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講座 公衆衛生学の最近の進歩・1
人口問題・保健統計—人口集団という名のカオス
著者: 渡辺嶺男1
所属機関: 1鳥取大学衛生学
ページ範囲:P.71 - P.78
文献購入ページに移動ロンドンの大英博物館に所蔵されているリンド・パピルスの中に,エジプトのヒクソス王ラ・ア・ウスの書記官アーメスの著わした数学教本がある.その序文の中に,「対象の中に含まれている一切の不明な事物や秘密の知識を手に入れるための規則」という文句が書かれているという1).この言葉は4,000年を経た今日においても,人口集団を対象とする公衆衛生従事者にとって教訓的である.
しかし,この4,000年の間にわれわれが人口集団について知り得た本質的なものは何であるか,という問いに対して,いささか回答をためらわざるを得ない.人類が外界の事物・事象について,初めて科学と称し得る知識体系を構築したのは天文学であるといわれ,アーメスの時代にすでに黄道上の大陽の直径を使って今日の一般人の用いる時計と同じくらいの精確さで時間を測定していた.そして現代の天文学は,21世紀に見られる日蝕の起こる場所・時間を1秒の狂いもなく予測することができる.
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