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費用便益分析(上)
著者: 前田信雄1
所属機関: 1国立公衆衛生院
ページ範囲:P.578 - P.582
文献購入ページに移動経済活動の場で多く用いられるこの費用便益分析が,広義の保健事業分野でも使われだしたのは,実は比較的以前のことである.19世紀,ロンドンのような大都市での水道設置事業計画あたりで,既にこの考えが入っていたといわれる.つまり,長期にわたる大がかりな事業で,しかも社会的投資により社会的便益を得ようとする場合,投資1単位当たり便益の最も高いものを探そうとするのは当然であった.
費用便益分析(cost benefit analysis)と銘打った手法が一般化したのは,実はそう古くはなく,第2次大戦後である.とくに,それが本格的に保健分野に導入されるようになったのは,やはり1960年代後半に入ってからである1).伝染性疾患や腎臓病あるいは精神障害など,個別の傷病への対策の費用便益分析が進められたのと,いまひとつはドローシイ・ライスの傷病費用に関する全体的調査・研究が挙げられよう.この分析は,主としてアメリカの公衆衛生学者や公衆衛生の行政分野でよく取り上げられてきたものだが,1960年代後半の頃,一時その研究発表は少なくみえた期間もあるが,オイルショック以降の財政難,医療費の高騰,新たな保健サービスの模索のなかで,1970年に入ってから,また熱心に調査・研究の実際に移されてきた手法である.
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