icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生42巻12号

1978年12月発行

雑誌目次

特集 第19回社会医学研究会総会記録

社会医学の今日的課題

著者: 東田敏夫

ページ範囲:P.752 - P.753

■開会に寄せて
 「高度経済成長」の必然の結果として,環境破壊・公害等による健康破壊と労働災害が広がった.その後一転して,日本経済はいわゆる構造的不況に落ち込んで行ったが,保健衛生・医療サービスにかかわる矛盾は大きく,これに対する住民の要求が高まってきた.しかし政府・行政側は,国民の健康を守るべき公的責任をあいまいにしたままで,"福祉見直し・高負担論","健康自己責任論"を提唱するとともに,上からの「地域計画」,「システム化構想」,「健康づくり運動」を進める傾向を示している.このような情勢下にあって,労働者,農民,地域住民の健康状態とこれにかかわる社会的諸条件を突き止めるとともに,当面の緊急な課題をめぐって,国民の健康を守るべき公的責任と仕組み,保健医療従事者の役割について,その具体的な事例検討と実践活動に基づく報告と討議により明らかにすることこそ,「社会医学の今日的課題」といえよう.
 本年度の社会医学研究会総会の方針について,近畿在住の「企画運営世話人会」を組織し,合議の結果,上述のごとき「社会医学の今日的課題」を踏まえて,「一般課題」の報告を求めるとともに,下記の「シンポジウム」と「要望課題」による集中討議を行なうこととし,会員に呼びかけた結果,おおむね所期のプログラを編成することができた.

総会プログラム

ページ範囲:P.753 - P.754

〈シンポジウム〉公害・薬害・有害食品等健康被害者の医療援護・復権をめぐる諸問題
《座長》東田 敏夫(関西医大・公衆衛生) 山下 節義(京大・公衆衛生)
1.北九州における大気汚染と健康被害の実態について
 ○阿比留幸子・辻 良子・真角欣一(健和総合病院),梅田玄勝・八木邦子(北九州市民公害研)
2.最近の大気汚染公害の情勢と西淀川の大気汚染公害訴訟
 田中 千(淀川勤労者厚生協会)

シンポジウム

公害・薬害・有害食品等健康被害者の医療援護・復権をめぐる諸問題

著者: 東田敏夫 ,   山下節義

ページ範囲:P.755 - P.764

 これまでの企業優先・人権軽視の政策の展開のもとで続出した,大気汚染被害,水俣病,森永ミルク中毒,カネミ油症,スモンなどさまざまな公害,有害食品,薬害によって,数多くの健康被害者が生み出され,いまなお身体的苦痛,精神的苦悩,さらには家族ぐるみの生活破壊など,深刻な様相を呈している.これら被害者の復権,補償,医療援護への取り組みは,たとえ裁判に"勝訴"しても,依然として打開されず,なお多くの問題をかかえ,未解決のままである.
 もともと,健康被害者の復権と償いには,「加害者完全負担の原則」はもちろんのこと,「原状回復の原則」が貫徹されねばならない.すなわち「元の身体に返す」こと,「人間らしく生きる権利を取り戻す」こと,少なくともそれにふさわしい,可能な限りの医療援護と生活保障が,「被害者優先の原則」によって,生涯にわたって保証されなければならないはずである.それは,被害者らの侵された健康権,生活権,幸福追求権を取り戻すために必要・不可欠な要件であり,低水準の現行社会保障制度によって代替し得るものではなかろう.

要望課題 地域保健医療における公的責任と保健医療従事者の役割

(その1)保健センター構想と保健所再生をめぐって—(演題1〜3)—保健所・保健センター問題の背景

著者: 小栗史朗 ,   小林ヒサエ

ページ範囲:P.765 - P.767

1.英国NHI体制下における保健・医療計画の展開―ヘルスセンター構想を中心に―
  多田羅浩三(阪大・公衆衛生)
 (1)英国NHI体制下の保健・医療計画は,次の2つの要因によって規定されていたといえる.
 ①GPサービスの提供が,文字通り「保健」の給付として,保険委員会によって管理されたこと.

(その1)保健センター構想と保健所再生をめぐって—(演題4〜7)—市町村行政と保健所再生への提言

著者: 丸山創 ,   木下安子

ページ範囲:P.768 - P.771

4.小都市・町村における衛生費の動向 木村 慶(愛媛大・公衆衛生)
 住民の保健需要の量的・質的変化と多様化が急速に進行している現在,住民の日常生活に密着して続けられている市町村の衛生行政のいっそうの充実が求められている.厚生省も年々,市町村を実施主体とする事業を拡大する方向を具体化しつつある.にもかかわらず,市町村レベルの衛生行政の実状を系統的・継続的に把握し,国や県の立場でそれを補強.援助しようとする姿勢には,一貫して欠けている.年々増えていく対人保健サービスの需要に対応して,布町村の衛生費はどのような動向を示しているのか.とりわけ財政力の弱い人口10万未満の小都市・町村についてその実態をみるため,愛媛県内の市町村と,全国の小都市・町村の過去10年間の衛生費の推移を県地方課,自治省の資料によって見た.
 一般会計歳出に占める衛生費の比率は,近年急増した民生費とは対照的に,ほとんど変動なく5%程度に推移しており,近年のわずかの増加もほとんど清掃費によるもので,対人サービスに当たる保健衛生費は2〜3%とほとんど動いていない.衛生費の性質別構成比では,人件費の全くの停滞と,物件費の割合の著減に対して,一部事務組合員負担金が年々上昇し,人件費・物件費をしのぐに至っている.

(その2)保健医療従事者の役割と住民参加のあり方をめぐって—(演題8〜11)—自治体保健医療従事者の地域活動

著者: 山本繁 ,   乾死乃生

ページ範囲:P.772 - P.774

8.寝たきり老人を通しての福祉(医療)行政における訪問看護活動の現状と問題点
  ○新津ふみ子・加藤登志子・横田喜久恵(新宿区立区民健康センター)
 東京都における訪問看護事業は,東京都が訪問看護事業助成制度を開始させて以来,急速に発展し,昭和53年度では,10区6市がこの事業を実施している.その実施状況を分析してみると,この事業を衛生行政の中で位置づけ,当初から看護職が参加し,企画・実施において総括的役割を担っているところでは,資料・統計が整い,訪問看護による援助が内容において評価され,今後の展望への足がかりができている.しかし,他のところでは,概して,この反対である.
 また,この事業に参加する保健婦,潜在看護婦の役割分担とその考え方については,継続性というより,即時的・具体的指導やサービスは潜在看護婦の業務とし,保健婦はそれらの看護婦に対する指導的役割あるいは他機関との調整役となっている.これらの考え方は,今後この事業が住民の看護ニーズに効果的・有機的に対応できるのか疑問を生むところであり,これを単に保健婦事業として規制せず,看護職全体の問題としてとらえていくことが重要であろう.開業医(医師会)委託の場合,開業医の現状からして,自ずと看護職の主体的参加は不足し,医師による援助のみに限定されていることを懸念するものである.

(その2)保健医療従事者の役割と住民参加のあり方をめぐって—(演題12〜14)—住民保健組織と自治体計画

著者: 木村慶 ,   林義緒

ページ範囲:P.775 - P.777

12.地域保健・医療・福祉の計画化と実践―習志野市の事例を中心として―
  佐久間 淳(帝京大・公衆衛生)
 1.目的
 わが国における地域保健・医療・福祉は孤立的で,サービス提供に適切・効果的といえない面が多い.しかも,これらの改善を目差した計画化,並びに実践活動などを一貫して扱う研究が極めて少ない.演者は数年来,いくつかの自治体における計画策定,地域保健活動に参画してきたこのうち,習志野市の事例を中心に報告した.

(その2)保健医療従事者の役割と住民参加のあり方をめぐって—(演題15〜17)—地域医療の民主的発展と保健医療従事者

著者: 朝倉新太郎 ,   金田治也

ページ範囲:P.778 - P.780

15.保健医療行政の後退をねらう自治体と住民運動―佐久間町における住民運動―
  村瀬好美・海老原勇(山香診療所新守る会)
 佐久間町(人口1万人,山間に小集落が点在する町.国保直診病院1,同診療所2,開業医1あり)では,不況下における町の財政難を理由として,診療所医師の退職を契機に診療所を出張診療所に格下げし,町の中心部にある直診病院を僻地中核病院とする動きが生じた.これに対して「診療所を守る会」が結成され,多数の住民が参加し,町当局の構想の撤回を要求した.運動の過程で町当局の圧力によって,会員の多くは運動から離れたが,残った数人と医師たち(新守る会)は「じん肺患者同盟」の支部と連合して,宣伝,抗議,陳情を続け,ついに常勤医の勤務を町当局に認めさせるに至った.しかしその後,定年制の導入が図られ,その条件についての改善を勝ち得たものの,住民運動の主役となった診療所の保健婦,看護婦各1名は,退職を余儀なくされた.保健婦は3名から2名となり,医療は後退している.財政難のもとで医療を守るために,住民運動の必要性を痛感する.

一般演題

—(1〜3)—大都市住民の健康,労働災害,医療事故の社会医学的解明

著者: 渡部真也 ,   水野洋

ページ範囲:P.781 - P.783

1.大都市における生産年齢層の健康―大阪市を中心にして―
  〇南沢 孝夫・朝倉新太郎(阪大・公衆衛生)
 (1)全国の死亡率の年次推移をみると,15〜19歳および40〜44歳で死亡率の改善が停滞しており,この傾向はとくに男子に顕著である.
 (2)7大都道府県(10大都市を除く)と10大都市を比較すると,前者では若年層で,また後者では中年期で,それぞれ死亡率の改善の停滞が認められる.そして,このような,中年期を中心にした生産年齢層における死亡率の改善の停滞が,現代の大都市の特徴をよく表わしている.

—(4〜7)—幼児保健と老人ケアの問題点

著者: 奈倉道隆 ,   吉田幸永

ページ範囲:P.784 - P.787

4.保健所における発達相談の試み
 寺西秀豊(金沢大・公衆衛生),森源三郎(金沢大・教育),今村信夫・多田チヨ子(石川県松任保健所),石田セイ子(石川県小松保健所),寺田洋子(石川県総看)
 石川県松任保健所では,昭和48年以来,乳幼児健診後,精神的発達の遅れている小児を対象に発達相談を行なっているが,その若干の経験について述べた.

—(8〜10)—難病患者在宅看護の取り組み

著者: 西三郎 ,   三宅智恵子

ページ範囲:P.788 - P.790

はじめに
 難病に関する演題は社会医学研究会の発表演題として定着してきた.初期の頃の個々の単発的な症例報告からより進んで,個の援助についても援助内容を科学的に分析し,援助すべき問題をより具体的に提起する方向で進んできている.
 今回は,前年までの個を中心とした症例発表からさらに進み,患者を取り巻くさまざまな組織,社会資源がどのように活用され,運動が進められてきたか,また,これらの集団活動に関係専門職種はどのような役割を果たしたか,などが報告された.難病患者への援助の内容が個の枠を越えて,新しい患者会の運動論を踏まえた患者団体,地域住民の組織化へと発展してきている様子が,今回の発表からうかがうことができた.

あとがきに代えて—「社会医学研究」に残された課題

著者: 東田敏夫

ページ範囲:P.791 - P.792

 本年の総会の企画・運営については,近畿在住の世話人各位に種々お世話になり,主題「社会医学の今日的課題」のもとに,表記のごときシンポジウム,要望課題による集中討議,一般演題の報告を得て,予期以上に活発な論議がなされたことに対して,会員各位,世話人諸氏,並びに協力していただいた方々に厚く感謝したい.
 研究会が毎年,開催される総会の成果を受け継ぎつつ,いささかでも発展を期するためには,それぞれ「今日的課題」を見出し,それに答える必要があろう.

自由集会

保健所と市町村保健センター

著者: 山本繁 ,   木下安子 ,   丸山創

ページ範囲:P.793 - P.794

はじめに
 今回の社会医学研究会総会の要望課題として,「地域保健医療における公的責任と保健医療従事者の役割」が取り上げられ,その中で,保健所と市町村および保健センターをめぐる報告が行なわれた.これらの問題は,従来から社医研では重要課題として追求されてきた.本年はとくに,市町村保健センターが現実の姿となって,各地に設置されようとしているときだけに,会員の関心が深く,参加者も多かった.

公害等健康被害者補償救済をめぐって

著者: 片平洌彦

ページ範囲:P.794 - P.795

 第1日目のシンポジウムに引き続いて表記の自由集会が持たれ,参加者は比較的少なかったが,中身の濃い討論が交された.
 自己紹介を兼ねて参加者が出しあった問題は,疾病別にすれば,大気汚染(川崎,北九州),森永ミルク中毒,カネミ油症,新潟水俣病,スモン,そしてマンガン中毒とさまざまであったが,公害・薬害問題としての共通性が自ずと浮き彫りにされ,とくにいわゆる「認定問題」に話が集中した.その中で出された意見は,「医学的診断は治療方法を決めるためのもので,これによって認定される限り切り捨ては避けられない」,「加害者側の巻き返しが出てくると,認定医の判断にも影響が出て,歪められるのではないか」,「医学に認定を背負わされてしまうのは困る.行政は学者に責任転嫁をする.われわれとしても信頼できる政治家,行政家を味方にする必要がある」,「医師等専門家の限界というものを明らかにする必要がある」等々,今後さらに深めるべき重要な内容を含んでいた.

連載 図説 公衆衛生・24

地域保健・医療対策の現状と課題(完)

著者: 安西定 ,   柳川洋 ,   高原亮治 ,   川口毅

ページ範囲:P.745 - P.748

 近年,わが国における医学・医療技術の進歩には,新薬の開発をはじめ各種の検査技術の開発,MEの導入など,まことにめざましいものがある.一方,人口の老齢化に伴って生じた老人病・成人病の問題,救急医療,休日・夜間診療の問題,また人口の過疎現象から生じたへき地医療問題などにみられるように,地域における医療需要は質的・量的に急速な変貌を遂げ,かつ増大している.
 わが国の医療制度は本来,自由開業医制を基盤としており,これらの医療需要に効果的に対応するために行なわれている医療のシステム化や,その背景となる包括的な地域医療体制の確立は,はかりにくい現状にある.

発言あり

コレラの侵入

著者: ,   ,   ,   ,  

ページ範囲:P.749 - P.751

忘れられすぎた伝染病
 コレラという名前は忘れてはいないが,もう身辺からは遠ざかったものと考えていた.ところが最近になって,「コレラ騒ぎ」(文字通り"騒ぎ"であるが)というものを見,聞きするにつれ,いろいろ考えさせられる点が多い.
 和歌山のコレラ騒ぎのときのことである.ある大新聞の記者や写真班の人達も,どっとコレラ汚染地区にくり出して行った.ところが,である.それらの人達が,その地域に入っただけで,あたかもコレラに感染したかのように大騒ぎをし,しかも,今行って来たから予防注射をしてくれ,という.これらの人達は,コレラについていろいろの記事を書いている人達であるだけに,驚いてしまう.コレラについて勉強している(?)はずの人達ですら,こんな程度なのである.

調査報告

離島における神経系疾患の疫学的研究—三宅島住民の神経系疾患に関する調査成績

著者: 黒子武道 ,   花籠良一 ,   広瀬和彦

ページ範囲:P.796 - P.801

I.序
 離島における神経系疾患の発生,分布および神経系疾患の特性を明らかにするため,三宅島住民を対象とし,神経系疾患の特殊検診を含む疫学調査を実施した.

資料

簡易エネルギー消費量調査法の一試案(予報)

著者: 馬場昭美 ,   田中平三 ,   伊達ちぐさ ,   植田豊 ,   林正幸 ,   山下英年 ,   庄司博延 ,   吉川賢太郎 ,   中村善保 ,   大和田国夫

ページ範囲:P.802 - P.805

I.緒言
 筆者ら1)が農山村在住者を対象として,脳卒中のリスク・ファクターを検討したところ,高血圧が脳出血および脳梗塞の発生にきわめて大きな影響を及ぼしており,欧米諸国で強調されている高脂質血症や肥満は,現時点ではリスク・ファクターとならないことを報告した.同様の報告は,全国各地の調査2)3)からもなされており,このような疫学的事実は,脳卒中モデル(SHRSPラット)によって実験的にも証明されるに至った4).以上のような事実の背景には,栄養および労働状態が大きく関与しているであろうことは,容易に想像される.
 筆者らは,脳卒中の発生と栄養および労働状態との関係をprospective studyにより追究せんがために,ある農村で栄養および労働状態に関する悉皆調査を試みた.ヒトの栄養および労働状態を評価するためには,食事調査(摂取量),身体計測,生化学的検査,臨床医学的所見に加えて,エネルギー消費量の測定が重要である.さらに,これらを総合的に評価してはじめて,ヒトの栄養および労働状態を的確に評価することができるものと考えられる.

日本列島

某診療所での鍼治療—宮城県

著者: 土屋真

ページ範囲:P.764 - P.764

 近年,中国の鍼麻酔の現況が紹介され,手術時の麻酔や難治の疾患等に対する鍼の効果に,多くの人々の関心がよせられています.当県でもすでに一部の医師が診療に応用していますが,金成町にある町立診療所もその一つです.
 過日,同診療所を見学する機会を得ましたが,適切な鍼利用によって西洋医学の壁を越えうる可能性の大きさに感服させられました.

健康展開かれる—岐阜県

著者: 井口恒男

ページ範囲:P.777 - P.777

 健康づくりの県民運動を推進するため,岐阜県と県民百歳運動推進協議会の主催による健康展が,8月17日から22日までの6日間にわたって,岐阜市内のデパートの一フロアーにおいて催された.市内の繁華街である柳が瀬の中心地のデパートという地の利もあってか,6日間の入場者数は約22,000人と当初の予想をはるかに上回った.
 約400m2の会場に「人間と健康」,「母と子の健康」,「成人病の予防」,「食生活と健康」,「歯と健康」,「薬と健康」,「血液と献血」,「救急医療」,「運動と健康」,「心の健康」および「健康相談」のコーナーが設置され,デパート1階のフロアーでは献血車による献血業務も併せて実施された.6日間の入場者を各コーナーごとにみると,血圧測定三千数百人,疲労度測定1千余人,献血申込者九百余人のほか,栄養相談,体力テスト,歯みがき相談,健康相談等においても,500人以上の利用がみられた.また,曜日別にみると,中日の20日(日)は他の日の倍近い入場者であり,デパート一般の傾向と同様であった.

麻疹予防接種の定期化にあたって一言—京都府

著者: 山本繁

ページ範囲:P.787 - P.787

 予防接種法施行令等の改正に伴い,10月1日から,麻疹の予防接種が,定期接種として開始されることになったが,実務担当者としては問題点が多すぎると考えるので,それらを列挙して,関係者の御指導,御批判を仰ぎたい.
 まず,麻疹に対する予防接種の意義については,一定の理解ができるものの,主として開業医における個別接種方式をとっている点には,異議を唱えたい.

保健所のありかたについて—北九州市

著者: 園田真人

ページ範囲:P.795 - P.795

 今年の九州地区の保健所長会は,7月中旬に別府市で開催された.
 議題としては,「精神障害回復者に対する社会復帰援助の促進について」(福岡県),「精神障害者の社会復帰対策の充実について」(熊本県),「いわゆる中水道の法制化について」(大分県),「墓地埋葬等にかんする行政の町村移管について」(鹿児島県),「らい予防法の施行について」(沖縄県),「保健所の設備,整備費の十分なる措置について」(佐賀県)が提出されたが,それぞれの県のもつ問題点を示している.

--------------------

用語欄

著者: 西川滇八

ページ範囲:P.780 - P.780

▶エル・トール・コレラ(EI Tor cholera)
 ヒトに感染するコレラ菌には,主にアジア・コレラと呼ばれる致命率の高いものと,エル・トール・コレラという比較的軽症のものとがある.最近わが国に侵入しているのはすべてエル・トール・コレラで,1905年にGotschlichがシナイ半島のEl Tor港において,赤痢症状で死亡した巡礼6名の腸内から分離したものである.分離菌は溶血性をもつ以外は,細菌学的にも免疫学的にもアジア・コレラと区別できない.保菌者は患者家族に10%前後発生する.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら