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イタリアにおける医療制度の成立と発展
著者: セベリーノ・デローグ1 上畑鉄之丞2 須田和子3 笹川七三子2 金沢知子2 西村誠4 松田博3
所属機関: 1経済計画研究所 2杏林大学医学部衛生学教室 3東京都神経科学総合研究所 4立川第二相互病院
ページ範囲:P.531 - P.538
文献購入ページに移動1963年,「西欧の新しいタイプの政治的実験」としてスタートした中道左派政治(キリスト教民主党主導の中道政府に社会党が参加したもの)は,「完全雇用,福祉増進,南部開発」をスローガンに,社会保障,教育,医療等の分野でも改革をすすめるものと国民から期待され,支持されていた.しかし,実際は,ソットゴベルノ*による利権政治という点では,それ以前の「中道政府」と大差はなかった.改革への期待が虚像に終わった時,国民の中道左派に対する不信と怒りは急速に高まった.「暑い秋」('69年)の労働運動をはじめとする国民的規模の高揚のなかで,中道左派政府は年金制度などの大幅な改革に着手したのであった.「社会的諸改革」(年金,医療,住宅,教育)といわれる課題の重要性,および,そのための「社会的,民主的な規制,介入,参加」の必要性が中道左派の時代にイタリアの改革勢力の側に自覚されていった.保健・医療制度の再編と民主的管理・運営の要求,自治体の権限の強化と地域医療政策の確立,予防医療システム,エコロジー政策の導入などが,革新勢力の側から提起され,1977年7月に結ばれた,護憲六政党(キリスト教民主党,社,共,社民,共和,自由の各党)の「政策協定」においては,経済政策(第二章)の重点としての「公共財政の健全化」(第三項)のなかで,医療保険部門の合理的改革が重要な要素として含まれることになった.
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