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発言あり
水危機
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ページ範囲:P.525 - P.527
文献購入ページに移動世界の年平均降雨量の2.6倍という豊かな水資源に恵まれ,私たち日本人は,水はいつも欲しいだけ与えられると思ってきた.都市で恒例的になっている夏の渇水の時でさえ,この一時を我慢すればあとはまた何とか,と空を仰いで雨を待ち,水に対する生活習慣は変えようとはしない.
だが,昔から水はふんだんに使えたわけではない.例えば,江戸では家康開国当初から多くの人口を賄うため,水道の敷設に多くの技術と苦労があった.また,その維持管理には莫大な費用を要し,その負担者である地主の頭痛のたねは,火事,祭礼,水道料金であったそうだ.水道が廃止された本所,深川界隈では,水が売買されていたとも聞く.金を湯水のように使うという譬えがあるが,江戸の町人の間ではむしろ水の浪費を悪徳とし,水は貴重品として節約されてきた.
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