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講座 公衆衛生学の最近の進歩・4
産業保健
著者: 野村茂1
所属機関: 1熊本大学公衆衛生学
ページ範囲:P.321 - P.329
文献購入ページに移動産業保健の課題とその変遷の段階は,20世紀初頭の産業災害と安全衛生の時代,第二次大戦の頃までの,職業病と産業中毒が多く産業衛生工学が重視された産業衛生の時代,そして,現在に至る職業病や成人病の健康管理や適性配置を中心とする産業(職業)保健(Industrial or Occupational Health)の時代とに分けて回顧されたりする.わが国の労働保護も,明治8年の官営工場従業員の傷病保障のための官役人夫死傷手当規則に始まり,大正5年の工場法,昭和4年の工場危害予防及衛生規則などから,昭和22年の労働基準法安全衛生規則,そして昭和47年の単独法としての労働安全衛生法に至った施策の軌跡が顧みられる.
この労働安全衛生法によって初めて,わが国で法的に産業医の選任とその職務が示されたが,かくて,日本医師会も産業医活動に積極的関心を示してきている.労働省はまた,昭和31年に発足した労働省労働衛生研究所を昭和52年には産業医学総合研究所として発展せしめるとともに,52年には北九州市に産業医科大学を設立し,産業保健活動の基盤である産業医学(Industrial Medicine)の振興を期している.わが国の産業保健活動も,さらに新しい段階を踏もうとしている時期と見ることができる.
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