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特集 住宅と健康
障害者の住宅
著者: 原田政美1 寺山久美子2
所属機関: 1帝京大学 2東京都心身障害者福祉センター肢体不自由科
ページ範囲:P.101 - P.105
文献購入ページに移動昭和39年の東京オリンピックに引き続いて,国際身体障害者スポーツ大会(パラリンピック)が東京で開催された.そのハイライトは車椅子障害者のチームによるバスケットボール競技であったが,欧米から参加した車椅子障害者たちはすべて地域社会で生活し,健常者とともに社会活動を行っている人たちであった.一方,わが国の車椅子選手はすべて病院や施設で生活し,競技のためだけに集められた人たちであった.
車椅子障害者の代表的存在は脊髄損傷者である.近代リハビリテーションの発展は,終生にわたり臥床を余儀なくされていた脊髄損傷の患者を車椅子に乗せ,病院から社会へ出すことから始まった.脊髄損傷では両下肢が麻痺するので歩くことができない.その代りに健全な両上肢を用いて車椅子を操作し,車椅子障害者として就職するなど社会参加の実をあげるわけであるが,そのためには地域社会の環境が,車椅子障害者の活動に支障がないよう整備されていなければならない.欧米では早くからこの面に着目され,車椅子障害者の行動を阻害する段差などの障壁(barriers)を除去して,車椅子でも自由に活動できるバリアフリーの社会が作られてきた.かくして車椅子障害者は,地域社会に居住し,そこを拠点として社会活動を行うことが当然であるとされ,文化的生活を営む一環として,スポーツを楽しむ余裕さえ生じたのである.
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