icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生44巻5号

1980年05月発行

文献概要

随想

手づくりと文化

著者: 堤隆信1

所属機関: 1岡山県衛生部医務課

ページ範囲:P.373 - P.373

文献購入ページに移動
 小学校五年生になる娘が,あるとき学校から遠足の携行品についての便りを持ち帰った.この中に弁当として注意書きがあり「手づくり」と記されていたことが,ずっと気にかかっていた.その後しばらくしてその疑問は妻に問うたことから解けた.それは「遠足・運動会などには,近頃店で売っている外食屋さんのものを持って行く子供が増えたので,先生が特につけ加えられたのでしょう」との言葉に,ホウ! ここまで均一化したのかと思うとともに,「手づくり」という耳慣れた言葉に興味を感じた.
 私の家に木製のサラダナイフとスプーンがある.一昨年,関係各位のご尽力を得て訪欧する好機を与えられた時,チェコの古道具屋の店先で求めた手づくりの台所用品である.この二つの道具を使い出したら,今まで使っていた金属製のものよりぐんと具合がよいと家の者がいう.この二つの道具は,見かけは武骨であるが,大きさ,重さ,野菜のはさみ具合はまことによく,手になじむ,これを作ったチェコの職人の「これでよし」と感じた手ざわりが,そのまま伝わってくる.作るのも,使うのもいずれも人の手で,それらがよい感触を生む原因かもしれない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら