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発言あり
医師国家試験制度の改革
著者: 石川到覚1 児島三郎2 菅原和夫3 二塚信4 正岡和5
所属機関: 1大正大学文学部社会学科 2秋田県衛生科学研究所 3大分医科大学公衆衛生学 4熊本大学医学部公衆衛生学 5東京都港区芝保健所
ページ範囲:P.1 - P.3
文献購入ページに移動先日第76回医師国家試験の成績が発表された.33.5%,史上2番目の低率だそうである.それにしても,数ある国試の中で新聞各紙がこぞって大学別の成績一覧を大きくとり上げる例を他に知らない.低率大学の存在を指摘する論調は「悪徳医師」告発のトーンと響き合うかのごとくである.学士としての認定を受けた卒業後の国家試験は,ある意味ではきわめて個人的な問題ではあるが,大学サイドとしても何らかのリアクションを起さざるを得ないのが現実である.そうした訳で,国試準備のための様々なテキスト,問題集,模試,補修講義が準備され,教官の負担も仲々である.しかし,こうした国試準備のための教育の特徴は,単純化された知識の効率的な詰め込みに向かわざるを得ない.それはそれで,日頃不勉強な学生に基礎知識をつけさせる好機ではないかといわれればまさにその通りである.とはいえ,中学から高校,高校から大学と受験教育の中を多くは優等生として要領良く乗り切ってきた医学生がそうした教育の中で,学問・実践としての公衆衛生をたかをくくってしまうようなことがなければ良いがと思う.多項目選択式の出題形式は臨床,公衆衛生を問わないものではあるが,それはそれで思考の論理を筋道立てて組立て得る臨床各科に比し,公衆衛生の場合は余りにも多くの思考経路を省略させたり,出題領域を偏らせ,文字通りの知識の切り売りをしなければ現行出題方式に対応できないと思うのはひがみであろうか.
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