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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生49巻4号

1985年04月発行

文献概要

衛生公衆衛生学史こぼれ話

2.リービヒの肉エキス

著者: 北博正12

所属機関: 1東京都公害研究所 2東京医科歯科大学

ページ範囲:P.250 - P.250

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 戦前・戦中に細菌いじりをやった人なら,人工培地を作る際,リービヒ(Justus von Liebig 1803〜1873)の肉エキスを主材料として使われたことと思う.直径約4cm,高さ約5cmほどの白磁製の円筒形の壷の大きなコルク栓をあけると,黒褐色のやや固めの粘土様の物質が入っている.これを目方をかけて溶かして使うのである.本来なら,上等の牛肉を挽いて,トロ火でゆっくり浸出して肉エキスを作るのであるが,手間と価格,均一性といった点では,リービヒの肉エキスが勝っている.わが国では馬肉,鯨肉,魚肉,さらに鰹節なども代用品として登場したが,成績は思わしくなかった.
 さて,当時,ギーセン(Giessen)大学の化学の教授として令名高かったリービヒの許で,別天師は化学の研究に没頭していたのであるが,あるとき,師リービヒの許にブラジル(伝記によってはパラグァイかウルグァイ)の人がやって来て,あり余る牛肉の利用法を研究するよう依頼して来た.けだし,現在でもそうであるが,これらの国は牧畜が非常に盛んで,主として皮革を輸出していたのであるが,肉の方はとても食べきれず,冷蔵・冷凍の技術もまだ開発されておらず,肥料にでもする以外は捨てるだけであった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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