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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生48巻6号

1984年06月発行

雑誌目次

特集 地域保健医療計画

地域保健医療計画推進の現状と課題

著者: 尾崎新平

ページ範囲:P.388 - P.391

■はじめに
 地域保健医療計画策定の必要性が叫ばれ始めてもう久しい.
 国のレベルでは,昭和38年に医療制度調査会の「医療制度全般について改善の基本的方策に関する答申」がなされているが,その中に今日議論されている地域医療(計画)の考え方の出発点を見ることができる.

北海道における地域保健医療計画

著者: 金山武久 ,   伊藤嘉弘

ページ範囲:P.392 - P.398

■はじめに
 道は,昭和55年3月に北海道保健医療基本計画を策定した.以来今日まで,道自体の保健医療に関する行政施策をはじめ,市町村や関係機関・団体等の事業で,道が何らかの形で関与するものもこの計画に沿ってすすめられている.もちろん,その中には計画に盛り込まれていなかった事業もあれば,実施の段階で一部を修正したものもあるが,はじめから広範な関連事業のすべてを網羅したわけではないし,途中の事情変更や利害得失が絡んだものの調整も必要だったから,それはそれで当然予想されたことではある.
 計画の基本的な理念や構想,これに伴う施策の実施方向,そして多くの事業は,おおむね計画当初のもくろみどおり進捗しており,現在なお,道内の保健医療に関する重要な行政指針として,大きな影響力を有しているものと考えて支障はないであろう.

総合発展計画と地域保健医療計画—岩手県地域保健医療計画の例から

著者: 小野寺伸夫

ページ範囲:P.399 - P.406

■はじめに
 わたくし達の日常生活で,計画という言葉によく出会うのが昨今である.計画はそれぞれの目的をもち,方向づけをうながし,手順を示し,具体的な活動がはかられるような諸施策をとりあげ策定されている.
 計画を設定することによって,事業が円滑に進捗し多くの成果をもたらしていることも事実だろうし,逆に計画どおりに進まず,計画倒れといわれることもありうる.

広島県における地域保健医療計画

著者: 三橋昭男

ページ範囲:P.407 - P.412

■はじめに
 このたび広島県の地域保健医療計画,とくに,その策定に至る迄の経緯を中心に紹介して欲しいむねの御依頼をうけたが,本県が計画策定に取りかかった時期が比較的早く,私を含め,現在環境保健部に計画策定に関与した職員が殆どいないこともあり,計画策定の経緯を正確にお伝えすることの困難さをおことわりして,以下その概要を述べさせていただくこととする.

地域医療計画策定の基盤と問題点—大都市圏の場合

著者: 樋口正明

ページ範囲:P.413 - P.418

■はじめに
 東京都の医療行政を推進するにあたって,その施策を展開する上で基盤となるべき立脚点をいずれに求めるかは,さまざまな視座からのアプローチが可能であろう.これまでも,都は都民医療について各時代に即応した各種の施策を実施してきた.しかし,この各種施策は,どちらかと言えばその都度,都民医療にとって早急に解決をせまられた問題のクリアランスを図るものが多かったが,これを振りかえってみると,それぞれの時代の制約からみてやむを得ぬものでもあった.
 今日では,かつてのような医療資源の単なる量的拡大を図る時代は終ったとみてよく,むしろ近く到来するであろう地域医療をとりまく諸相の変化を射程内においた,都民の地域保健医療需要に応じた体制の整備が望まれる時代となってきている.

地域保健医療計画推進の問題点

著者: 辻林嘉平

ページ範囲:P.419 - P.424

■はじめに
 地域保健医療計画の策定と,それに基づく計画的な事業の推進の必要性については,既に多くの関係者から指摘されており,都道府県,市町村,医師会等関係団体においては,この問題に大きい関心を持っているところが多く,現実に各県などでは,一定の地域を念頭において,救急,がん,小児などの特殊医療の分野について計画的な対応を進めている.
 しかしながら,保健医療全体について総合的な計画が策定されていたり,策定のための作業が具体的に進められているところは必ずしも多くはない.また,計画が策定されていたとしても,計画通りに実行されていないのではないかという反省もある.

西独における地域医療計画について

著者: 加藤信世

ページ範囲:P.425 - P.433

■本計画の沿革—1972年以前の病院経営—
 西独においては1970年(昭和45年)頃,約3,500の病院があったが,その70%は国公立で,経営状態の良否,特に財政状態の良否は自治体の財政に直接影響する.ところが,第二次大戦後の人件費増加,施設費の膨張は病院の独立採算制を不可能とした.即ち,近代化された病院では,人件費の面では医師以外の専門医療従事者を相当数必要とし,また施設費の面では高額医療機器の導入を必要とし,これらに多額の経費を費さねばならなくなった.その結果,1966年(昭和41年)には,全病院で年間の欠損が8億4,000万マルク(約800億円)となり,病院庁舎の約半数近くは建築後50〜70年を経る老朽病院であった1)

講座

公衆衛生における細胞遺伝学研究(その3)—変異原・がん原性物質への曝露と染色体の変化

著者: 森本兼曩 ,   小泉明

ページ範囲:P.434 - P.445

 ■はじめに
 前号では,染色体DNAに生じた傷害の鋭敏な指標として,最近注目されている姉妹染色分体交換(Sister Chromatid Exchange;SCE)について,その形成の機構と検出法を述べると共に,SCE及び染色体異常の形成に関する我々の研究成果を,公衆衛生学的な展開の立場から概述した.本号では,近年とみに注目されている癌化の機構と染色体変異の関係について,最近の知見を紹介すると共に,我々の環境中に多数存在するであろう変異原・がん原性物質の有効な短期検索法としての染色体検査法を紹介する.また,現在既に健康管理の立場からも注目されている,有害環境因子に曝露した人間集団に観察される染色体の変化を,発がん・遺伝的負荷のリスク評価の立場から紹介すると共に,将来的にこのような集団への細胞遺伝学的なアプローチを大きく進展させる為に必要な染色体の自動分析装置の開発の現状について述べ,最後に公衆衛生学的な側面から多大の期待が寄せられている各個人或いは,集団レベルでの"健康度"―疾病予測の方法論としての染色体研究について論を求める事とする.

社会福祉協議会と地域保健・4

中途障害者の仲間づくりと医療・保健・福祉の接点を探る試みの中で—脳血管疾患による中途障害者の組織化活動の経験から

著者: 松田泰

ページ範囲:P.447 - P.454

■はじめに
 "障害の受容"こんな言葉が,いとも簡単に使われるのは,どうやら,医療,保健,福祉の専門家の間に限られると気がついたのは,それ程以前の事ではない.障害を背負った人々にとって,そしてその家族にとって,実は,この受容という奴,一番厄介な代物なのである.生涯の中途で,障害を背負った人たちやその家族にとっては,その厄介さ加減が並大抵の事ではない.なにしろ,たったこの間まで,社会や,家庭の最前線で汗を流していた人が急に背負い込む障害だからだ.それも脳卒中という病気は,社会の中でも,家庭の中でも,一角の地位や立場を築きあげてきた人に多く発症するところに難しさがある.
 取り引き先のエライ人と飲んでいて突然倒れたのでと,若い社員に家まで運び込まれたTさん.旅館をひとりで切り盛りし,しっかりもののおかみと評判だったKさん.

発言あり

発言あり(自由課題)

ページ範囲:P.385 - P.387

 私が公衆衛生に携わるようになったのは,戦後の復興がやっとはじまりだした頃であった.大学の研究室からいきなり,保健所に勤務することになった.もちろん,大学の教授の御命令で,ある目的をもっての保健所入りであった.当時の保健所の花形業務は結核予防事業であった.立派なレントゲン撮影装置を装備し,結核菌検査の体制も完備していた.また,医師,保健婦,レントゲン技師,検査技師はくり返し行われた研修により,高度な知識と技術を修得していった.そして,保健所はこの技術力を駆使し,官民一体となって,集団検診,精密検診,患者管理に力を尽くした.このような結核予防事業の推進はめざましい成果をあげていった.
 結核予防業務が主体の当時の保健所に勤務したわけであるが,保健所では,私の使命を考慮し,比較的自由のきく普及課に配属して下さった.そこで,私は人口動態統計とくに死亡統計の仕事を手伝った.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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