていることは周知のとおりである.だが,国際政治経済の問題に立ち入ることは小稿の主旨ではない.
ここで重要なことは,一国あるいは世界の保健問題がその問題の特質から,それぞれの政治経済の動きに深く絡みあっており,直接間接に鋭くこれを反映している,という事実である.
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