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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生47巻3号

1983年03月発行

文献概要

特集 肺がん

現状における肺がん臨床の基礎的問題点

著者: 山口豊1 木村秀樹1 岩井直路1 斉藤幸雄1 下山真彦1 田宮敬久1

所属機関: 1千葉大学医学部肺癌研究施設外科

ページ範囲:P.168 - P.175

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 昨年の厚生省の人口動態統計分析によれば,長らく死亡の主位の座を占めていた脳卒中を抜いて,がんによる死亡が死亡順位1位におどり出たという.がんによる死亡の中で肺がんの死亡は男性は胃がんに次いで2位,女性では胃がん,子宮がんに次いで3位を占めている.しかし肺がんによる死亡数は年々確実に増加しており,推計学的には近い将来に胃がんのそれを凌駕するといわれている.
 肺がんの研究や診療が本格的に行われるようになったのはこの20年間位のことであるが,その進歩にはめざましいものがある.しかしその反面,その治療成績は必ずしも満足すべき向上がみられているとはいえない.胃がんや子宮がんが罹患例数が多いのにその治療成績が向上してきているのは,胃がん・子宮がんに対する集団検診を中心とした診断体系が国の行政の中である程度確立されてきていることにほかならない.肺がんではその罹患数も確実に増加しているが,死亡数もそれに比例して増加してきている.胃がんや子宮がんがその診断体系の中で早期例を数多く発見することができ,かつ治すことができるようになってきているのに,肺がんの死亡数が多いということは,それだけ治るがんが少ないことを示している.われわれは近年集学的治療による治療成績向上のための対策の開発,考案の努力を懸命に重ねてきているが,これらの治療は延命効果を僅かではあるが期待し得るようになってきている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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