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ページ範囲:P.833 - P.835
文献購入ページに移動老人保健法の施行に伴い,これまで政令による補助金事業として行われてきた子宮がん検診は,同法によるヘルス事業の一つとして行われることになった.これによる第一のメリットは受診率の向上にある.これまで対象年齢にある全人口のたかだか10%内外に過ぎなかった受診率が,今後大きく伸びることが予想される.厚生省としては実施5年後の昭和61年度には,現在の約3倍にあたる30%前後の実施率を見込んでおり,これは社会医学的または公衆衛生学的な,検診の有効限界値に相当する.これには検診の精度管理など,検診に必要なマンパワーの養成なども規定されているが,今後増大する受診者数に対応する検診内容のレベルアップについてのプランはどうなっているのであろうか.
前述のような利点とは反対に,老人保健法の施行がいささか性急に過ぎたために生じているいくつかの問題点がある.その中で最大の問題は,検診事業の実施主体が,従来の都道府県から,市町村に移行されたことである.財政基盤が比較的脆弱な市町村では,検診事業に伴う財政的負担はかなり痛手であると同時に,これらの事業に関与する専門知識を持った職員が乏しいことも大きな問題である.私が居住する自治体(人口23万)でも,今年度から子宮がん施設検診のために,さしあたり最少限度の満40歳の対象者(約1,000人)のみの施設検診を実施すべく市当局と折衝し,予算獲得に努力したが,財源不足ということで実現できなかった.
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