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特集 アルコール問題
アルコール依存症の臨床
著者: 斎藤学1 岩崎正人2
所属機関: 1東京都精神医学総合研究所 2東京都立松沢病院
ページ範囲:P.783 - P.788
文献購入ページに移動普通,人は体調の悪い時は酒の量を減らし,仲の良い友人の送別会では大酒をし,時には全く飲まずにいるというように,いろいろの飲み方をしているものである.このような「飲酒パターンの多様性」が保たれている限りアルコール依存症とは言わない.しかし一部の人では,夕食時に食卓に酒がないと寂しく感じたり,いらいらした時に一杯飲まないと気がすまない人もおり,こうした人々は事情が許す限り酒を手に入れようとする.たとえば,冷蔵庫を開けてビールを探すとか,酒屋に電話するとか.こうした行動を薬物(アルコール)探索行動と呼び,これが認められると,アルコールに対して「精神依存」が形成されたという.ただし,アルコールへの精神依存,即ち「病気」というわけではない.アルコールの場合,こうした精神依存を克服して時と場合に応じた飲酒行動を維持する余地が充分に残されているのである.しかし,飲酒習慣がさらに進むと,その習慣を変えること自体が体の変調をもたらすようになる.一部の大酒家では,何かの理由で急に飲酒の機会を絶たれると,寝汗をかいたり,手が震えたり,動悸がしたり,眠れなくなったりなど,いろいろの不都合が起こる.こうした不都合をアルコール退薬(離脱)症状群といい,アルコール退薬症状群が起こるようになっている状態を「身体依存」という.
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