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特集 80年代の展望—保健・医療・福祉
80年代における環境保健の展望
著者: 橋本道夫1
所属機関: 1筑波大学環境政策
ページ範囲:P.39 - P.45
文献購入ページに移動まず80年代の位置づけを考えてみよう.50年代は第二次大戦の荒廃からの復興が中心となり,60年代は経済成長を目指した開発の年代であり,この時代に公害,労働衛生,消費物資などに伴う,環境と健康にかかわる問題が一斉に顕在化した.70年代は経済成長の歪みに目覚めた時代となり,後半にはアラブの原油供給削減やドル・ショックなどによる国際的な経済の停滞の中で,先進工業国における環境公害に対する高まりは大勢として冷却されたが,一方,第三世界の勢力が急速に高まり,未開発こそ環境問題の重要問題であるという動きが強く開発途上国から主張された.72年のストックホルムにおける国連の人間環境会議と,そこでまとめられた「人間環境宣言」は,これを最も明瞭に示している.日本では70年代の後半に公害,労働衛生,消費物資をめぐる嵐のような社会的・政治的な動きが起こり,60年代の末までは汚染者の天国の時代であったのに対し,70年代に入るや一転して汚染者の地獄の時代となったが,厳しい対応によって70年代後半には危機的状態をやっと切り抜けることができた.しかし,不況や失業,財政難等の厳しい社会的・政治的情勢の中で,70年代の後半には冷却された世相となった.そこへエネルギー危機と,スリーマイル島の原子力発電所の事故という新たな問題が表面化し,今日,これらの問題に直面しつつ80年代を迎える状態にあるといえよう.
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