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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生43巻12号

1979年12月発行

雑誌目次

特集 感染病の国際的動向とその対策

1980年代における感染症の国際的動向予測とその対策

著者: 北村敬

ページ範囲:P.836 - P.847

■はじめに
 1970年代の10年間は,世界における感染症の状況に根本的な変化が起こった時代として,歴史に残るであろう.WHO(世界保健機構)をはじめとする種々な国際協力により,古来,医学の中心課題であった多くの感染症が多くの文明国において事実上根絶され,1980年代には,これを発展途上国に広げ,世界的規模での制圧ないし根絶に持って行くのが主な目標となるものと考えられている.特にWHOの全世界痘瘡根絶計画は1967年の発足以来,予定通り10年間で,1977年にその目標を達成し,2年間の観察期間をおいて1979年,その確認が行なわれたことは周知の通りである.これは疫学理論に忠実に,全世界が協力して達成された輝かしい成果であるといえよう.
 その反面,人口動態と交通様式の変化により,従来,地球上の僻地で,人畜共通伝染症として存在しているものと思われるいくつかの疾患が大流行を起こして,新たにヒト―ヒトの感染環を形成する可能性も生じ,新しい国際伝染症が生まれるという新しい事態も見られる.また,診断方法の進歩により,従来感染症と考えられなかったような疾患で感染症であることの証明されたものもある.

インフルエンザ流行の歴史と予測

著者: 大谷明

ページ範囲:P.848 - P.851

■流行の歴史
 インフルエンザウイルスの粒子は図1に示すように球型または棒状で,ウイルス核タンパクは脂質に富んだ被膜に被われており,その被膜にはそれぞれHAとNAと呼ばれるタンパクで構成される2種類の突起(スパイク)が多数存在している.このHAとNAのタンパクは,インフルエンザウイルスによる感染と免疫に最も重要な役割をもつことがわかっている.これらのタンパクはそれぞれ独立した遺伝子の情報にもとづいて細胞内で合成されるもので,遺伝子が多少変化すると合成されるタンパクも変化を受ける.HおよびNのタンパクに大きな変化が起こったものについては,それぞれH1,H2,H3,N1,N2のように分類されて,ウイルスの抗原型と呼ばれる.
 ヒトのインフルエンザ流行史において,大きな流行が起こったときには,ウイルスのHAタンパクに大きな抗原型の変化が伴っていることが記録されている(表1),NAの変化はHAの変化ほど大きく流行に関係していないようである.H,Nの両抗原型はそれぞれ独立に変化するので,HとNの多様の結合型が存在する.表1に見るように,1918年以来Hの抗原型は通常,約10年ごとに変化してきた.

エルトールコレラの流行—第7次pandemic

著者: 小張一峰

ページ範囲:P.852 - P.854

■pandemic
 19世紀から20世紀の初めにかけて,コレラが6回にわたって世界各地に大流行をしている.そのpandemicの源はいずれも,コレラのふるさとといわれていたインドのガンジス川デルタ地帯であった.ところが,第7次pandemicと呼ばれる1971年以来の大流行は,従来のインド由来のものではなく,セレベス南部の一地区に長らく土着していたエルトールコレラが,急に各地に蔓延した結果であった.
 エルトールコレラの1961年後半から1962,1963年にかけて,東南アジアの各地へと蔓延していった有様はまことに凄まじく,まさに"pandemic"と呼ぶにふさわしいものであった.その後も流行はだんだんと西進し,1970年にはアフリカにまで及んだ.年による流行の消長はあったが,いまだに広い範囲にわたって患者発生がつづいている現状は,第7次pandemicが継続しているものとされている.確かに,発生国の数も減ってはいないが,近年のコレラの臨床症状に軽微なものが多いこともあって,現在の流行状況はpandemicという実感とは程遠い気がしないでもない.

サルモネラ症の最近の動向

著者: 斎藤誠

ページ範囲:P.856 - P.859

■はじめに
 サルモネラは公衆衛生の分野では,急性胃腸炎型の臨床像を発現する感染型食中毒の病原として理解されている.このサルモネラ症は,ここ数年来,細菌性食中毒において第3位の病原として認識されているが,臨床における下痢症の分野では,1965年頃から増加の傾向を示すと同時に,質的にも大きな変貌を呈するに至った.それは菌型の多型化(国際化)と同時に,多剤耐性株の出現と浸淫,乳幼児サルモネラ症の増加,病院感染の病原として,本菌の注目などがこれに該当する.加えて,サルモネラ保菌者の著増は治療(除菌)を含み,その取扱いに一定の見解がなく,行政の分野で混乱をみせている.
 このような現況を直視し,サルモネラ症を疫学的視野から,臨床にも触れながら述べてみたい.

医動物の最近の動向

著者: 鈴木猛

ページ範囲:P.860 - P.864

■はじめに
 医動物とは,医学に関係のある動物を総称し,原生動物から脊椎動物に至る,はなはだ広い範囲の動物を含んでいる.ここでは,蚊,ノミ,シラミ,ハエ,ダニなどの,いわゆる衛生害虫を中心に,ネズミ,内部寄生虫にふれて話を進めることにする.
 近時,特定の疾病を媒介することはないが,その存在そのものが不快であるという,いわゆる不快昆虫が,わが国で大きくクローズアップされてきた.しかし,いうまでもなく,医動物が公衆衛生上大きな意義をもつのは,それが疾病の伝播,媒介に関与するか(多くの衛生害虫やネズミ),あるいはその存在自体が疾病を引き起こす(寄生虫)場合であろう.

マラリアの最近の動向

著者: 大友弘士

ページ範囲:P.865 - P.869

■はじめに
 かつて世界210カ国(領域を含む)総人口の63.4%が居住する148カ国の風土病であったマラリアは,世界保健機構(WHO)によって推進された「マラリア根絶計画」(Malaria Eradication Programme;MEP)の実施により,1974年までに欧州,北米,台湾など37カ国で終熄がみられた.しかし,このように当初,顕著な成果を示したMEPにも最近になって各種の問題が派生し,それに関連して今なお広大な熱帯地域の猖獗を阻止するに至らぬほか,1970年頃からはいったん防遏に成功した多くの地域にも流行の再燃が報告されるようになった.
 その結果,マラリアは依然としてアフリカ,中南米,東南アジア,オセアニアなどを包含する熱帯諸国では今なお重要性を示しているのが現状であり,全世界的な問題を惹起している無マラリア諸国に対する輸入マラリアの温床ともなって,本症の新たな局面を展開しているといえよう.

肝炎の最近の動向

著者: 小幡裕

ページ範囲:P.870 - P.876

■はじめに
 国際的な感染症の一つとして肝炎が話題に取り上げられるようになったのは,最近約10年間に,原因となる肝炎ウイルスが分離,同定され,その本態が解明されてきたからである.肝炎ウイルスは数種類存在することが知られるようになったが,種類により感染,発病,免疫反応などに差異がみられる.そして,人種ないしは民族により,肝炎ウイルスの蔓延度や疾患像は一様ではないのである.
 したがって,ここでは初めに肝炎ウイルスのウイルス学的知見について述べ,次いで,世界的に眺めた地理病理学的な特徴などについてふれてみたい.

性病の最近の動向

著者: 芦沢正見

ページ範囲:P.877 - P.880

■性病の概念
 国により,まん延防止のため,主な性病の届出・予防・治療に関する事項を法令で定あているが,その対象となっている梅毒,淋病,軟性下疳,そけいリンパ肉芽腫症の4病,または性病性肉芽腫を加えた5病をいう法令上定められた性病の概念と,感染期にある患者の性器との接触という共通の経路によって,ヒトからヒトに直接感染を起こす疾患群の総称という概念と,性病には二通りの概念がある.
 前者の概念については,わが国では1945年12月の「花柳病予防法特例」以来4病を称している(ただし,復帰前の沖縄では5病を法定の性病としていた).

感染症流行予測事業の概要とその成果

著者: 末満達憲 ,   長谷川慧重

ページ範囲:P.881 - P.885

■はじめに
 流行予測事業は昭和37年に開始して以来,本年で18年目に至っている.顧みれば,この間香港カゼ・ソ連カゼの流行,風疹の大流行,予防接種法の全面改正などさまざまな出来事があり,防疫行政の標的が腸管系感染症を中心とする細菌疾患からウイルス疾患に移ってきたが,一方,国際交流の激化に伴いコレラの発生を見たり,国際伝染病対策が必要になるなど大きな変化を経てきたのである.
 ここに本事業を紹介するにあたって,流行予測が防疫業務の大きな柱である感染症サーベイランスの中でいかなる地位を占めるかを反省し,その中で今後進むべき方向を展望しつつ稿を進めたい.本事業の概要にも触れるが,詳細は昭和47年以来「伝染病流行予測事業報告書」としてまとめられており,また諸誌に解説1)〜8)がなされているので,それらを参考にされたい.

「全世界痘瘡根絶計画」の発足から完成まで

著者: 北村敬

ページ範囲:P.855 - P.855

 1979年10月26日,WHO(世界保健機構)は,エチオピア,ソマリア,ジブチ,ケニアの4カ国の痘瘡根絶確認作業を終え,全世界から痘瘡が根絶されたことを宣言した.数千年来人類を苦しめてきた,感染症の中でも最も重大なものを地球上から消滅させるという,歴史的な大事業が完成したわけである.この「全世界痘瘡根絶計画」(Global Smallpox Eradication Programme)はどのようにして成立し,どのようにして成功したのであろうか.
 痘瘡はウイルス性出血熱の一種で,罹患者の30〜40%が全身の発痘と血管障害で死亡する.しかし,1798年,Jennerにより開発された予防接種(種痘)の効果は確実で,全国民を定期種痘する政策により1950年代までに多くの先進国においては痘瘡根絶を達成していた.熱帯地方,開発途上国などでは,繰り返し試みられた国民皆種痘政策にもかかわらず,衛生行政組織の不備による種痘もれ人口の残存,冷蔵設備の不備によるワクチンの失活などが原因で,Jenner当時とあまり変わらない大流行が根強く残っていた.1955年,イギリスのCollierが凍結乾燥ワクチンを開発したことにより,種痘は技術的にきわめて容易なものとなった.

講座

癌の化学療法

著者: 小川一誠 ,   名倉英一

ページ範囲:P.886 - P.889

■はじめに
 近代の癌化学療法の歴史は,1949年,米国のSidney Farber1)が小児急性白血病の60例に,aminopterin,amethopterin(methotrexate)等の葉酸拮抗物質を投与して半数以上の症例に血液学的,臨床的改善を認め,またリンパ肉腫,ホジキン病,神経芽細胞腫にも有効であったと報告したことに始まる.よって,まだ歴史は浅く,約30年である.この間に新しい抗癌剤の相次ぐ発見,有用な併用療法の開発,および化学療法を行なう時の支持療法の進歩により,目覚ましい発達を遂げ,今日に至っている.例えばその成果は,小児急性リンパ性白血病では約50%の症例に治癒が可能となりつつある事実によっても明らかである.
 本稿では,癌化学療法の全体を詳述することは不可能であるため,その適応,方法,有効性につき簡略に記述したい.

臨床から公衆衛生へ

オウム病

著者: 藤井良知

ページ範囲:P.902 - P.904

はじめに■
 オウム病(Psittacosis)はその名のように,オウムからヒトが感染する,人獣伝染病の代表的なものである.しかし,オウムだけでなく広く飼鳥,野鳥から感染を受けることがわかり,これはOrnithosisの名で区別されたが,一般には"オウム病"と呼ばれることが多い.以下に述べるように,その予防と病原を根絶するためには公衆衛生関係者の努力に期待するところが大きい疾患の一つである.

発言あり

検疫100年

著者: ,   ,   ,   ,  

ページ範囲:P.833 - P.835

 防疫行政は再び時代の脚光を浴びている
 今月のテーマは「検疫100年」となっている.この1世紀の最後のほぼ1/5を公衆衛生領域の仕事に従事してきた一人として,この短かった20年の歳月をふりかえってみると,コレラをはじめとする輸入伝染病ないし検疫伝染病の推移には,いろいろな起伏があったことが印象に残っている.
 20年前といえば,現在のような東南アジア諸国への観光ラッシュは想像もつかなかった時代である.そして1961年頃,インドネシアのセレベス島で発生したエルトール・コレラのアジア各地への流行があり,その頃,関東周辺にネットワークをもった某建設関係企業が防疫対策の一環として,コレラの予防接種を企画し,若輩の筆者も駆り出されてあちこちの事業所を訪問して回ったことが思い出される.結局,この時には,コレラのわが国への侵入は未遂に終わったと記憶している.

医師会の地域活動・9

全会員の参加による独特な活動を展開—富山市医師会

著者: 出口国夫 ,   山本巖 ,   土田亮一 ,   吉田弘

ページ範囲:P.890 - P.892

はじめに■
 古くは「越中富山のくすり」,近年では「立山黒部アペンルート」と,公害病の論議が絶えない「イタイイタイ病」発祥の地として有名な富山県の中心に存在するのが,富山市である.
 県医師会員千余名の約半数の450名を占める富山市医師会は,富山医薬大の創設に伴って,さらに会員数が増加しつつある現状である.

地域保健施設の活動

精密検診システムを取り入れ,医大,医師会とも連携—宝塚市立健康増進センター

著者: 安藤博信

ページ範囲:P.894 - P.895

施設の歩み■
 宝塚市立健康増進センターは市民の健康増進対策,疾病の予防対策,およびその早期発見の一環として昭和51年4月,総工費5億9千万円を投じて設立された.

海外ニュース

偉大な国,インドの一面

著者: 佐藤智

ページ範囲:P.897 - P.899

はじめに■
 "インドとは実に偉大な国だ"というのが,1年間南インドで医療にたずさわった私の率直な感じである.
 "偉大"という意味は,面積においてヨーロッパ(ロシアを除く)ぐらいあり,人口は6億5千万,公用語は英語を含めて16(これらは一つ一つ文字も異なる),鉄道の長さは世界第一,……ということではない.

目で見る衛生統計 国際比較

11.老人保健統計

著者: 大森文太郎 ,   小田清一 ,   藤崎清道 ,   石塚正敏

ページ範囲:P.900 - P.901

 近年,わが国でも人口の老齢化が社会問題としてクローズアップされてきたが,今回は,その方面におけるわが国の現状を,既に本格的高齢化社会を迎えている各国と比較してみよう.(本シリーズ第1,3,4,8,9回も参照)
●先に掲載した「社会保障費」の中では紹介しなかったが,医療費に次いで重要な部分である年金についてみてみよう.

日本列島

「健康を守る母の会」ブロック研修会—宮城県

著者: 土屋真

ページ範囲:P.889 - P.889

 県内6ブロックでの研修会の1つとして,昭和54年8月22日,県北築館町にある栗原建設会館の会場いっぱいに138名の婦人が集まり,「宮婦連健康を守る母の会築館ブロック研修会」が開催されました.「宮婦連健康を守る母の会」は8年前に発足し,積極的な活動を行なっている,熱心な婦人団体です.この会の活動については後日,紹介したいと思います.
 仙台での中央研修会のあと毎年地元研修会が行なわれていますが,当地での主催者は栗原郡10町村婦人で構成されている「築館ブロック健康を守る母の会」であります.後援には県医師会,(財)県対がん協会,栗原郡町村会がなっていて,県教育事務所が世話役をしました.栗原郡は県婦人会の発祥の地と言われるだけに,婦人会活動も活発な地域であります.

パーキンソン病の疫学的実態—京都府

著者: 山本繁

ページ範囲:P.892 - P.892

 京都府では,府下におけるパーキンソン病の実態を把握する目的で,特定疾患疫学調査班(班長=国立療養所宇多野病院,西谷裕副院長)に依頼して,人口流出入の少ない4町を選定し,人口26,251人を対象にパーキンソン病の疫学的実態調査が,昭和53年3月〜10月において実施され,その報告書がこの度まとまり,発表された.
 それによると,まず第一次調査では,パーキンソン病患者にしばしば認められる症状11項目を含むアンケート調査を行ない,86.5%の回収を行なった.そのうち,パーキンソン病と過去に診断されたもの,および,質問項目中3項目以上陽性のもので症状経過が徐々に起こってきたもの312人を選定し,それらに直接検診を行ない,244人の受診をみた.

地方医科大学の役割—岐阜県

著者: 井口恒男

ページ範囲:P.896 - P.896

 地域医療体制の向上には,医療施設や設備が整備されるとともに,医師をはじめとする医療従事者の量的質的な確保が肝要であることはいうまでもない.中でも医師確保は中心課題であり,国においても,1県1医大の設置を進めてきており,地方の医大(医学部も含め)の意義が,地域の区療確保にあることは疑いのないところであろう.
 岐阜県においては医大(岐大医学部)がすでに30年近い歴史をもっており,地域の医療確保に直接間接に貢献している.県内の多くの主要病院には医大卒業生が主柱となって活動しており,また県内各地で開業し,第一線で活動しているものも多い.他方,大学の教授をはじめとする大学職員の中には,村や市町村行政などに対し,専門的立場から指導や助言の役割を担っているものも多い.

琵琶湖富栄養化防止条例の制定—滋賀県

著者: 山本繁

ページ範囲:P.904 - P.904

 全国的に注目されていた,滋賀県の琵琶湖富栄養化防止条例は昭和54年10月16日に,滋賀県議会でほぼ原案通り成立した.
 滋賀県では,3年連続の赤潮発生に象徴される琵琶湖の水質汚染をくい止めるべく,本年に入って「琵琶湖の復権」を目指し,「近畿1,300万人の水がめの確保」をはかるために,積極的に条例制定に取り組まれてきたわけで,種々の紆余曲折があったものの,最終的には日の目をみることになったので,多方面から喜ばれて,環境保全対策の一方向として評価されている.

県立保健所の再編成の実施—宮城県

著者: 土屋真

ページ範囲:P.905 - P.905

 当県の保健所は県立が14,仙台市立が3ありましたが,このたび10年ほど前から懸案となっていた,県立保健所の思い切った統合が行なわれ,昭和54年4月1日から県立保健所は9保健所と5支所に再編成された.今までその過渡期として行なわれた保健所の特定機能の集中化により,兼務職員制度などの不自然な状態が続いていたが,今度の機構改革でこの点はすっきりした.しかし,前に保健所のあった5地域には,行政上の理由と住民サービスの低下を防ぐために支所が残った.
 昭和12年4月に保健所法が制定され,時代の変遷とともに時代の要求に即応できる保健所の在り方が論ぜられてきた.基幹保健所と一般保健所に分ける構想(昭43),保健所問題懇談会基調報告(昭47)などがあり,全国各地で保健所の将来像をめぐり意見が交わされている.

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用語解説

著者: 長崎護

ページ範囲:P.864 - P.864

▶高力価抗体グロブリン(HBIG)
 健康成人血漿からIgGを分離した人免疫グロブリン(ISG)は,一般に抗A型肝炎(HA)抗体などを豊富に含んでいるが,B型肝炎ウイルス(HBV)に対するHBs抗体は乏しく,したがって,ISGではHBV感染に対する免疫効果は少ない.HBV感染に対しては,この抗HBs抗体による受け身免疫が予防に有効であることが知られており,このために抗HBs抗体を豊富に含むガンマグロブリン(抗B型肝炎人免疫グロブリン;HBIG)が,すでに欧米では研究開発され,市販されている.わが国では,国の「抗B型肝炎人免疫グロブリン開発研究班」により,研究開発がすすめられてきている現状である.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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