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特集 人畜共通伝染病
日本脳炎の最近の動勢
著者: 高橋三雄1
所属機関: 1国立予防衛生研究所衛生昆虫部
ページ範囲:P.422 - P.427
文献購入ページに移動日本脳炎ウイルスが,ヒトのみならず多くの種類の哺乳類や鳥類などに感染を起こし,かつ障害を引き起こすことはよく知られている.その古典的な最も有名な例はウマの脳炎である.1948年の流行では,日本全国で3,678頭のウマが罹患し,1,511頭が死亡した.対10万の罹患率で表わすと実に337.1という数字になる.ウマの脳炎は,この年以来不活化ワクチンによる予防接種が実施されるようになり,現在ではほとんど問題となっていない.
動物の日本脳炎に関して次に問題となったのは,ブタである.ブタの場合はウマと異なって,肥育豚や母豚自体への感染は多くの場合,不顕性感染か一過性の熱発に終わるが,妊娠豚が感染を受けると高率に異常分娩を引き起こし,大きな経済的損失となる,1969年の農林省(当時)統計によると,母豚の異常分娩率は全国(40道府県)で32.5%に達しており,さらに以前の時期にまでさかのぼると,異常分娩率が70%を超えた記録も存在する.ブタの死産予防のためには以前から不活化ワクチンが使用されていたが,1970年前後から弱毒生ワクチンが開発され,一部ではこれが増幅動物対策として肥育豚にも用いられ,ヒトの日本脳炎予防にも試用された.
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