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発言あり
丸山ワクチン
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ページ範囲:P.831 - P.833
文献購入ページに移動「薬九層倍」とは,売薬の利益がきわめて大きいこと,と辞書には書かれています.でも私の幼年期に教わった説明の方が,もっと気のきいたものだったように思うのです.「どんなに薬代が高かろうと命にはかえられない」と,その頃の病気がちであった私に幾種類もの苦い薬を,無理やり飲ませるのに懸命だった父と母の姿を思い出します.その私が,今は人の子の親となって,薬九層倍の代価に怯えつつ,医師の指示通りに,或いは家庭常備薬の中から,せっせと家族の老に薬を飲ませているのですから,まさに歴史はくり返すといったところ.
丸山ワクチンは,こんな庶民の歴史や伝統や常識を大いにゆさぶってくれました.「もともと,そんなに効きめはないのだよ」「今もたいていの薬はクスリではありません」と,丸山ワクチンは正直に教えてくれたわけですから.私たち庶民にとって,これは誠にありがたい告白であったと思うのです,もともと効きめのないものを飲まされたり,薬でないものを注射されたり………,そのために幾世代にもわたって支払わねばならぬ膨大なお金と労力と命が,今回の告白を契機に大いに,いいえちょっとでも歯止めになるかも,と思うからです.
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