スポット
エボラ出血熱
著者:
杉下知子1
所属機関:
1東京大学医学部母子保健学
ページ範囲:P.298 - P.298
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エボラ出血熱(Ebola haemorrhagic fever)は1976年6月から11月にかけて,スーダン南部およびザイールに突然発生した."エボラ"とは流行地を流れる川の名にちなんでつけられたものである.高熱と頭痛,胸痛,関節・筋肉痛,それに鼻出血・口腔内出血,血性下痢,嘔吐などを主症状とする,ウイルス性の疾患で,経過がやや長い.1976年のスーダンでの流行では患者280人中死者が147人で致命率は53%1),ザイールでの流行では患者330人中死者が157人で致命率は48%2)と致命率が極めて高いのが特徴である.病原体はウイルスであることが確認されているが,1979年に再び本疾患がスーダンで発生した.本誌43巻12号で北林敬が触れているが,さらに詳しくここに紹介する.
最近,再び出血熱患者がスーダン南部で発生したことが報告された.直ちにスーダン保健省とWHOコンサルタントの共同作業でサーベイランスが計画され,69人の疑似患者(うち27人の死亡)を把握した.臨床的・血清学的・疫学的データに基づいて真性患者は33人と判定され,このうち22人が死亡した.患者発生は,本症の第1号患者が1976年に確認された地区に近いYambio-Nzara地区に限定されていた.