特集 思春期の性問題
学校保健の立場から見た思春期の性問題
著者:
今村要道123
所属機関:
1日本性教育研究会
2日本学校保健会
3京都市立修学院中学校教諭
ページ範囲:P.173 - P.177
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いまの子どもの多くは心の病にかかっている.毎日の言動からそのように感じることがしばしばある.性二形の哺乳類動物の一種であるヒトとして人間社会に誕生した子どもは,人間の先輩によって人間になるための教育を施され,人間に育っていく.カントは「ヒトは教育されなければならない唯一の動物である」と言っているが,見事に真理を示していて妙である.教育は子どもが生活しているすべての場——家庭,学校,地域社会——で行われなければならないものであって,この3つの場の軽重を問うことは妥当でなく,そのいずれかの教育が不十分であったり偏重したりすると,人間形成に歪を生じることになる.心の病は人間形成の歪の一端であると考えられるので,いまの子どもに適切な教育が施されているということはできない.
わが国の教育は教育基本法第1条の「教育は人格の完成をめざし,平和的な国家及び社会の形成者として,真理と正義を愛し,個人の価値をたっとび,勤労と責任を重んじ,自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行わなければならない.」を目的としてすすめられてはいるが,現実には衆知の如く学校教育においても多くの問題が続発している.