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特集 結核対策の動向
結核治療の問題点
著者: 上田博三12
所属機関: 1東大阪市西保健所 2羽曳野病院
ページ範囲:P.570 - P.576
文献購入ページに移動結核治療医学は近年,RFPを含む強化治療の登場と,この強化治療による臨床研究の成果により,初回治療に関しては,ほぼ確立されたといえる.それでは現在,わが国の結核患者があまねく,今日の結核治療医学の進歩にみあう恩恵を受けているのであろうか,もし行政を含めた医療側の怠慢で,強化治療の登場による恩恵を受けない患者がいるとすれば,それは患者不在の医療といわねばなるまい.だが結核に関する統計指標を見るだけでも,いささか悲観的な傾向がうかがい知れるのである.1983年に行われた結核登録者調査1)によれば,RFPの初回治療例への使用率は,都道府県間に55.3%から97.4%の格差がある.また1983年現在で5年以上治療を受けている者の割合を都道府県別にみても,10.3%から47.0%と大きな地域差がある1)としている.公衆衛生審議会答申「今後の結核患者の在り方について」によると,1976年に登録された結核患者についての調査では,1年以上入院していたものの割合も,都道府県間で17.2%から70.8%と大きな差が報告されている2).これらの地域差は新登録患者の病状や社会的背景等に地域間での格差が存在するとは考え難く,医療側の治療に関する考え方が統一されていないことに起因すると思われる.
本稿はこうした医療側に起因する問題点を主として取り上げ,これからの結核治療のあり方について述べることとした.
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