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特集 防災と公衆衛生
日本と災害
著者: 鈴木秀夫1
所属機関: 1東京大学(理)地理学
ページ範囲:P.688 - P.689
文献購入ページに移動あまりにも有名な"天災は忘れたころに来る"という言葉がある.この言葉の持つ意味が,最近,私には,昔と違って感ぜられるようになってきた.この場合,最近とか昔といっても,情勢の変化ということではなく,私個人の経験領域の違いということにすぎないのであるが,昔は,おそらく多くの人と同じように,災害に対して常に備えをしていなければならぬ,という教訓として聴き,そしてそれとともに,無意識のうちに,日本を災害の多い国として意識していたのであった.
しかし,その後,世界の各地を見る機会がふえたことによって,日本とはなんと恵まれた所にあるのだろうと考えるようになり,"天災は忘れた頃に来る"という言葉も,天災は日本では,忘れた頃にしか起こらないということの表現でもあると思うようになった.
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