海外事情
ニューヘブン市(米国コネチカット州)におけるYoung Mothers Program 15年間の軌跡
著者:
林謙治1
所属機関:
1国立公衆衛生院母性小児衛生学部
ページ範囲:P.193 - P.198
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すでに20年以上も前から米国では10代妊娠が大きな社会問題となっており,何らかの対策が模索されてきた.対策の行き方に2通り考えられた.まず若年妊娠自体をなくそうとする第一次予防,次にすでに妊娠中あるいは出産後の母子に向けた救済プログラムとしての第二次対策である.第一次予防は本来の意味でより重要なはずだが,学校関係者・両親の性に対する考え方の違いをはじめ社会のさまざまな因子と複雑に絡みあうので,コンセンサスを得た性教育を発足させることができないでいる.救済としてのプログラムは1975年時点で全米約350を数え,その後さらに普及している.一次予防の基本理念ができあがらないまゝ二次策を発足させることの是非は長い間議論されてきた.
米国では10代妊娠の約半数が出産にいたっており,わが国にくらべ問題は一層深刻である.社会は是非の論なく対応を迫られてきたといえよう.医師が病人を目の前にした時,予防論を説くより治療に専念せざるを得ないと同様な立場である.