icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生43巻1号

1979年01月発行

雑誌目次

特集 医師会の地域社会活動

国レベルにおける医師会の地域社会活動

著者: 勝沼晴雄

ページ範囲:P.4 - P.7

■近代医療のための地域医療
 与えられたこの題目は,具体的には「日本医師会の地域社会活動」ということで,紙数の限りにおいて述べさせて頂きたい.
 昭和32年,現行の健康保険法の全面改正が公布され,続いて昭和33年に国民健康保険法の全面改正が公布されて,昭和36年4月1日から実施された,いわゆる国民皆保険のための重要な準備が行われたわけである.この間昭和33年には,甲表・乙表の二本立制度が生まれたことは,日本の医療保険史において極めて重要なポイントになるが,そのほか国民健康保険法における療養担当規則は健康保険法の考え方から大きく脱皮して,21世紀の医療につながるポイントを打ち出したという意味で,本質的な意義をもつ重要事項であった.この二つの重要事項の実現については,当時の日本医師会が大規模な地域社会活動を含めて日本医療のため大活躍をしたことは,識者の常に思い起こすところである.

県レベルにおける医師会の地域社会活動—広島県医師会

著者: 右近文三

ページ範囲:P.8 - P.11

■広島県医師会の場合
 本県医師会における地域社会活動のうち最も特徴のあるものとして,広島大学,広島県および県医師会の三者が一体となった広島県地域保健対策協議会(県地対協,会長=大内県医師会長)について記したい.
 昭和32年,日本医師会は,はじめて地域医療推進について提言し,昭和38年3月,厚生大臣の諮問機関である医療制度調査会が「医療制度全般についての改革の基本方針」に対する答申の中で,地域保健調査会の設立を提唱し,これが地域社会における包括的医療体制の推進母体となることを期待した.

市レベルにおける医師会の地域社会活動—高崎市医師会

著者: 箕輪真一

ページ範囲:P.12 - P.16

■はじめに
 医師法第1条に「公衆衛生の向上及び増進と国民の健康な生活の確保」が医師の任務と規定されている.しかし,こうした認識から生まれる医師の行動は,その立場や専門職によってさまざまである.われわれのように地域に居住して診療に従事している医師および医師集団(医師会)は,変貌する地域社会の渦中にあって,限られた能力ではあるが,医師としての社会的使命感をもち,あくまで自由意思で意欲的に地域社会活動に取り組まなければならない立場にある.
 わが国の医師会の組織からすれば,われわれのような郡市医師会は,最も下部の組織の一単位に過ぎないが,地域住民と直接関係した,いわば現場を持つ医師会である.こうした各地の郡市医師会は,結局は細胞の一つ一つとなって,日本全土を埋め尽くし,それぞれの医師会はその地域特性に対応した社会活動を続けている.したがって地域の医師会は,わが国の医療行政の中央集権型とは全く逆のタイプの性格をもっているといえよう.

1歳半児健診—桐生市医師会

著者: 藤井均

ページ範囲:P.17 - P.23

 群馬県桐生市は,人口約13万,関東平野の渡良瀬川流域にある地方都市である.江戸中期から,織物の街として知られ,現在でも家内工業的な織物業が,産業の中心となっている.したがって,一家の主婦も,家事労働,育児のほかに,何らかの形で家業に従事している家庭が多い.

学校保健—蕨・戸田市医師会

著者: 中村泰三

ページ範囲:P.24 - P.29

■はじめに
 わが国で学校医の制度が設けられたのは明治31(1898)年で,勅令により全国の公立小学校に1名ずつの学校医を置くことが定められ,公布されている.国として,全国的に学校医を配置する制度を制定したのは,世界でわが国が最初であった.そして,この制度の制定に伴い,学校医として就任し,学校保健(学校衛生)活動に従事した医師は,すべて民間の実地臨床医家(開業医)であった.爾来,今日まで80年にわたって,児童・生徒の健康と安全を守り,衛生思想を向上させ,健全な国民を育成するための活動が,組織的・計画的に,しかも民間の医師によって連綿として継続され,地道に実践されてきたことは,世界に比類をみないものなのである.
 日本医師会は,学校保健活動を地域医療の一環としてとらえ,地域保健(地域住宅を対象とする母子保健・老人保健など)ならびに産業保健(会社,事業所などを対象とする)とともに,これら3つの分野の保健活動を包括して,全国民の生涯保健に対応している.したがって,各地の地域医師会にあっても,医師会員である医師たちは,たとえ学校医であろうとなかろうと,その地域の学校に通学する学童の健康問題は包括的地域医療の重要な問題として認識し,てれに関与することを当然の責務としている.

予防接種センターと地域医療—渋谷区医師会

著者: 村瀬敏郎

ページ範囲:P.30 - P.34

■予防接種センターの発足
 東京都においては,昭和39年以来,特別区長が定期および任意の予防接種に関する実施業務を,地区医師会に委託する方式が採られている.医師会がこの委託方式を受け入れた理由は,区実施による集団接種会場に雇い上げ方式で出動するだけでは,公衆衛生活動における開業医師の主体性が稀薄になると考えたからであろう.
 このころから地域包括医療の発想が芽生え,公衆衛生活動のうち,特に予防接種のように直接医師の関与するものは,開業医療の守備範囲に取り込み,疾病の予防から治療までを一貫した管理の中に置く気運が強まりつつあった.

産業保健—福岡県医師会

著者: 南野龍雄

ページ範囲:P.35 - P.36

■はじめに
 地域住民の診療に万全を期するだけでなく,さらに進んで住民の疾病を予防し,健康の増進をはかり,衛生的環境の整備に努め,衛生知識の向上に力を尽くす等々,いわゆる地域包括医療の推進に,医師会員は過去数十年にわたり熱心に取り組んで来た.
 現在,全国レベルで学校医活動,各種検診,予防接種,救急医療,健康教育等が,医師会の手で各地域の実情に応じて着実に行われており,多くの地域で既に定着して来ている.

救急医療システム—鎌倉市医師会

著者: 内藤悌三郎

ページ範囲:P.37 - P.42

■はじめに
 鎌倉市ではコンピュータによる情報収集システムを,昭和49年11月から発足させた.電算機を救急医療システムに取り入れることは世界で初めての試みであり,情報システムは救急システムの一部にずぎないのにもかかわらず,あたかも理想的な救急システムが完成したように受け取られた.それは,その頃ジャーナリズムが"たらい回し"を中心として夜間救急問題を取り上げ,住民はいっそう不安感を煽られて,理想的な救急システムの出現が社会的願望となっていた,という背景によった.
 いうまでもなく救急システムは,応需システムの完備がその根本である.情報システムは従であり,コンピュータがなくても電話コントロール・システムでも事は足りる.しかしながら,コンピュータ・システムは単に情報収集にとどまらず,応需システムの乏しさを補い,その機能を十分に発揮させるのに役立つことがわれわれの経験から判明した.東京・大阪級の大都市以外の多くの地域では,三次に該当する大病院はなく,二次を担当する病院すら十分でないのが普通である.鎌倉市の場合にも公的病院はなく,三次に当たるものはない.二次すらも,夜間救急に対応するには困難な内情をそれぞれに持つ私的医療機関のみである.

老人保健活動—阿南医師会中央病院

著者: 土橋哲夫

ページ範囲:P.43 - P.48

■はじめに
 徳島県阿南市は,柔らかい緑の稜線をもつ眉山「津の峰」,白砂青松の「見能林」海岸,小「松島」といわれた橘湾に囲まれ,海の幸,山の幸に恵まれた平和な農漁村を背景にひかえる小都市である.ところがいまから20年前,この地方に「住民の健康」をめぐって一つの事件が起こった.これが医師会病院発足の端緒となり,今日の姿に至っている.

海外事情

新生中国人民の暮らしと保健・医療事情

著者: 飯島洋一

ページ範囲:P.67 - P.71

はじめに
 日中平和友好条約が昨年8月12日,北京の人民大会堂で調印された.日中共同声明で条約締結の基礎ができてのち,6年が経過していた.その間,中国では毛主席,周恩来首期など革命の第一世代が死去した.次いで華国鋒政権が成立し,「四人組」打倒を為し遂げた.いままさに,中国は現代化への躍動を開始した.
 その最中,筆者は日中友好大学教員訪中団(団長=望月八十吉・大阪市立大学教授,以下17名)に参加し,一昨年7月22日から2週間,北京,長沙,韶山,南昌,上海を訪問した.訪問先の人民公社,工場,大学,病院などでは熱烈な歓迎を受けた.ソ連,カナダに次いで国土の広さは世界第3位(日本の25倍)の中国を点と線で結んだ訪問ではあったが,その間の印象はいまなお鮮烈である.以下は中国入民の暮らし,保健事業を中心にした見聞録である.

発言あり

受験シーズン

著者: ,   ,   ,   ,  

ページ範囲:P.1 - P.3

無目的の進学
 受験シーズンは,年端もいかぬ子供達を除けば,大半の日本人が憂うつになる時期であろう.このことは日本人に限らず世界的なことであるらしく,ソ連や中国でも,エリートになるためには特定の学校を卒業することが条件となってきていて,そのための塾もあり,なかなかの受験競争が始まっていると聞く.
 中学2年になる私の娘の学校では,すでに高校受験を意識してか,業者テストを受けさせたり,成績順位を廊下に貼り出したりしている.その中で,どんな子供が育てられていくか,不安になるのは私ばかりではなかろう.

海外ニュース 〈CDC報告〉

マラリア

著者: 稲葉裕 ,   豊川裕之

ページ範囲:P.49 - P.51

 1977年,合衆国において報告されたマラリアは480例(前年の415例に比し15.8%増)であった.このうち軍関係者は11例(2.3%)である.前年同様,三日熱マラリア(Plasmodium vivax)が,熱帯熱マラリア(P. falciparum)より多い(60.8%と20.8%).
 米国内での感染例は輸血による1例のみで,先天性のもの,蚊によるものは報告されていない.マラリアによる死亡は3例(前年は5例)であった.いずれもアフリカ旅行中に感染したもので,2例は熱帯熱マラリア,1例は同定されていない.熱帯熱マラリアの致命率3%は,過去10年(1966-1975年)の1.6%と比較して,統計的に有意の差はない.

目で見る衛生統計 国際比較

1.人口動態統計(その1)

著者: 大森文太郎 ,   小田清一 ,   藤崎清道

ページ範囲:P.52 - P.53

 戦後,医学の進歩と公衆衛生活動の進展により,わが国の衛生水準が飛躍的に向上したことは,誰しも疑いを入れぬところであろう.今回のシリーズは,そのような日本の衛生水準が国際的にどのような位置にあるのかを,総合的に再検討する目的で企画されたものである.
 対象とした指標は人口動態・傷病統計が主で,そのほか,栄養・体格・環境などの指標がある.比較対象国としては,統計資料が整備されていて日本と比肩し得る衛生水準にある国々という点から,欧米のいわゆる先進諸国を対象とし,アメリカ,イギリス,フランス,スウェーデンの4カ国を選んだ.資料は,"Demographic Yearbook"(United Nations)と "World Health Statistics Annual(World Health Organization)" を主に使用し,そのほかは適宜他の資料を使用した.

講座 臨床から公衆衛生へ

手足口病

著者: 西川慶繁

ページ範囲:P.54 - P.56

はじめに■
 1968年から1970年にわたって,手足口病という奇妙な名前の病気が全国的に大流行したことは,まだ記憶に新しい.本症は,その名のとおり,手(手掌,手背,指),足(足蹠,足背,足趾)に紅色あるいは赤褐色の丘疹や水疱ができ,かつ口腔粘膜にもアフタができる,ウイルス性の乳幼児を主として冒す急性伝染性発疹性疾患である.

病院の地域活動

伊勢崎総合保健センター付属病院

著者: 龍見武志

ページ範囲:P.57 - P.59

 開院以来4年有半の時間的経過により,地域市民に信頼と安心感をもって,"救急センター"と愛称されるまでに成長した地域医療の拠点,伊勢崎総合保健センター附属病院の設立経過と,その運営業務の平面的な概略について報告する.

医師会の地域活動・1

名古屋市医師会

著者: 井土修次

ページ範囲:P.60 - P.61

保健衛生活動■
 社会構造,疾病構造,医療構造の前進,発展に伴って,医療の高度化・普及化の趨勢は市民の健康教育をして,近代医療の円滑な運営のための必須条件の一つとさせてきている.これまでは市内各区の名古屋市医師会各支部単位で,保健所における1歳児・1歳半児・3歳児健診,成人検診,胃検診読影などの健康管理への参加のほか,区内一般住民,老人会,婦人会等に対して講演会,健康相談,検診事業等を担当してきたが,昭和52年度は名古屋市医師会館の新築落成に伴い,本会館において全市的市民を対象として,成人病,精神神経症,産婦人科疾患,小児疾患,ガンの周辺などについて,市民健康講座を大々的に開催した.また,市衛生局との共催により「脳卒中の予防と看護展」を開催し,脳卒中の予防と治療,さらに看護にわたる映画,講演,健康相談,看護要領,看護用具の展示等の総合的な催しを開いた.
 これらの事業に当たって,開催者側にとって頭を悩ますのは,参加者の動員の問題である.市当局の協賛によるものには,行政には動員力があるので多数の参加者が得られ,前者健康教育シリーズも新聞社と提携共催で開き,ある程度の成功を得た.

地域保健施設の活動

カウンセリングを選んだ松戸市健康増進センター

著者: 年代愛三

ページ範囲:P.62 - P.63

土壌はすでに用意されていた■
 その頃松戸市では,名市長と称えられた松本清氏が在任中であった."すぐやる課"が世間に広く知られ,"市民のために役立つすぐやる精神"は,基本的な姿勢として高く評価された.
 市道は,全面舗装され,隣接の市との境には「松戸市はここまで」の標識が目立った.アスファルトの路面は,そこから黄塵万丈の悪路に急変した.

保健・医療と福祉

家庭看護教室—高崎市

著者: 有家三枝

ページ範囲:P.64 - P.65

はじめに■
 高齢化する社会情勢の中では必然的に,寝たきり老人の数も増加の一途をたどるものと思われる.それに対し,社会資源の不足,老人対策の立ち遅れが目立っている.
 高崎市では医師会の協力を得て,老人看護の教育を通じて,老人に対する家族や社会の理解を深め,寝たきりへの移行を防ぎ,よりよい老後が送れるよう,家庭看護教室を実施してきたので,ここに報告する.

日本列島

薬物乱用対策の推進について—沖縄県

著者: 伊波茂雄

ページ範囲:P.42 - P.42

 明年7月1日から薬物乱用防止取り締まり月間が始まった.県では以前から薬物乱用対策推進地方本部を設置し,関係行政機関を網羅して対策を進めているところであるが,このたび県薬務課の呼びかけで「シンナー,接着剤,覚醒剤等の乱用防止対策協議会」が那覇市内で開かれ,県下唯一の市町村組織である宜野湾市薬物乱用対策推進協議会のメンバー等が参加し,薬物乱用を未然に防止し,青少年の健全育成を図るにはどうすればよいか,議論された.
 「シンナー常用者は精神的,肉体的にピンチの状態にあり,地域ぐるみで監視して救ってやらなければならない」,「乱用防止の決め手がなくて困っている.環境浄化が先決だ」などの意見が交された.また,「麻薬乱用者は過去にシンナー,あるいは他の薬物を常用しており,薬物に依存する傾向がある」,「シンナーをやめさせるために入院させたが,退院したらまた吸ってしまう.強制的に入院治療させる必要がある,販売している店の徹底的指導をすべきである」という意見が多く,隣近所が協力して監視する態勢作りの必要性が確認された.

沖縄県民の死亡原因について

著者: 伊波茂雄

ページ範囲:P.51 - P.51

 沖縄県では昭和53年9月15日,敬老の日に100歳を迎えた人は30人で,人口10万対で全国都道府県中最も多く,連続3年間,日本一となった。しかし,保健医療面では医師や医療施設数が人口比で全国平均の約2分の1,県民1人当たり年間受療回数が4回と少なくなっている.また,離島,へき地が多く,経済的にも恵まれておらず,出生率および低体重児出生率も全国一高いし,乳児死亡率も高い.ところが死亡率をみると,全国平均を下回っている.
 本県の死因別死亡者数は昭和52年(括弧内は昭和50年分)には総死亡5,276(5,667)となっており,第1位がん959(833,2位),次いで脳卒中913(1,019,1位),心臓病657(610,4位),老衰505(654,3位),肺炎および気管支炎296(387,同位),不慮の事故246(330,同位)の順になっている.

宮城県対がん協会の創立20周年式典—宮城県

著者: 土屋真

ページ範囲:P.59 - P.59

1.記念式典と講演会
 昨53年9月4日,県民会館大ホールに約1,000人の関係者を集めて,財団法人・宮城県対がん協会の「創立20周年記念式典並びに講演会」が開催された.協会長である黒川利雄・東北大学名誉教授の式辞は,対がん活動20年の歴史の回顧であったが,先生の御功績の偉大さを改めて感じさせられた.つづいて感謝状および記念品の贈呈があり,元東大総長の茅誠司先生の「私の歩んできた道」と題する講演をいただき,幕を閉じた.
 黒川会長は「検診車で助けうる患者に対して,医師から出かけるようになった.集検で発見された胃ガン中の早期胃ガンは,昭和38年頃が15〜18%だったが,51年には約60%になった.胃ガン半減,子宮ガン死亡ゼロを目指していきたい.そのためにも検診センターの拡充・強化を図りたい」とのべられた.

宮城県における食生活改善推進員の活動

著者: 土屋真

ページ範囲:P.66 - P.66

 食生活はかつての量から質の時代に移り,食塩と高血圧,糖質の過剰摂取と糖尿病など遺伝に及ぼす環境的因子としての食生活の重要性が強調されている.ガンにおいても食品添加物や熱い飲食物による火傷の繰り返し,食塩などの影響が指摘されてきて,ビタミンやカロリーの栄養学的考え方だけでなく,発ガン物質までをも考慮に入れた食生活の見直しが要求される時代になった.
 さらに,高血圧には寒さ,子宮ガンの予防には入浴との関係が重視されているように,他の環境的因子も大事である,毎日口から入る食生活の健康に対する影響の大きさは,今さら言うまでもない.私どもの県でも食生活への住民の関心が高く,よく講演を頼まれる.これらは行政機関にとっても大きな課題であるとともに,食生活改善推進員らの活動が期待されるところである.

--------------------

用語解説

著者: 箕輪真一

ページ範囲:P.48 - P.48

▶包括医療(Comprehensive medical careまたはcomprehensive health care)
 「医療」の概念は,一般社会では治療的側面にだけとらわれて,古典的な理解に止まっているようである.しかし,医療を人類生態学的見地からとらえ,医学の社会的適用と見なす限り,医療がかつてのごとく単なる疾病時の治療にのみ止まってはならない.日本医師会で用いられている「医療」の概念は,健康時の健康保持を出発点として,健康破綻の予防,さらに疾病発生時の対策,健康破綻からの回復,リハビリテーションを包括するもので,母子衛生,学校保健,産業保健,老人保健,さらには生活環境の改善などの広範なものを含むものとし,このような医療を「包括医療」と称している.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら