icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生49巻5号

1985年05月発行

文献概要

衛生公衆衛生学史こぼれ話

4.ヘマチノン・ガラスの復原

著者: 北博正12

所属機関: 1東京都環境科学研究所 2東京医科歯科大学

ページ範囲:P.289 - P.289

文献購入ページに移動
 別天師がリービヒに師事して,化学を修めたことは前述のとおりであるが,彼は化学の知識を応用していろいろなことを試み"万能者(Alleskönner)"と呼ばれるようになったが,彼の実学者ぶりを二,三紹介しよう.
 ときのバイエルン国王ルードウィヒ1世は1844年,別天師にいわゆる古代紫(Porporino antico)の復原を依頼して来た.これは学者,芸術家よりなる調査団が,ポンペイの廃墟から持ちかえったもので,これまで復原は成功していなかった,彼はこの純粋な赤色は化学的組成(酸化鉛+珪酸亜酸化銅)によるものではなく,技術的過程において出現することを考えつき,溶融したガラスをゆっくり冷却することにより,亜酸化銅と珪酸の結晶性の化合物が美しい色彩を呈し,立派に成功した.さらに珪酸を硼素におきかえて,いわゆるアストラリト(Astralit)と称する青色のものも得たが,このガラスの中には金色に輝く微細な結晶がちりばんで,美しいものであった,彼はこの手法を応用し,ヘマチノン(Hämatinon)及びアベントゥリン(Aventurin)を復原したが,このうち最も貴重とされたものはヘマチノンで,国王は大いに喜び,別天師はますます国王に信頼されるようになった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら