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海外事情
エスキモーの住環境
著者: 田中正敏1
所属機関: 1昭和大学公衆衛生学
ページ範囲:P.736 - P.740
文献購入ページに移動住宅は,厳しい自然から人々の生活を守る保護環境として,気候,風土に密接な関係をもってきた.これまでの長い生活史のなかで,住宅の形体,機能が培われ,その地方特有の住宅を生じさせてきている.そうした家屋の地方性成因の一つには,直接に人々に作用する風土,気候の影響とともに,家屋を作る材料,材質による制限のあったことは否めない.
エスキモーの住む環境は,多くが北極圏内に属し,建築部材としての木材,草などの育たない極寒の地である.夏の白夜,そしてある期間は太陽が全く現われないといった季節による太陽の出没である(写真1).こうした環境下に,エスキモーは彼ら自身の生理的な自然への適応よりも,むしろ衣服,住居,暖房により,北極圏での生活を可能としてきた.社会的・行動的適応といわれる.生活必需品のすべては,その地でとれ,工夫されたものであった.狩猟により得た毛皮の衣服,動物の脂肪,クジラの脂肉を燃やしての光,氷による家などである.エスキモーの住まいというと,ドーム状の氷の家"イグルー"を想起する.しかし,古くから北アラスカでは,マッケンジー川が南部から運んでくる流木を使い,木材と土を重ねて積み上げた住居であり,形体的にも東部エスキモーのイグルーとは異なっていた.
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